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Call by the first name. 8

キリバン【33333】をとってくださった、makomama様のリクエストにお応えして書かせて頂いています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「琴子ちゃん、遅いわねぇ…」
夕方頃からポツポツと降り出し、今や本降りとなった外を見ながら紀子が呟く。

「ったく、さっきから何度同じ事言ってんだよ。琴子なら外で食べて帰るってさっき電話があったんだろ」
直樹は呆れ口調で言いながら、冷めてしまって苦いだけの自分で淹れたコーヒーを喉に流し込む。ちらりと確認した時計の針は10時を過ぎていた。

「もうっ!おにいちゃんはどうしてそんなにいつも薄情なのかしら!?傘を忘れた妻を迎えに行ってあげようともしなければ帰りが遅くても心配もしない。もうこんな夫に任せていられないから私が駅まで迎えに行くわ!」

「やめとけよ。あいつも子供じゃないんだから、タクシー使うなり迎えを頼むなりするだろ。それに今から行ったら入れ違いになるかもしれないぞ」

「そ、それもそうね…。琴子ちゃん、どうしたのかしら……?」
紀子は手にしていた車のキーを置きなおし、ふぅと溜息を吐いた。

「おれ、もう上にあがるから。おやすみ」
直樹は立ち上がるとスタスタとリビングを後にした。



寝室でベランダへと続く窓を開けると激しい雨音が響いていた。

― なにやってんだ、あいつ…
直樹はベランダに出ると家の周りを確認し、眉間に皺をよせた。
紀子にはあのように言ったが、迎えに行くタイミングを計りかねた事を直樹は少々後悔していた。子供ではない…先程の自分の科白を心の中で繰り返す。
暫く行きかう車や人を確認していたが、閑静な住宅街に大した人通りは無い。いつまでも見ていても仕方が無いと諦めて部屋に入ろうとした時、1台の車が入江家の前で止まった。タクシーではない。若い男が好んで乗るようなSUVだった。

― 誰だ?こんな時間に…
直樹は立ち止まるとその車を注視した。そしてそこから出てきた人物に自分の目を疑う。それは間違いようもなく琴子だった――。


少しして寝室の扉がノックされ、静かに扉が開いた。

「入江くん、起きてた?遅くなってごめんね。ただいま」
琴子は遠慮がちに部屋に入ると鞄を置いて直樹の方に近付く。

「ちょっと調べものしてたから。なに、急患でもあった?」
本当は資料なんて適当に本棚から出したものを拡げただけだ。そして定時を大幅に超える事もなく病院を後にし、誰かと食事をしてきた事も分かっている。なのに直樹は素気なくそう返す。

「ううん、急だけど食事する事になって。そしたらこんなに遅くなっちゃった」
少し考えれば矛盾に気が付くだろうに、しかし琴子は何も疑問に思う事なく話を続ける。

「実はね、誠と食べてきたの」

「誠――?」
直樹はそこで琴子の方を振り向いた。成程、誠ならああいった車種に乗っていても不思議ではない、などと、頭の片隅でどうでもいいような事を考える。

「うん。誠、今日も真琴ちゃんのお見舞いに来てたんだけど、帰りが偶然一緒になってね?雨が降ってるから送ってやるって言ってくれたの」

「……で?」
琴子の終業時間と面会終了時間は軽く1時間は差がある。どこをどう考えれば『偶然』になるのかと言いたい所だが、直樹は敢えて黙って先を促した。

「そう、それで送ってもらったのは良いんだけど、なにせこの雨だから道が渋滞してて。そうしている間にその…お腹が空いてどうしようもなくなっちゃって///」

「…腹がグーグーなった」

「う、うん。そうなの」 琴子は赤い顔でコクリと頷く。

「…で、誠もお腹空いたって言うから、適当に目に付いたファミレスに入ったの。そこで話しこんでいたら、いつの間にか時間が経っていて――」

「― この時間になったと」

「そう、そうなの。ごめんね、心配した…?」 琴子は申し訳なさそうに直樹を覗きこんだ。

「別に。でもよくこんな時間まで誠と話しこんだな。一体どんな話題で?」
そう、こんな時間までどうして誠とそんな風になったのか―― 直樹はそこが気にかかった。

「えっとね、う~ん…順番立ててはなさないとね……」
琴子は暫く難しい顔をして考え込むと、『sweetly』を取り出し直樹が向かっているデスクの前で開いた。

「これが何?」
直樹は今まで琴子が何度となく開いていたページを見て尋ねる。琴子はニッと笑うと撮影スタッフのクレジットを指さした。

「ほらここ。『結城 誠』ってあるでしょ?誠ってね、モデル以外にカメラもやってるんだって」

「ああ、そうみたいだな」 何を今更というように直樹は素気なく答える。

「もしかして入江くん、知ってた…?」

「そこに書いてあるからな」

「な…!じゃあなんで、なんで教えてくれなかったの~!?」

「別に?話す事の程でもないと思ったし。だいいちお前、穴があくほどそのページ見てたからてっきり気が付いていると思ってたけど?」

「うっ」

「ま、お前らしいと言えばらしいよな。それで、誠がカメラやってるって事で盛り上がったのか」

「そ、そうなの。どんな写真を撮ってるとか、影響受けた写真家の話とか…正直あたしが分からない話ばっかりでそのあたりはただ聞いてただけなんだけど…。でもね、ビッグニュースがあるの!」

「ビッグニュース?」 
その大層な言い回しに直樹は怪訝な表情を見せる。しかし琴子は気にする事もなくはしゃいだ様子で話を続けた。

「今度ね、誠、個展っていうの…?『小さいハコでだけど』なんて言ってたんだけど今まで撮ってきたものを展示するらしいの」

「へぇ…大したものだな」
それには直樹も素直に感心した。小さいと言えど、個展を開くとなれば必要な要素が沢山ある事だろう。誠の写真に向ける情熱を直樹は垣間見た。

「でしょでしょ?あたしもすごいなぁって思って、絶対入江くんと見に行くねって言っておいたよ!」

「お前な……」 直樹は嘆息する。

「だってね、その写真展にあたしも載るのよ?」

「は…?」 直樹は意味が分からず琴子を見上げる。

「ふふ、実はさっき誠に頼まれちゃったの。『個展で展示する写真のモデルになってほしい』って」
琴子は得意げな顔をして言った。



「…琴子、お前それ、受けるつもりなのか?」
珍しく少しの間言葉を失っていた直樹は、静かにそう言うと琴子を見据えた。

「う、うん。あのね、モデルって言っても1カットだけなんだよ?他にも色々展示したい写真があるみたいだから…」

「当然だ」 直樹は吐き捨てるように言う。

「もちろん、こんな写真じゃないよ///?その、普通の服着た写真だから――」

「お前は馬鹿か。分かってるよそんな事。そんな事よりもお前、もっとよく考えろ」

「何を…?」

「身の程を弁えろって事だ」 
琴子を見据える直樹の視線はさらに厳しくなっていた。その言葉に琴子の表情もぐっと強張る。

「どうしてそんな言い方するの…?あたしがモデルになるなんて、そんなにおかしい事?」 声を振り出すように琴子は呟く。

「ああ、可笑しいね。仮にもプロが撮る写真だ、おふくろが趣味で撮ってるようなものとは違う」

「でも誠が『撮らせてほしい』って言ったんだよ!?」

「だからそれが訳わかんねーよ。どうしてそんな事思いついたんだか」

「もういいよ!!!」 
琴子が叫んだ。

「…入江くんが言ってる事も分かるわ。あたしがモデルなんて、それが分不相応な事くらい、あたしが一番分かってる。この写真の真琴ちゃんみたいに、可愛くもなければスタイルが良い訳でもない」

「そう言う事言ってる訳じゃな――」

「ううん、そうよ。入江くんはいつも診察で真琴ちゃんを見ているんだもの。そりゃ比べちゃうわよね」

「いい加減にしろよ!お前が勝手に被害妄想持ってるだけだろ!!」

「―やっぱり」

「は?」

「被害妄想って言う事は心の何処かで入江くんは比べているんだよ」

「…こんな時だけ揚げ足取りやがって。もういい、勝手にしろ」

「勝手にするわよ!!」

琴子は力任せに叫ぶとベッドに近付いて力任せにシーツを捲る。

「おい、何してるんだよ」

「…あたしなんかと眠るなんて嫌でしょ。ひと駅歩いてダイエットに協力させてしまうような身体だしね。あたし、今夜から客間で寝るよ。それから…、誠ともう約束したからモデルはやるから」

琴子は震える声でそう言うと、寝室を出て行った。


「…んの、馬鹿が……。1人で暴走しやがって」
閉まった扉に直樹は溜息交じりに呟く。

追いかけてきちんと話すべきだ―、そう言っている自分が心の中に居るのに、直樹は動き出せない。
デスクに開いたまま置かれているその写真をじっと見つめ、天井を見上げると息を吐き出した―――。






やっとここまで…(T_T)
ダラダラとすいません。自分で勝手に書いておきながら、皆様にあんまり楽しんで頂けてないだろうなぁ…と落ち込んでおります。
もしよろしければ、応援の気持ちの拍手頂けると嬉しいです。


コメントの投稿

secret

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comment

拍手コメントありがとうございました!!

昨日は勝手に憂鬱モード突入している私に励ましの拍手やコメントを下さってありがとうございましたm(__)m
お願いするものじゃないだろう、と激しく思いながらも書いてしまいました…。でも、応援して下さってる方がいるんだなぁと思えました。嬉しかったです。
あと何回か、がんばって書きあげたいと思います。それでは以下、メッセージを残して下さった方に御礼です。

無記名様(16:36ご投稿)

こんにちは。
ありがとうございます、楽しみにして頂けているのですね。そのお言葉が一番嬉しいです。頑張ります!


chan-BB様

こんにちは。
毎回楽しんで頂けてますか、ありがとうございます。
携帯からのコメント、はじめてなんですね。私はchan-BBさんへのコメントは携帯からも結構しています。時間帯が殆ど同じなのでは(笑)通勤中です、はい(^_^;)
chan-BBさんのお話はいつも凄く面白いですよ。それでも不安になるんですよね。これは書き続ける限り変わらないんだろうなぁ…。
そしてぷつっとここで文字化けしてコメントが終わっていましたが、何かコメント続いていたのでしょうか?ともあれ取り急ぎのコメントありがとうございました!


めでゅめでゅ様

こんにちは。おひさしぶりです!
大丈夫ですか!?はぁぁぁ良かったです(^_^;)
来た来た!と思って頂けて嬉しいです。いつも甘くて優しめか、余裕のある入江くんばかり書いているので、新鮮な気分でした。ハラハラのあとのラブラブになるよう、がんばります!楽しみにしていて下さいね(^^)

まあち様

こんにちはぁ。もちろんのお言葉に勇気づけられました(^^)
漸く雲行きを変えられました。此処まで来るの、遅いよ!と散々自分でツッコミました(苦笑)ただ冷たい入江くんを書き続ける事は出来ないと思うので、長引く事は無いかと…。
Wまことの抱えているもの…。ここがポイントですよねって、自分で何言ってるんでしょう?恥ずかしいorz…
あと数回、お楽しみ頂ければと思います。


繭様

本日三度目のこんにちは(笑)
急展開、嵐の中にやっと押し込めました~。
普通夫以外の若い男と~というコメント、確かにそうですよね~~。この夫婦ならでは、というのにも頷いちゃいました(^m^)
そうそう、琴子は普通に喜んで欲しかっただけなんですよね。でも直樹にしてみれば、ねぇ。
入江くん、言いすぎですか?初めて入江くんにこういう科白を言わせてみましたよ。制御不能な入江くん、書いてみるとけっこう楽しかったです。(なんてやつ)
そして琴子もやっぱり人並みにコンプレックスは持ち合わせていました。さあどうやって仲直りさせるか…、一応決まっているんですよ。そこに辿りつく為に、がんばってポチポチ書いていこうと思います(^^)v




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