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::Call by the first name. 9
キリバン【33333】をとってくださった、makomama様のリクエストにお応えして書かせて頂いています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おう入江。ここ何日かいつもの5割増しでしけた顔してるじゃないか」

回診を終えた直樹が医局に戻ってくると、西垣の陽気な声が聞こえた。

「西垣先生こそ夜勤明けだというのに帰らず、いつもの倍増しの鬱陶しさで。さっさとお帰りになったらどうですか?」

直樹は冷ややかに西垣を見やると自席に着く。

「お前さぁ、俺は仮にも、いや仮にじゃなくても先輩だぞ?言葉の使い方知らないのか?」

「それはどうも、大変失礼致しました。以後、気をつけますので」

「なんだよ…?ホントに機嫌悪いな。何かあったか?ひょっとして琴子ちゃん?とうとう愛想尽かされた?」

「………」

「おっ、当たってたか。ま、お前の素気なさを考えれば琴子ちゃんの判断は妥当だよな。よく今まで我慢してたもんだよ」

「…昨日患者で何か病状の変化があった人はいませんでしたか?」

冗談とはいえ、当たらず遠からずの西垣の科白に直樹は早々に話題を切変えた。あの日以来、琴子は仕事以外では頑なに直樹を拒否している。

「ああ、特に異常なし。昨日は良い日だったな、夜間の急患も少なかったしお陰で明日のオフは溌剌と過ごせそうだよ」
西垣は機嫌よく返事する。

「そうそう、オフと言えばさ、お前の休みの時、代わりに美月ちゃんも診察したけど。彼女、間近で見るとますます可愛いよな~」

「そうですか。さすが西垣先生、守備範囲が広いですね」
今度映画デビューするとはいえ、未だ若い女性向け雑誌の一専属モデルである真琴の事を、美月と呼んでしっかり認知している西垣を直樹は呆れ交じりの驚嘆を込めて見る。

「はは、それは褒め言葉として受け取らせてもらうよ?ところで入江、彼女の事で少し気になった事があるんだが…」
軽い調子で受け答えをしていた西垣の口調がふと変調した。直樹は瞬時に理由を察知する。

「…それはメンタル面の事ですか?」

「ああ。お前が言うならやっぱりそうなんだな。彼女、役者だからなかなか上手く隠していたけど…寧ろその器用さが仇になってるな」
軽薄な見た目を潜めた西垣は、神妙な面持ちで腕組みする。直樹も頷き、参考撮影した真琴の熱傷写真を確かめた。

「― 深度は診察通り、違う事なく浅2度。経過も極めて順調。しかし…彼女は傷から一切目を背けている」
直樹の肩越しに写真を見ながら西垣が懸案事項を口述する。

「…ええ。おれも彼女の不安を取り除いてやりたいとは思ってるんですが…。しかし傷跡が完全に消えるには半年くらいはかかるでしょう。彼女は職業が職業ですから、焦燥感はなかなか消えないかと」

「美月ちゃんは不安を素直に口に出せる相手がいないんだろうか?自分の中に押し込めていると心の方が弱ってしまう。琴子ちゃんは彼女の様子に気付いていないのか…?」
西垣は直樹に問いかける。

「いえ…恐らく気が付いていないです」

― それに琴子が気が付いていれば…、誠の依頼を引き受けるなんて事はしなかっただろう。
直樹は溜息をつくと首を横に振った。

昨日、琴子からあの話を聞いた時、自分が言うべき事は、真琴の精神面を考慮すべきだという事だったはずだ。
誠の依頼を受ける前に、看護師として真琴の精神状態を汲み、刺激を与えるような事を自重するよう諭すべきだった。しかし自分のつまらない嫉妬心が、機を逸してしまった。

あの時、琴子が誠の車で帰ってきた事、時間を忘れて話し込んでいた事、そして誠が琴子にモデルを依頼した事……。全てが気に食わなかった。
自分の中にも嫉妬という感情が存在している事を自覚してもう久しくなる。しかしこの感情の存在や原因が分かったところで、制御することはなかなか学習できないという事を直樹は痛感したのであった。


*  *  *  *  *  *  *  *  *  *


「へ~、YUKIがカメラマン…。今度しっかりクレジットを確認してみるわ。しかし琴子に出展作品のモデルを頼むとはねぇ…。彼、なんでそんな突拍子もない考えが生まれたのかしら」

夜勤の看護師との申し送りを済ませ、休憩室で誠に関する一連の話を聞き終えた幹は、面倒な事になりそうだと思いながら相槌を打った。

「その事、入江先生は何も言わなかったの?」

至極当然の疑問を口にする。どう考えても直樹がそれを快く受け入れるはずはないだろう。しかし琴子はいつになく素気なく首を振った。

「入江くんは…関係ないよ。これはあたしと誠の約束だもん」

「でもその割にはアンタ、ここ何日かずっと仕事が上の空になってない?」

「そ、そんなことないわよ!主任にも注意されていないし」

「そうね、確かにミスはしていないわ」
― でも、最近の琴子は琴子らしくないわよ…?
幹は肯定しつつ、琴子に無言のメッセージを送る。

確かに琴子はこの何日か、周囲が驚くほどそつなく業務をこなしている。が、身が入ってないのは明白だった。何よりも、琴子は彼女の一番の長所である明るさをまるで見せない。

「そ、そうだ、あたしこれから真琴ちゃんの所に行かなきゃ。モデルの件、いつも回診の時には江くんがいるから言い出せなくて…。じゃあね、モトちゃん。おつかれさま」

それ以上詮索されたくないとばかりに、琴子はそう言い残して休憩室を急ぎ足で出て行った。

「…そりゃそうよね。こんな事、入江先生がいい顔するわけないわ」

ただ、いつ何時も直樹に傾倒している琴子があのような態度をとる以上、直樹と琴子の間には何らかの確執が生じたのであろう。話を逸らしたつもりで結局事態を吐露していった琴子に、幹は複雑な気持ちで溜息を吐いた。



トントン
「真琴ちゃん、ちょっと今いいかな…?」 ノック後すぐ、琴子は病室の扉を開く。

「あ…、琴子さん……」
真琴は静かに琴子を見つめた。

「ごめん、また着替えようとしてた?返事前に部屋を開ける癖、直さなきゃね」
琴子は苦笑いする。真琴はまた鏡の前でTシャツを捲っているところだった。

「…ううん、着替えじゃないわ。ボディラインのチェックをしてただけよ」
真琴伏し目がちにベッドに戻る。

「そっか…さすがモデルさんだね。あの、最近真琴ちゃんとあまり話出来なかったな、と思って。なにか困った事とかない?」

「ううん、何もないよ。琴子さんこそどうしたの…?何か話でもあった?」

お互い抱えるもののある2人の会話はいつになく重苦しい空気が漂う。

「あ、あのね…。こないだ、夕方から土砂降りの雨が降った日があったでしょ?」

「うん。3日前だよね」

「そう。あの日あたし、傘を忘れてきちゃったんだけど、帰りの時間が誠と同じになったの。誠、面会時間守らなかったのね。駄目だよ?もう誠にはもう言っておいたけど」

「…うん、ごめんなさい。ちょっと話しこんじゃって」

真琴は咄嗟に嘘を吐く。誠ならあの日は琴子が居なくなって間もなく部屋を後にした。誠は琴子を待っていたのだ――。

「あっ、そんなつもりで言ったんじゃないの。実は助かったくらい。誠、通り道だからって送ってくれたの」

「そうなんだ…」

「うん。でね、その時に聞いたんだけど誠、今度個展を開くんだってね。すごいよね、驚いちゃった」

「― 琴子さん、モデルするの?」

「え!?あ…、知ってたんだ、真琴ちゃん///」

順序立てて話しようと考えていた琴子は、あっさりと真琴の口からモデルの話が出てきた事に驚きを顕わにした。

「だってアイツとは兄妹だもん…。琴子さん、受けるんだ」

「う、うん。あたしなんかって、はじめは断ったんだけど…、誠が『ありのままでいい』って言ってくれたから。ほんとはね、今でもちょっと迷ってるんだけど」

琴子はそう言って寂しげに笑う。一番見てもらいたい直樹にあそこまで言われて、一体自分は何をしたいのか――。

「…そんな事言わないで。アイツ、馬鹿だし軽いけど写真に関しては真剣だから。分かるでしょ?あの写真を見たのなら―」

「うん…。ありがとう、真琴ちゃんに話して良かった」 琴子はふわりと笑った。

琴子の笑顔が真琴には痛い。
琴子がモデルになる事を望んでなどいないのに、誠を擁護する言葉を口にする自分を真琴は呪わしく思う。しかしその思いをひた隠しにして真琴は静かに笑顔を作った。

「― 話、それだけ?」

「う、うん。ごめんね、押し掛けちゃって。なんだか真琴ちゃんの方があたしよりお姉さんみたいだね」

「ううん。じゃあこれで…。ごめんなさい、今日はちょっと疲れちゃったみたいで」

「あ、あたしったら本当にごめんなさい。患者さんを疲れさせちゃうなんて看護師失格よね。大丈夫?熱でもあるのかな…?」
琴子は真琴の額に手を伸ばした。

「やめて…!!」
その時真琴の手が琴子の手を遮った。

「真琴ちゃん―?」
初めてみる真琴の強い拒否の態度に、琴子は戸惑いの目を向ける。真琴もハッとしたように身体を硬直させた。

「あ、あの、ごめんなさい…!大丈夫、暑くて昨日良く眠れなかっただけだから……」

「そ、そっか。じゃあ管理室に話してみるね。何かあったらまた言ってね?」

「うん、ありがとう」
ギクシャクしている空気を嫌というほど感じているのに、二人は解決の糸口を見つけられない。

「じゃあ…明日はあたしお休みだからまた明後日。お大事にね」

「…琴子さん」

「ん?」

「明日…、撮影するの?」

「うん。そう約束してる」

「そっか……。頑張って、緊張しないように」

「うん」 
琴子は頷くと部屋を後にした。その後、真琴が琴子に何も望まなくなることも知らずに―――。






たぶんあと3話位で終わるはず…。頑張ります。6月中に終わるのが理想……


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::コメントありがとうございます!
藤夏様

こんばんは!そうなんですよ~。週末に一気に3話UPしたんです。
天気が悪かったのもあって、すっかりPCに張り付いていました(^m^)
これで漸く出口が見えてきたって感じで、早く書き上げたいんですけど頭の中のものを文章にする技術が…orz

藤夏さん、藤夏さんが語彙少ないとか仰ったら私はどうなるんですか~~!?ほんと毎度毎度表現が同じで恥ずかしい限りですよ(T_T)

そして、仲直りの方法を決めている件は、寧ろそこだけが決まってたんですよ(爆)
あとは行き当たりばったりで、構想なんてとんでもない!!(胸張って言う事じゃないですが(^_^;))

でも西垣氏を出したのは正解でした(^^)実は彼を出そうと思ったのは本当に突発的な勘だったんです。ほぼ書き上げていた話を全部消して彼を出すような話に書き直したんですよ。でもそのお陰で次につなげる事が出来ました!

西垣氏とモトちゃんは、書き手にとって本当に使えるサブキャラですよね。私も西垣氏と直樹の舌戦は大好きでここだけはいつもすらすらと書けます(笑)

連載についてはいつもお気遣い下さって感謝しています!あと少し、マイペースに書かせていただきますね(*^_^*)
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::拍手コメントありがとうございます!
まあち様

ふたたびコメントありがとうございました!
いえいえ、本当にまあちさんのコメント、いつも私楽しみです!!
以前花火の話で、旦那様の浴衣を確認なされたと言うコメントを頂いてからというもの私、すっかりまあちさんのファンです。(どんなファンだ?(笑))
「うふふ~」が聞けたらやった!!って感じで、雄叫びが聞こえたら私も叫んでます~。(心の中でね♪)
これからもまあちさんを興奮させられるお話書けるよう精進しますね(*^_^*)


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::コメントありがとうございます!
makomama様

こんばんは!長々と、しかもmakomamaさんがイメージされているものとは大分違いがありそうな話になってしまいすいません(>_<)書き終わったら言い訳という名のあとがきを少し書かせて下さい・・・orz
それでも広いお心で受け入れて下さってありがとうございます。入江くんの嫉妬・・・実は前回が今までで一番すぐに書けました(笑)優しい入江くんばっかりのこのブログですが、実は私も好きなのかも^m^♪
それではあと少し、お付き合いくださいませ!


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::ドキドキ~!
ぴぐもん様
 またまた連日のアップ、ありがとうございました。いよいよドキドキの展開になってきましたね~。この先、どうなりますか本当に楽しみです。
入江くんの嫉妬・・・私的には大好きなんです。琴子ちゃんを愛するがゆえの嫉妬ですよね。
では続き・・・楽しみにしております。♪

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::拍手コメントありがとうございます!
繭様

こんばんは!
本当に、人って知らぬ間に誰かを傷付けている事があるんですよね。
突発的な感情で相手を傷つける事もあれば、無意識のうちに傷付けてしまっている事もあるんだと思います。
繭さんの仰るように、琴子は周りが見えていませんが直樹は嫉妬しながらも周りが見えているのでなんとかしてくれると良いのですが…ってまるで他人事のように(笑)
最後には皆が笑えるようにはしますので、あと少しお楽しみくださいね(^^)

chan-BB様

こんばんは!って本日何度目(笑)?また色々とありがとうございましたm(__)m~!
ぷぷ!嫉妬トライアングル!!(^m^)また御上手な命名をして下さってありがとうございますww
そしてそうなんですよ(笑)一番事を引っ掻き回している張本人がこの渦の中に参戦していない(笑)これからそこを書かなければと思っています。その後は一気に最後にもっていきますよ~~。
皆が幸せになるように、がんばってキーボードたたきます(*^^)v

まあち様

こんばんは!
妄想(暴走)特急、大歓迎です(^^♪
確かに真琴は好きな人と兄妹だとか、これから仕事で飛躍するという時に火傷とか、一番可哀想かも…(>_<;
でも大丈夫、乗りきりますから!なにせこの話、結論が先に頭の中で出来あがってましたから(笑)あと少しだ…!
そしてコメント、上手く書けないなんて事全然ないですよ!まあちさんのコメント読ませて頂くの、とっても楽しいです(*^_^*)コメントが入ると携帯にすぐ通知されるので頂いた時はすぐに読んで心の中で小躍りしています!(たぶん顔もニヤついていると思う…危ないな、私(^_^;))
あと少し、またまあちさんをドキドキさせられたらいいな~と思います!

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