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Blessing to you 3



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「ただいま」

玄関の扉を開けて声を掛けるなり、先に帰宅していた綾子がダダダッと階段を駆け下りて裕子を迎えた。

「おかえり!お姉ちゃん!とんでもないものが届いたわよ!!」

玄関まで走ってやってきた綾子は、その勢いを保ったまま、手にしていた封筒を裕子に突き出した。

「なに・・・?」
怪訝な顔で受け取る裕子。どうやら招待状の類らしい。宛名は裕子と綾子連名となっていた。

切手はハートマークの切手。所謂、結婚式に使用されるアレである。その下に追加の切手と速達の判子。結婚式の招待状に速達を使うなんて、どんな急いた式なのだろうか。

「早く、裏の招待主を見てよ!」

綾子に促され、裕子は裏面を向ける。

そこには入江茂樹、相原重雄の名が記されていた。つまり・・・

「入江君と、相原さん!?」

「そうなのよ!ありえないでしょ!? 例の、入江のおば様お手製の、あのポスターが掲示板に貼り出されていた事は知ってるわ。でも、そのポスターが貼り出されたのだって、つい数日前の話よ?しかも、直樹先輩、令嬢の婚約者居たわよね?一体どうなっているの?」

裕子以上に事情を知らない綾子は、すっかり意味が分からない、という表情をしている。

「あのポスターの内容はどうやら真実らしいわ。私、相原さんの友達に確認したから」

「え!!そうなの!?」

「とにかく、中をみてみましょう」

裕子は綾子を促し、2人はリビングに入る。ソファに並んで座り、封を開けて中身に目を通した。


硬直しながら顔を合わせる姉妹・・・。


「ちょっと・・・11月21日って2週間後じゃない!?」

カレンダーを確認する。

「信じらんない・・・こんな人気ホテルの式場と披露宴会場、大安に押えるなんて・・・」

「あ、メッセージカードが入っているわ」

メッセージカードには、掲示板のポスターと同じ筆跡の文字が並んでいる。
つまり直樹の母、紀子が書いたものらしい。
メッセージカードにはこう書かれていた。


『とうとうウチの直樹と琴子ちゃんが結婚する日がやってきました!!突然で少し驚かせてしまったかしら?どうかお祝いに式にいらしてね!そして、当日は是非、琴子ちゃんの控え室に遊びに来て頂戴ね!琴子ちゃん、きっとすごく素敵な花嫁姿よ!!それから、琴子ちゃんはこれから2週間、お式の準備で忙しくなるから大学はお休みするわね。』



「――どう思う?」

「間違いなく、入江のおばさまがいつも以上の凄まじさで暴走しているわね」

「だよね。でも、これだけ大掛かりな事、おばさま個人の力では無理よね」

「会社の名前、使っているわね・・・」

「つまり、決定事項か。直樹先輩、お気の毒・・・。」

呟きながら綾子はチラリと裕子を見る。

「お姉ちゃん、とうとう失恋だね・・・」

「ふん、私はとっくの昔に失恋しているから平気よ。さ、着替えてくるわ」

裕子はさらりと答えて自室へと引き上げていった。

「そっか・・・。あの日かな、やっぱり・・・」

綾子は誰に話しかけるわけでもなく呟き、遠い眼をした。





自室に入った裕子はベッドに腰をおろし、ぼんやりと終わった恋を振り返る。

――たしか、相原さんは高一の時、入江君に一目惚れしたって言っていたのよね。


・・・・でも、一目惚れしたのは、私だって同じだった。





斗南大学に外部から入学した裕子は、当然大学で直樹に出会い、恋をしたと皆思っている。

直樹ですら、そう認識しているだろう。

だが、良く考えて欲しい。
直樹には及ばないが、裕子だって全国模試5位に入る才女であることを。

当然T大に進学するのが妥当な線だろう。だが、彼女は斗南大に入学したのだ。
何故?それは勿論、直樹が斗南大にそのまま進学したからである。



直樹のずば抜けた頭脳、成績は真面目に大学進学を目指す学生にとっては当然知られている存在だった。
塾や予備校に通うでもなく(その上、実は家でも特別な勉強などしていない)、常に全国模試1位に君臨する神童。

一体どんな人物なのだろうか?どこにもに通っていないのだから、大抵の者は確認のしようがない。しかし、学校で教師に懇願されるらしく、模試だけは必ず受けているらしかった。



高2の冬の全国模試の日だった。
全教科の試験が終わり帰り支度を整え、裕子は試験会場だった教室を出て階段を下りていた。

前を歩いている女生徒たちの会話が聞こえてくる。

「今日この会場、入江直樹がいるんだよ」

「え、あの神童とか噂されている?」

「そうそう。私、同じ学校なんだ。勿論成績は学年で断トツで1位」

「へー。やっぱりガリ勉みたいなタイプ?」

「ううん。それがね、まさかの超イケメン」

「そうなの!?うわぁ、見てみたいなぁ」

「あ、噂をすれば・・・居たよ。ほら、あそこの・・・」

女生徒が指をさす。


なんとなく女生徒たちの話を聞いていた裕子もそちらに目を向けた。


そして、一瞬の思考停止。
体に電流が駆け巡るような感覚。


そう、裕子は直樹に一目惚れしたのである。




それからというもの、裕子の勉強量はさらに増えた。

もともと努力は惜しまなかったし、あの時の模試の結果もT大の合格判定はAランクだった。

それでも、いずれ同じ学び舎で机を並べるとき、少しでも彼にふさわしい知識を身につけた自分でいるために、彼女は自身に発破をかけた。



センター入試直前模試では、全国5位にまで成績は上がっていた。

1月のセンターの自己採点も納得の結果を得、あとは2月の本試験を待つのみ。自信はある。

――もうすぐ、本当の出会いが待っている・・・裕子の心は躍った。



しかし、まさかの情報が受験関係者に駆け巡った。

入江直樹がT大を受験しなかったという。

受験登録はしていたのに、当日姿を現さなかったらしい。
門で見かけたのに居なかったとか、中途半端な時間に飯を食べていたとか、よく分からない噂も混じっている。

こんな噂の真偽がどうあれ、受験しなかったという1点においては間違いないようで、教育関係者の衝撃は大層なものであったらしい。

そして勿論、裕子も衝撃を受けた。

どうやらこのまま斗南大に進むという情報を得、念のため用意していた願書を慌てて提出する。
なんとか間に合い、直樹との出会いの場所は確保できたのであった。





大学入学後、裕子は早速直樹と接触を図った。オリエンテーション後話しかける。

どの講義を受講するか、サークルやクラブには入るのか等々・・・話しこんでいると不意に同級生が直樹を呼ぶ。

「入江―、カミサンどかしてくれよー」

直樹と同時に教室の扉を振り返る。そこに居たのが、相原琴子。
これが彼女との最初の出会いだった。



印象は、どこにでもいる【馬鹿そうな】女。直樹はほぼ無視していた。
琴子は間違いなく直樹に好意を持っているらしい。



大学生活が始まり、琴子の直樹を追いかける凄まじさを目の当たりにしてきた。
でも、直樹はいつも冷たく、相手にしない。裕子も始めは琴子のことをライバルとして認識していなかった。




――いつから、私は相原さんを好敵手としてみるようになったのだろう・・・?

この認識の変化はつまり、直樹の、琴子への只の同居人・知人ではない感情に気付き始めたから。


とりあえず、現在から過去へと遡って考えてゆく。

――私が完全に失恋したのは、あの花見の日・・・


あの頃の私は相当焦っていた。
だって、一言の相談どころか、事後報告もなく入江君が理工学部から医学部に転部していたのだから。

でも、相原さんは以前から知っていた。ご両親さえ知らない時から。
相原さんはその事に特別な意味を見出していなかったけれど。

相原さんの鈍感さに感謝と苛立ちの混ざった表現し難い感情を持ったわ。そして、決意した。

多分、入江君もまだ相原さんへの気持ちを完全には認めていない。告白するならこのタイミングが最後だと。



花見の夜、入江君を誘ってその場を離れた。

私の気持ちを伝えるために。そして入江君の本心を聞くために。

車を走らせ、二人きりになれる小さな公園で話を切り出した。


「今日は本当の気持ちを聞かせて。私のことどう思っているの。それともあの子の事が好きなの?」

「わかんないよ」
直樹は下を向いたまま答える。

――どうして・・・?自分の気持ちでしょう?迷っている?お願い、私を見て・・・!
裕子は思わず直樹に縋りついた 。

「私、入江君の事本当に・・・!―― 諦めるなんて、出来ないわ」

そっと直樹を見上げる。

――キス、してほしい・・・・目で訴える。


刹那、直樹の表情が強張り裕子は引き剥がされた。


「悪いけど、お前とそういうことしたくないんだ」

恥ずかしさと、プライドを傷つけられた悔しさで裕子はカッとなる。

「なら、誰とだったらキスするのよ!どうして私じゃ駄目なの!?」

「したよ。琴子とキスした」


――――――!!!


やっぱり、という思いと居たたまれない感情。裕子はたまらずその場から逃げるように駆けだした。


そう、これが私の失恋記念日。・・・まさか相原さんに一部始終を見られていたなんてね。あの場所まで走って追いかけてくるんだからあの娘の執念も相当なものだわ。

でも、自棄になって相原さんに入江君とキスしたシチュエーション聞いたら「ザマーミロ」なんだから。
いったいどんな展開でそんな事言われるのかしら?・・・でも、入江君が自分の意思でキスしたのは紛れもない事実。どんな理由であれ、キスしたかったから、したという事。

その辺の事、相原さん全く気付いていないものだから、2人のこれからを見届けてやろうなんて気になってしまったのよね。柄にもなくお見合いをぶち壊すなんていう、入江のおばさまと相原さんの馬鹿な計画にも乗ってみたりもした。・・・まぁ、隙あれば入江君を振り向かせようとは思っていたけどね・・・?

そう、入江君はまだ認めていなかったけれど、あの花見の日、私は入江君が好きな人は相原さんと認識した。


――入江君はいつから相原さんを好きだったんだろう?

考えてみれば、色んな兆候があったように思える。

入江君が一人暮らしで、ファミレスでバイトしていた頃、毎日店に押し掛けていた相原さんが急に姿を現さなくなったのよね・・・。
入江君てば、新規のお客さんが来るたび確認していたわ。
試合前にしか出ない約束で入ったテニス部にもその頃だけはしっかり練習に出ていたし。

で、相原さんがいつも通り入江君を追いかけまわすようになったら練習も出なくなって。

相原さんが一緒にバイトするようになってからは、顔だけは鬱陶しそうにしているのに、いつも相原さんの事気にかけていたのよね。

押してもだめなら引いてみて…って、相原さんにそんな事計算して出来るはずもないけど、まんまと入江君、相原さんの事が気になってしょうがないようになっていたのね。

つまり、この時点で既に入江君は相原さんの事を好きだったということ。

――でも、気になっているっていうなら、これよりずっと以前の気がする。

入学して間もない頃、私とデートした時も、いつの間にか相原さんの手を取って帰ってしまった。

合宿の時も、私が告白しようとしていると分かっているくせに、やっぱり相原さん連れてさっさとどこかにいっちゃったのよね。


――考えれば考えるほど、入江君はいつの時も相原さんを気にかけていた。
でも、やっぱり入江君の気持ちの変化の時期は明確にはならない。
人の気持ちは、数字で解決するような問題ではないから。




はぁ、とにかく疲れた。考えるのはヤメ。

答えの鍵は、案外相原さんが持っている気がする。
こうなったら、入江のおば様の誘いに乗って、結婚式が始まる前に相原さんの控室に行こう。
そして、相原さんにあの事を聞いてみよう。

――これが結婚式に出席する私への贈り物ってとこかしら?


フッと笑って裕子は立ち上がり、窓を開け冷たい夜の外気でほてった顔を冷やした。





あと1回でおわります。


テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

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