::Présent de la surprise 1
年もあとひと月を残すのみとなり、何かと慌ただしくなるこの季節。
あらゆるメディアがこぞって物欲を煽るこの季節。
そして、ここにその罠を甘受する者が1人。

「ウフフフフ・・・楽しみだわ~~!」

斗南大病院の看護師休憩室。
幹が手にしていた雑誌を広げてニマニマしていると、

「フ~、やっと休憩できる!ねえモトちゃん、何かあるの?」
と琴子が入ってきた。

「あ、琴子。お疲れー。あなたやっとシーツの交換終わったの?もう休憩時間5分しか残ってないわよ」

「うぅ。どうせノロマですよっ!で、でもこれでも早くなったのよ?はじめは休憩する時間さえなかったんだから!!」

「確かに亀なりの進歩はあるみたいね」

「もう、いじわるなんだから・・・。ねぇねぇ、それよりも、何が楽しみなの?さっき入ってきたときにモトちゃん言ってたでしょ?」

「あ、そうそう。これよ~!」
幹はテーブルに雑誌を広げて指をさした。

「クリスマス限定のコレクションなの。このピアス素敵でしょ?前からチェックしてお店に予約してたのよ~。で、今日それを帰りに引き取りに行く予定なの」

琴子は雑誌を覗き込む。そこにはブラックオパールの埋め込まれたアンティークなデザインのピアスが載っていた。

「わぁ!素敵だねぇ。モトちゃん美人だから映えそう」

「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。そうだわ、琴子。あなたも今日私と同じシフトだから日勤よね。一緒に行かない?ほら、もうすぐボーナスだし、自分へのプレゼントってのもたまにはいいものよ~」

「えぇ~、私には入江君からもらったこの指輪があるから充分なんだけどぉ、でも見るだけでも楽しいしね!行く行く!!」

琴子は手を翳し、自分の指にはめられたサファイアの指輪を見てムフフと怪しげに笑う。
今年の琴子の誕生日以降、何度この姿を目にした事か。

「はいはい・・・ったく、いつまで惚気れば気が済むのかしらね!じゃあ仕事が終わったらロビーで待ち合わせね。遅れないでよっ」

「エヘヘ。分かってるよぉ」

あっという間に休憩時間が過ぎ、2人はまた仕事にとりかかった。



勤務終了時刻。琴子はなんとか時間内に仕事を終え、ロビーに向かう。そこには既に幹が待っていた。

「ごめん、モトちゃん。待った?」

「いーえ、私も今来たところよ。それにしても珍しいじゃない。もっと待たされると思ったのに」

「むっ、あたしだってやる時はやるのよ!」

「はいはい、分かってるわよ、冗談よ。さ、行きましょ」
ムキになる琴子を軽く流して幹は通用口へ向かう。

「もう、モトちゃん待ってよ~」
琴子も追いかけるようにして出口に向かった。


電車に揺られて2人がやってきたのは某百貨店。
幹は慣れた様子でエスカレーターを上り、まっすぐに目的のカウンターへ向かった。
琴子もきょろきょろ周りを見ながら付いていく。

「すいません、こちらで予約していたんですけれども・・・」
控えを出しながら幹は店員に声を掛けた。

店員は控えと帳簿を確認し、
「桔梗様ですね。ご予約いただきありがとうございました。少々お待ちくださいね」
とにこやかに応え、棚から商品を取り出した。

「こちらでございます。御試着されますか?」

「はい、お願いします」
用意された鏡を見ながら幹は慎重に装着する。

「やっぱり素敵。どう?」
琴子を振り返り微笑んでみせると、

「わぁ!モトちゃんすっごく似合ってるねっ」

琴子は素直に答え、両手を前で合わせるようにして目を輝かせた。

その様子をにこやかに見ていた販売員の目が、琴子の左手で止まった。

「あの、お客様。そちらの指輪も、弊社の物でいらっしゃいますよね。とても良く似合っています」

「え?」琴子は自分の左手の指輪に目を向けた。

「ここの指輪だったんだ。気付かなかった」

「琴子ってそうゆうとこ、無頓着そうだもんねぇ。普通は箱とかリングの裏のロゴとかで気付くもんだけど。入江先生からプレゼントを貰ったって、ただそれだけで嬉しいんだから」

まぁそこが琴子の良いとこでもあるんだけどね、と幹は心の中で付け足す。

「あはは・・・」
琴子は笑ってごまかしながらショーケースを覗き込み、ふと気付く。

「同じ商品はもう無いんですね」

「ええ、こちらは誕生石のコレクションで、今月だとこちらのラピスラズリなんです」

ショーケースの中には神秘的な深い紺の石の入った様々なデザインのアクセサリーが並んでいる。

「誕生日コレクションは、天然の石それぞれの個性を生かしたデザインを重視して作られていて、アクセサリーごとの生産の個数もまちまちですし、追加生産もしないんです。人も一人一人個性があるように、ジュエリーにも個性を、というテーマのラインなんですよ。」

「へぇ・・・なんだか素敵なお話ですね」
琴子と幹はうっとりとしながら呟く。

「お客様の指輪は当店にも1つしか入荷されませんでしたので、印象に残っているんです。それに、買っていかれたのがすごく素敵な男性でしたので・・・。その場にいた店員皆であの方に贈り物される女性が羨ましいって噂してたんです」
店員はイタズラっぽく微笑む。琴子は頬を赤らめた。

はっと気づいたように店員が尋ねる。
「もしかしてお客さま、リングの裏のロゴも見ていないという事は、メッセージにもお気づきになっていないとか・・・?」

「?」言葉の意味を解していない琴子。

「まさか・・・!琴子、ちょっと指輪はずしてみなさいっ」
幹の剣幕に驚きながら琴子は指輪をはずす。

幹はそれをひったくるように受け取り、リングの裏側を翳すようにして見る。

「ほら、入江先生からのメッセージがあるわ・・・!でも、これ英語じゃないわよね。フランス語?なんて意味かしら」
まったく、メッセージを入れている事を口にしないのも不思議だけど、なぜフランス語?英語も怪しい琴子なのに、幹は訝る。

「モトちゃん。それ私に見せて」
なにか思い当たる節があるのか、琴子は幹から指輪を受け取ると、リングの裏の文字を読み上げた――ー。

「Avec tout l'amour absolu et  絶対的な愛をこめて、かな?」

「へぇ・・・琴子にフランス語が解るなんてとっても意外なんだけど。入江先生絡みなのね?」

普段の直樹と琴子の様子からは想像のつかない甘い直樹からのメッセージ。一体どんな過程からこの言葉が紡がれたのか。

幹の好奇心は最高潮に刺激された。

「う、うん///// ほら、前にモトちゃんたちに入江君から誕生日プレゼント事があるかって聞かれた時、試験勉強を見てもらったって言ったの覚えてる?」

まさか入江君があの時の事覚えてるなんて・・・びっくりしたな~と小さく呟きながら、琴子は記憶を辿るようにゆっくりと話し出した。





あとがき
某投稿サイト様に、初めて投稿させて頂いた作品です。
ほんの少し前に投稿したものなのに、懐かしく感じます。そして、なんと下手な文章!
修正したいですが、私の技量では大して変わらないでしょうし、一応記念ですので(笑)
コメントを戴いた時はドキドキして、天にも昇りそうな位嬉しかったです(^-^)


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