::歴史 1/2
配付元…kara no kiss様
50音・26文字お題よりお借りしています。

キリリク始めたところなのに、いきなり横道に逸れてすみません・・・(><;)
(特に吉キチ様には申し訳なくて平謝りです・・・!!)

つい先日過ぎてしまった雛祭りネタです。バレンタインに続き、空気の読めない奴で・・・。
その上また無駄にだらだらと続くので、とりあえず途中でUPします。後編も、たぶん日曜日中にUP・・・できると思います。

お付き合いいただける方は続きから宜しくお願いします。


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その晩、食卓にはいつにも増して琴美の好物がずらりと並べられていた。

「わーい、ご馳走が沢山!」

琴美は愛らしいはしゃぎ声をあげると、薄茶色がかった瞳をくるくると輝かせながら、紀子と琴子が腕によりをかけて作った品の一つ一つをを小さな指で順に差していく。

「うーんと・・・、これは散らし寿司でしょ。こっちはエビフライ。わぁ、今日のハンバーグは丸じゃなくって四角いんだね!上にマッシュポテトとにんじんが載ってる。お雛様のししもちみたい!!」

「まぁ、みーちゃん、良く知っているのね、偉いわ~!でも、ちょっと惜しかったわね。それは“ししもち”じゃなくて“菱餅”っていうの」

蛤の吸い物を運んできた紀子は、笑顔でそれを訂正する。まったく、子供の言葉の言い間違えというのは、どうしてこうも可愛らしく感じるのだろうか。

「ひしもち・・・?」

「そう。菱形の、お餅」

ふぅん、とぽかんとした表情で納得する琴美に、周りの大人たちからは思わず笑みが零れる。
元来パーティが好きな紀子の取り仕切りで、節句や行事はいつも盛大に祝うのが慣わしの入江家だが、この日が今日のように、より盛大に祝われるようになったのは、琴美が生まれてからの事だ。

そう、今日は3月3日、雛祭り―。



「ねぇママ。みーちゃんね、『雛祭り』っていうのが、どういう日かちゃーんと知ってるよ!今日ね、幼稚園で先生が教えてくれたの」

「そうなんだー。じゃあ、みーちゃん、ママや皆に教えて教えてくれる?」

紀子に訂正された事などなんのその、もう得意げな様子で話しかけてくる琴美を、琴子は笑顔で促した。本日の主役である琴美は、「うん!」とにっこり笑って頷くと、少し畏まったように咳払いの真似事をすると、自分に注目する大人たちを見回した。

「えっとぉ・・・、雛祭りとは、女の子がすこやかに成長するように願う行事で、『桃の節句』、または『上巳(じょうし)の節句』とも言われています。『上巳』とは、3月上旬の巳の日という意味で、後に3月3日に固定されました」

幼稚園で、教諭が本か何かを読み上げて説明したものを、そのままに諳んじているのであろう。空を見つめながら話すその姿は、意味までは理解していない事を物語っている。が、わずか4歳で一度聞いたことを忘れず話す姿に、紀子をはじめ、重樹、重雄ら祖父母は、すっかり感心し頬を緩めるのだった。

「ほぉ、よくもそんな難しい説明を覚えられるもんだなー。さすが、直樹くんの娘だ」

重雄が唸ると重樹も嬉しそうにうんうんと頷く。

「ほんと良かったよな。頭がおまえに似なくてさ」

琴美と琴子の顔を見比べるように視線を動かした後、ぼそりと琴子にだけ聞こえるように声を掛けてくるのは裕樹だ。琴子はムッとしかめ面を作ると、

「裕樹くんは、相変わらず失礼なんだから」

と頬を膨らませた。

「じゃあ、さっき琴美が言った事、もう一度言ってみろよ?」

「あ、お義母さん。あたし取り皿運びますねっ」

いつの間にかよく直樹に似ているようになった、ニヤリと挑戦的な視線を向ける裕樹から逃れるように、琴子はいそいそとキッチンへと足を向けた。琴美の物覚えの良さに既に舌を巻いている琴子は、この分野について琴美と競争する事は既に放棄している。


「さぁさ、早速ご馳走を戴こうじゃないか。ママとおばあちゃんが沢山作ってくれたからね、しっかり食べて、病気や怪我にならないようにしよう」

「この後はケーキもあるそうだよ」

「んー、でも、まだパパが帰って来てないよ」

眉尻が下がりっぱなしの祖父達に、琴美は首を振る。琴美はくるりと琴子を振り返ると、切羽詰ったような表情を見せた。

「ねぇママ。パパ、もうすぐ帰って来るんだよね?」

「うん。さっき『今、駅だから』って電話があったから、もう直ぐ帰って来るはずよ」

「じゃあ、みーちゃん、それまで待つ!」

断固とした姿勢で宣言する琴美に、大人たちは顔を見合わせると苦笑した。こうなると、とても子供とは思えないような真摯な頑固さを見せる琴美の瞳は、相も変わらず直樹にファーストプライオリティを置く琴子の遺伝以外の何ものでもない気がする。

「じゃあ、みーちゃん。チャイムが鳴ったらまたママと競争よ?」

「うん!みーちゃん、ママになんて負けないんだから!!」

ニッと笑いあう母娘の、直樹をめぐっての戦いの火蓋は既に切って落とされている。



ピンポーンピンポーン


「「・・・チャイム2回・・・!!」」

琴美と琴子は顔を見合わせると、一斉に玄関へとダッシュする。
琴美が覚えたての文字で書いた『パパならチャイムを2かいならしてね!!』という張り紙を、どうやら直樹は律儀に守ってくれたらしい―。


「お帰り、パパ!」
「お帰り、入江くん!!」

「・・・ただいま」

毎度の事ながら、息せき切って迎えに現れた2人に直樹は少々呆れつつ、しかし温かい気持ちに包まれながらそれに応じた。スーツ姿の直樹の隣には、リモアのシルバーのスーツケースがどっしりと並んで置かれている。



「では、あらためて乾杯!」


重樹の音頭で、入江家のリビングに再びグラスの重なる音が響く。そしてまた、和気藹々とした会話が再開された。食事を終えてソファで団欒する彼らの楽しげな声は、部屋の良い場所に飾られた7段飾りの雛人形の表情をも明るくさせるかのようだ。

「みーちゃん、パパがやっと帰って来てくれて、すっごく嬉しい!」

直樹が帰ってきてから何度言ったかしれぬその言葉を、琴美はまた繰り返す。そしてピッタリと寄り添うようにして座りながら直樹を見上げ、満面の笑みを浮かべた。というのも、直樹は先週から一週間ほど海外の学会に参加していた為、少しばかりの間、家を留守にしていたのだった。

「明日は一日お休みだんだよね?」

「ああ」

「じゃあ、明日はず~っと、ず~~っと琴美と遊んでね!!」

「ああ、いいよ」

“ず~~っと”に特別力を入れて話す琴美に、直樹は柔らかく微笑む。
傍から見ればやや大袈裟にすら感じられる琴美の歓迎振りだが、父親に逢えなかったこの一週間をじっと耐えていた琴美にとってそれは演技であるわけがない。それは直樹は勿論、家族全員が知っていることだ。

「・・・おまえも琴美みたいに兄さんにくっ付きたいんだろ?」

「あ、あたしはいいのよ・・・っ。だって、琴美は一週間頑張っていたんだもん」

見透かしたように尋ねてくる裕樹に琴子は慌てて首を振る。もちろん琴子も同じようにしたい気持ちは山々だが、そこはぐっと我慢する。

「この一週間、どんな事があった?」

直樹は琴美の髪を撫でながら、優しく尋ねた。本当は、出張先の海外からも時差を押して家に電話をかけていたのだから、聞かずとも大体の事は知っているというのに。
が、事実触れられる距離で無事を確認するという事は、ただ声だけでそれを確認するのとは全く次元が違う安心感を得られるものだ。直樹にとって、それは、神戸で単身赴任生活を送った時に身にしみて感じた事実であった。

琴美は直樹の居なかった1週間の出来事について、舌足らずな口調で話し出す。そして、今日幼稚園で覚えて来たひな祭りについての知識をもう一度復唱してみせた。

「よく覚えたな。やるじゃん」

直樹に褒められ、琴美はエヘへと得意気な顔を見せる。

「ねぇパパ。みーちゃんね、もうひとつ習ったことがあるの」

「へぇ。じゃあ、それも話してくれる?」

「うん!」

琴美は返事するが早いか、トンとソファから降りると、雛人形の飾られている場所へ小走りに向かって行き、くるりと振り返った。


「あのね、お雛様は可愛いけど、ずっと飾っていちゃいけないんだって」

「そうだな。理由も知ってるか?」

「もちろん!」

直樹の問いに琴美にっこりと頷く。

「それはね、そうしないと“イキオクレ”になっちゃうからなんだって。そうなったら大変よって、ゆうかちゃんのママが言ってたの」

せっかく綺麗なのに、残念だなぁと、雛人形をじっくりと眺める琴美に、直樹をはじめ大人たちは、少し笑ってしまう。
“祭りが終われば雛人形は速やかに片付ける事”とされるのには、元々雛人形には厄払い的な要素があるから等、他にも理由はあるのだが、ゆうかちゃんのママは、子供達に手っ取り早く理解させるために、嫁に行き遅れるという説だけを話したようだった。


「あぁ、でもそれなら寧ろこのまま飾っておこうかしら・・・?だって、みーちゃんがいつかお嫁に行っちゃうなんて、私、想像しただけで涙が出そう」

「ママ、いくらなんでもそれは気が早いんじゃないかな~?」

「そうですよ~、奥さん」

想像力豊かな余り早くも瞳を潤ませる紀子に、重樹と重雄は苦笑する。が、紀子はそんな二人に「そんな事ないです!」ときっぱり言い返した。

「そんな事言って、うかうかしていたらあっという間に子供は結婚するのよ!お兄ちゃんと琴子ちゃんだって、そうだったでしょ!?」

「「は、はい・・・」」

それは紀子が画策したからなのでは、と内心思う2人だが、そこは何も言わない、言えない。紀子は、相も変わらず入江家で一番の実力者なのだ。

「お袋、頼むから琴美にだけは余計な真似するなよ」

早くも母の考えが読めたらしい直樹は、紀子をギロリと睨む。が、紀子は

「あら、誰もみーちゃんに結婚するななんて言ってるんじゃないわ」

と、ちっとも意に介さない。

「父さん、僕は将来狭くても違う場所で暮らそうかな・・・」

「そ、そうだな。裕樹には会社も継いでもらうことだし、住む場所くらいは違う方がいいかもしれないな・・・」

裕樹と重樹はこっそりと話し合った。
一方、紀子は引き続きあれこれ思案し続ける。

「そうねぇ・・・、みーちゃんが大きくなっても一緒に居られるようにする為には、やっぱりマスオさん方式が一番堅いわよね。ねぇ、みーちゃん、将来ここで一緒にみーちゃんと暮らしたいという素敵な男の子に心当たりはないかしら?」

「「「「「・・・・・。」」」」」

それを聞いていた周りの者達は、それは無茶な相談だと唖然として紀子を見つめた。直樹は頭を抱えて溜息をつく。一体どんな人間が、紀子の横暴に耐えられるだろうか。

が、琴美は思いがけない返事をする。

「うん、居るよ~?まさしくんなら、きっといいって言ってくれると思う」

その言葉に、皆は一瞬動きを止めた。

「ちょ、ちょっと待って。みーちゃん、それってどういう意味・・・?」

もしやと思いながら、しかし琴子はまだ信じられないというように琴美を見つめる。すると琴美は、

「エヘへ、実はみーちゃん、プロポーズされちゃったの」

と照れたように、しかしどこか誇らしげに笑った。

「「「「・・・。 え~~!!?」」」」

その子供が使うにはあまりにも唐突な言葉に、大人たちは皆目を大きくして驚く。そして、歓声を上げて食らいついたのは、勿論紀子と琴子だ。2人は琴美に興奮気味に駆け寄ると、質問を浴びせる。

「ねぇ、みーちゃん。それ本当!?」

「うん。本当」

「どんな風に!?」

「んーとね、ラブレター貰ったの」

「ま~~!今時の子は積極的なのね~~」

紀子と琴子は手を取り合ってキャッキャと笑い合う。女性と言うのは、たとえ子供のままごとのような恋の話でもこうして盛り上げれるらしい。
それに対し、男性陣は複雑な表情を作ってその様子を眺めている。そんな中、裕樹はチラリと直樹の表情を窺った。

「・・・なんだよ?」

「えっ、あの、別に・・・!」

視線に気付き、訝しげにこちらを見返してくる直樹に、裕樹は慌てて首を振る。そして、自分の兄がそこまで親馬鹿でないことを確認出来たことに、またこっそりホッと息を吐き出した。


一方、女性達の会話は止まる事を知らない。


「ねぇねぇ、どんな事が書かれていたの?」

「『みーちゃん、すきです。みーちゃんのためならなんでもします。だから、大きくなったらけっこんしてください』って書いてあったよ」

さらに質問を重ねる2人に、まだ隠し事をする事を知らない琴美は包み隠さず内容を話す。すると琴子と紀子は顔を赤らめて手を取り合うと、

「「あ~ん、いいわね~~!!」」

とまた一騒ぎする。そしてふと思い出したように、

「ところで、みーちゃん返事はどうしたの?」

と別の心配を始めた。

「で、でも今日渡されたばかりなら、返事はさすがにまだかしらね・・・?」

「そ、そうですよね」

紀子と琴子はひそひそと耳打ちする。すると琴美はあっけらかんと

「もうしたよ?」

と答える。そう、琴美は密かに地獄耳だ。


「まぁ!みーちゃんったら、そつがないわね~」

「な、何て答えたの!!?」

紀子と琴子は興味津々に琴美を覗き込む。すると琴美はクスクスと笑うと、「知りたい?」と2人の顔を交互に見比べた―。







はい。またまた山なし谷なしのお話ですよー(^▽^;)←つづきもな!!

こんなブログに遊びに来てくださる方々、本当にいつもありがとうございます♪

原作以降の妄想  コメント(5)  △ page top


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::りあ様、コメントありがとうございました。
こんばんは!
いえいえ、とんでもないです!いつもこんなに丁寧に要所要所を拾ってくださって、本当に有難く思っております♪

りあさんもちらし寿司を御用意されたのですね!ウチも一応・・・。でも仕事帰りに買ったものですよ(^^;)ごめんよ、娘・・・。こんな母で(苦笑)
りあさんは十分だと思います!ウチに来てくださいませんか~~!?(←何言ってんだ!?失礼しました!)

1度聞いただけの話を暗礁出来るのは、ほんと入江くんのDNAですよね!
そして、入江くんが大好きなのはまさしく琴子のDNA♪
『チャイム2回』や、玄関に駆けつける2人の図は、そうです!まさに原作やアニキスを踏襲させていただいたんですよ♪まさしく、『歴史は繰り返す』です。こういう地味な描写にもきちんと気付いてくださるりあさんのような方が居られると、もう本当に嬉しくてテンションがあがります!(^^)/

裕樹と琴子の会話にも注目してくださってありがとうございます♪
何気に、裕樹と琴子の会話、もしくは裕樹と入江くんの会話を書くのが今回楽しかったので、ツボに嵌っていただけたと聞くと有頂天です★


そして、ラブレターをもらった琴美ちゃんの返事ww
期待(←ププッ!)を裏切ってしまいましたね(笑)
でも、『いらない』・・・を琴美ちゃんが言ったら天使のような悪魔ですよね~~(^^;)

後編にも楽しいコメントを寄せて下さってありがとうございました!またあらためてそちらにもレスさせていただきますね。


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::吉キチ様、コメントありがとうございました。
こんばんは。
キリリクの途中ですのに、いきなり脱線してしまい申し訳ないと思っていたのですが、温かいコメントをありがとうございました!!

『バッチリと直樹の賢いDNAと 決めたら揺るぎない信念持つ琴子のDNA』・・・。ああ、もう本当にそうですね♪こんな見事に2人の良いところを受け継いだ琴美ちゃんって最強だと思います♪

そして、何気に成長した裕樹に注目していただけたのが嬉しいです~~。そうなんですよ。今回は原作の終わったところから4,5年後という設定ですから、裕樹ももう大学生なんですよね。さすがに「お兄ちゃん」とか「パパ」とは呼んでいないだろうなぁ、と(笑)ママのことも「母さん」くらいに呼んでいるのではと思います(^m^)

琴美のさらりと爆弾発言に盛り上がるのはいかにも紀子ママと琴子って感じですよね。続き、早速読んでくださって、コメントもしてくださってありがとうございます!またあらためてそちらにもレスさせていただきますね。
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::良い所DNA継承
    こんばんは
 ワァ~イ 新しいお話しありがとうございます。
バッチリと直樹の賢いDNAと 決めたら揺るぎない信念持つ琴子のDNA・・・最強の琴美ちゃんですねぇ。 

 琴子も直樹のDNAとは競わない・・・納得だし なによりも裕樹の成長に・・・ビックリですよぉ。言葉遣いが大人なんですよねぇ。 兄さんとか父さんとか・・・ママはなんて読んでるんだろう?確か琴子は琴子って呼んでたかなぁだから おまえ・・・変化してると思ったけど間違ってたらごめんなさい。

 でも家族みんな琴美の爆弾発言に・・・まさしく琴子の娘だぁ~って思えたし、ママと二人で芸能れポーター風に聞き込み開始ですねぇ。
 さぁ琴美の答えは気になってますので・・・既にアップして頂いた次へジャンプします。アップありがとうございました。
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::紀子ママ様、ありがとうございます。
こんにちは♪
琴美ちゃんの返事を聞きたいと仰ってくださってありがとうございました!!
先程後編UPしましたので、また読んでやってくださいね♪

そうそう、琴子はかなーりやせ我慢をして入江くんにべったりしたいのを耐えているんだと思いますw だって、琴子の入江くんを思う気持ちはママになってもずっと上昇中だと思いますから(^m^)

そして、こんな私の話でも素敵だと、楽しんで読んでいると仰っていただけて本当に嬉しいです。いつも優しい言葉を掛けて下さってありがとうございます!!

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