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::trust
RuRuRuRuRu・・・・

一家での夕食を終え、琴子が後片付けをしている時、電話が鳴った。

「はい、入江でございます。・・・・ わぁ、久しぶりだね! えっと、先日は入江君がお世話になりました、なーんて。・・・ そう?奥さんっぽかった? フフ、照れるな~。 あ、入江君、今書斎で勉強してると思うからちょっと待って・・・ え?入江君じゃなくて私に用?
・・・・・え? 私も一緒に? 入江君、そんな事言ってなかったけど・・・え~!?内緒!?・・・・うん、うん ・・・入江君、怒らないかなぁ。・・・・ううん、行きたい!・・・・ うん、じゃあまた明日ね。おやすみなさい♪」

――楽しみだな
琴子は弾んだ声で受話器を置いた。  



――深夜0時

直樹は夕食後すぐ書斎に入り、予定のある明日の分も纏めて進めておくべく論文を仕上げていた。
ふと集中力が途切れ、喉も乾きも感じたので、飲物を取りに行こうと立ち上がった時、

コンコン
ドアをノックする音と同時に扉が開き、琴子が書斎に入って来た。

「入江君、コーヒー持ってきたんだけど」

「ああ。ちょうど欲しかったんだ。サンキュ」

直樹は琴子の持っているトレイの上からコーヒーを受け取り、美味そうに喉に流し込む。


「今日も遅くまでかかりそう?」

「ああ、明日は渡辺と会う約束だからな。その分も今日やってしまおうと思ってるから」

「そ、そうか。そうだったね。うん、そうだそうだ。明日入江君、渡辺君と会うんだよね」

「なに慌ててるんだよ」

「え!?そ、そんなことないよ~。この間はA組の人が沢山いて、あんまり話せなかったんだよね」

「まぁな。あいつ、幹事だったし」

琴子が何故か顔を赤くして慌てた口調になっているが、そんな様子は日常茶飯事なので、直樹はそれ以上問い詰めることなく返事する。

実際、同窓会の時は幹事として周りに気を配っていた渡辺と、周りを女性に囲まれてしまっていた直樹は話す時間がなかった。 1次会で直樹が帰る際、渡辺にまた、と声を掛けた。
その後渡辺から連絡があり、改めて2人で食事に出掛ける事になり、それが明日なのだ。


「そ、そうだ。私、明日は朝から実習だから今日は先に寝るね。頑張ってね、入江君。おやすみなさい」

まだ少々顔が赤い気がするが、直樹に労いの言葉をかけ微笑む琴子に、直樹もああ、と返事をして再び論文にとりかかった。




――翌日。

その日は2限からの講義だった直樹は、いつもより少し遅く眼を覚ました。
1限から実習の琴子の姿はもう無い。自分も調べ物の為に講義開始時間よりも早めに家を出た。

大学での日程を終え、約束の時間に間に合うように支度を整える。
そして、ふと気付く。

・・・・そう言えば、今日は大学でも一度も琴子に会わなかった。

例えば今日のように、2人の時間割の違いで、朝一緒に登校する事が無かったとしても、琴子はいつも何処からか直樹を見つけて駆け寄ってくるのに。直樹の帰りが遅くなると分かっているのなら尚の事である。しかし、今日は一度もそんな気配がなかった。


―― 何を考えているのやら。
昨夜の様子を思い出し、溜息をついた。



「いらっしゃいませ!!」
渡辺と約束している居酒屋の扉を開けると威勢の良い声で出迎えられた。

「7時半から予約している渡辺ですけど」
予約の名を告げると、帳簿を確認した店員は

「ありがとうございます!3名様でご予約頂いている渡辺様ですね。お連れ様はもういらっしゃっておりますので、ご案内いたします」

―――3人?
疑問に思いながらも直樹はそのまま店員の後ろに続いて中に入った。
案内された席を見て、昨日からの疑問に解答を得る。

「・・・・・琴子。どうしてお前が此処に居るんだ!!」

「ひっ・・・・!」

直樹の一喝に琴子は目を丸くして仰け反る。

「まあまあ入江、琴子ちゃんは悪くないよ。僕が昨日電話して琴子ちゃんも一緒にって誘ったんだ」

悪びれることなく笑顔で渡辺がそう言う。

「・・・・渡辺、どういうことだ?聞いてないぞ!」

「うん。言わなかったもん」

「お前なあ」

「わ、私帰るよ・・・!なんだか入江君、怒ってるし」

「いいのいいの、僕が琴子ちゃんにも会いたかったんだから。今日は3人で飲もうよ。な、入江?」

「・・・・ったく」
直樹が琴子の隣に座ったのを了承と受け止め、渡辺は注文の為に店員に声を掛けた。


「ではひとまず、久々の再会に乾杯!」

渡辺の音頭を合図に3人はグラスを合わせる。

「こうして会うのって、約1年ぶりだよね!」

「そうだね。前に会った時は琴子ちゃんが看護科に転部する報告を受けた時だったね」

「そうそう。文学部を落第しちゃって、これからの事を迷っている時に偶然渡辺君に会ったんだよね。あの時は本当にありがとね。渡辺君の話を聞いて、夢を諦めずに頑張る決意が出来たんだもの」

「僕はそんな大したことはしてないよ。ところでどう?看護科に転部してからは。順調?」

「うっ じ、順調よ・・・・?」

「何誤魔化してんだよ。ちゃんと言ったら?テストでは赤続出で補講、実習では注射でグループ全員を恐怖に陥れてるって」

「い、入江君・・・・もう、イジワル」

「事実だろ」

「アハハハ・・・・!!相変わらずだな。2人を見てると楽しいよ」

「「どういう意味?」」

「ぷっ そうやって声揃えるところとか、仲良いんだなぁ、って幸せになるんだよ」

楽しそうに笑う渡辺に直樹と琴子もふっと微笑った。

「じゃ、今日はどんどん食べて、どんどん飲もう!」

「お前、飲みすぎるなよ」

「分かってるもんっ」




分かってると言いながらも、やはり琴子は酒に弱く、3杯目のお代りをした時点で眠りについてしまい、直樹の膝の上に頭を預けている。

「ったく、連れて帰る身にもなれっつーの」

直樹が眠る琴子に悪態を吐くと、、渡辺が言う。

「・・・でも、大事でしょうがないって感じだな」

「?」
表情で何の事かと聞いてくる直樹に、渡辺は指をさして尋ねる。

「それ、癖?琴子ちゃんの髪の毛を指にクルクル巻きつけるの」

「ああ・・・そうだな。言われてみれば」

直樹は髪の束から指を解放すると、今度は琴子の頬を軽く抓る。

「間抜けな顔」

そんな様子を渡辺は優しい目で見つめている。



「・・・・前さ、同窓会の時。入江が帰ったあと、皆入江と琴子ちゃんの噂で持ち切りだったよ」

「へえ」

「女の子たちはあからさまにガッカリしてたな。もう来年からは同窓会、続かないかもな」

「1年に1度は多すぎたから、良いんじゃない」

「もう来るつもりないくせに」

「まあね」
渡辺が咎めると直樹はニヤリと笑った。

「入江が理工から医学部に移ったことを知らなかった奴が結構いたよ。琴子ちゃんも今看護科で勉強してるって言ったら、皆更に驚いていた。相変わらず、入江の為なら凄いパワーだって。確かにそれは、僕も思うところだけどね」

「そうだな。こいつなりに毎日頑張ってるみたいだし。・・・ところでお前はどうなの?司法試験の方は」

「ああ、去年は旧司法試験の二次試験で落ちて、4月からは法科大学院に進んで勉強を続けているんだけど。今の段階でまだ合格するには力不足だと思うし、受験回数制限もあるからね、今年の受験は見送ることにしたよ」

「そうか。でも、お前なら良い弁護士になれるだろうから頑張れよ。資格を取る事が第一の目標だろうけど、本質はその後どうするかだからな」

「はは、入江にそう言ってもらえるとやってやるって気になるよ。・・・でも、どうして僕が弁護士の資質があると思う?正直迷う部分もあるんだ。・・・仮に司法試験も修了試験もパスして無事資格が取れたとして、晴れて弁護士になったとしても僕にその資質があるのかって。やりたい事と、適性は決してイコールとは限らないだろ?」

「確かに。それは俺にだって当て嵌まる事だしな。・・・でも、お前は弁護士に向いてると思う。お前は、周りで起こっている事を公平な目で判断できる人間だから」

「公平な目?」

「例えば、俺を見る目。俺の事、色眼鏡なしに接してきたのは、お前が初めてだったからな」

「ああ・・・・」

渡辺は直樹の言うところを合点した。
直樹はその外見、頭脳などから良い意味でも悪い意味でも先入観を持たれ続ける学生生活を送っていた。
いつも周りの思惑など意に介さない様子だったが、それは一種の自己防衛だったのかもしれない。

「ありがとう。入江にそう思ってもらえると、自分にも少しは資質があるのかも、って思えるよ」

「ああ。お前の頭なら、さして心配しなくてもいずれ試験はパスするよ」

「・・・はぁ。そこがなかなか難しいんだけどね。まぁ愚痴を言っていても始まらないし、やるべき事をやるよ。しかし、入江からこんな風に励まされる日が来るとはね。これも琴子ちゃんのお陰かな」

「なんでそうなるんだよ」

「だって、昔の入江なら、弱音を吐く奴はその時点で切り捨てただろ?」

「ま、そうなるか・・・。昔はなんでこいつ、弱音吐きながらもこんなに頑張るんだろうって不思議だったな。で、なんでそれでも出来ないんだろうって。 でも、それ以上に、こいつには出来ない事でも諦めずにやってのけるパワーがあるんだよな。 その意気で、これからの事も乗り切って欲しいとは思ってる」

「乗り切る?」

「ああ。こいつ、もうすぐ看護の実習に入るんだよ。今までは、俺が医者になるから看護師になりたいって、その思いだけでやってきたけど、現場に入ったらそれだけで勤まる仕事ではない事を思い知らされると思うんだ。 一足先に実習に行ってるから実感する事だけど、綺麗事では済まされないからな。病気の事は勿論、患者の内なる事情に触れることも沢山ある。その時に、それでも看護師になりたいという覚悟をちゃんと持って欲しいと思ってるんだ」
直樹はそう言いながら琴子の額にかかった髪を退けてやる。

――本当に、優しい瞳をするようになったな・・・
そう思いながら渡辺は直樹に言う。

「・・・・琴子ちゃんなら、大丈夫だって思ってるんだろ?」

「――ああ」

「そうだよな。何せ、入江の心を動かした琴子ちゃんだもんな。そんじょそこらの事でへこたれたりしないよ。そんなところに、周りは惹かれるんだろうな」


「・・・・周り・・・・?」


一瞬にして直樹に目つきが冷たいものに変わる。
渡辺は失言に気付いたが、もう遅い。渡辺は観念する。

「ほら、前の同窓会さ・・・・。実は琴子ちゃんの事いいなぁって思ってたって皆言ってたんだよ」

一部分には触れずに渡辺は説明をする。


「・・・・・・・」


「入江、機嫌悪くなってる・・・・・?」


「まさか」

直樹は氷の笑みをたたえている。


「本当に・・・・?」

――― 絶対嘘だ、と思いながら渡辺は尋ねる。



「・・・・例え機嫌が悪いとしても―――」



――― やっぱり機嫌悪くなってるじゃないか・・・・・・

「琴子が好きなのは、俺だから」

「!!」


直樹は、不敵な笑みを浮かべた。




その後、無理に話題を変えて他愛の無い話をし、そろそろいい時間になったので帰ることになった。
琴子が眠ったままなのでタクシーを呼んだ直樹は渡辺に同乗するよう言ったが、渡辺はそれを辞退した。


「俺の家、ここから近いし。酔い覚ましに散歩がてら歩いて帰るよ」


2人が乗り込んだタクシーが見えなくなるのを確認した後、渡辺は歩き始めた。


―― やばかった。

元クラスメイトが軽い気持ちで琴子ちゃんを可愛いと思っていたことですら、入江には禁句なんだな・・・

それ以上を口にしないで正解だった。

実はあの後、高平が言っていたのだ。

「中学時代に相原琴子が好きで、今も尚、気持ちに踏ん切りがついていない男が居る」と。

そんな事が直樹に知れたらどうなることか。

そう言えば、琴子は同窓会に出席するのだろうか。確認するのを忘れていた。

―― まぁ、琴子ちゃんが入江しか見えていないのは事実だし。行ったとしても問題はないだろう。

根が性善説である渡辺はそう思い直した。


―― いいなぁ。俺にも琴子ちゃんみたいな彼女、出来ないかなぁ・・・

渡辺は星空を仰ぐようにしながら、ゆっくりと帰り道を歩いた。











※ 司法試験について、原作で描かれた当時と現在では制度が変わっているので、このお話では現在の制度をベースに進めさせて頂いたつもりですが、制度が複雑な為、間違った解釈をしている可能性が高いです。阿呆が書いた話ですので、どうかそのあたりは軽ーく流してください orz・・・

 

あとがき

少し加筆修正しました。一度upしたものを取り下げてしまい、申し訳ありませんでした。

次回、琴子の同窓会編を書いてみたいと思ってます。
まだ全く考えてないのでお時間頂きますが、また読んで下さると嬉しいです(^-^)

16巻スキマ  コメント(5)   トラックバック(0)  △ page top


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::コメントありがとうございました
吉キチ様

再びこんばんは。かなり昔に書いた作品へのコメント、ありがとうございました(*^_^*)

でも、このお話・・・、全然覚えていませんでした(>_<)返信の為にいま少し目を通したんですが・・・、ひぃぃぃ~恥ずかしい!!こんな駄文にコメント下さって申し訳ない気持ちです。

けど、私って今も書いてる事根本的に変わってないなと再確認させて頂きました(笑) 直樹は琴子本人には言わないけれど、周りには結構正直に気持ちを吐露していますねww

さて、この後は『proof』ですよね。なんか勢いで書いた記憶だけはあります。が、やはり恥ずかしくて振り返りたくない感じ(^_^;)ほんとお暇な時にでも読んでやって下さい(笑)いつも絶妙なコメントありがとうございます♪
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:: 隠して見せない
  こんにちは
 渡辺君ドッキリに 直樹は してやれちゃったねぇ・・。
琴子もバレないように直樹避けたんで、なんかあるだろ琴子アンテナレーダーに 見つかったしねぇ。
 仕返しに現状を暴露されちゃったけどねぇ・・・。でもでも、直樹は惚れまくって愛しいから・・・出さない見せない優しさで、見守って応援してるんだよねぇ・・・。渡辺君には しゃべるけどねぇ・・・。

 琴子の同窓会・・・琴子が直樹の時に感じた以上に直樹は 心配で堪らんだろうなぁ~。なんせ本人気づいてないが かなりモテルから・・・。 行くなぁ~も言えず・・・どう対処するんだろう?ギャフンぐらいするのが直樹だから・・・。
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::拍手コメントありがとうございます
M様
こんにちは♪
同窓会から続けて読んで下さってありがとうございます(^^)
入江君の小さなヤキモチに反応して下さってありがとうございます☆
そして、trustですが、このお話では入江君の、渡辺君や琴子に対しての信頼をテーマに書かせて頂きました。>色眼鏡~の下りはまさにその部分です。M様の仰る通り、琴子がいたからこそ、渡辺君への信頼に気付き、素直に言葉に出せるようになった気がします。
琴子の同窓会も何とか書き終えたので、お暇な時にでも覗いてみてください(*^_^*)
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::コメントありがとうございます
なおき&まーママ様
こんばんは♪一度upを取り下げる前に早々にコメントをくださってありがとうございます!本当に、あんな急にぶち切れのお話に・・・・orz いえ、今も大して変わらないですが^_^; 
渡辺君がいいんですね?そうですよね?^m^
なんて癒しの王子なんでしょうか。イマイチ私の話では表現できてませんが(汗)
そして!コミック確認しました!うわ、本当に男ばっか・・・!!琴子、親しみやすいですもんね♪
続きなんですが、なんだか方向性に迷っていて^_^; もう、なおき&まーママ様の妄想を詳しーく教えていただきたいくらいです!!(←盗作宣言ですね(汗)

v-25拍手コメントありがとうございます

v-20M様
こんばんは♪
Mさまの興奮がパソコンから伝わって来るようで嬉しいです(^-^)こんな渡辺君で良かったですか?早く弁護士になってね、渡辺君。試験を受けることすらさせてあげられなくてごめんね(T_T)
皆、君の事が大好きだから・・・!!あ、すいません。なんだかおかしなコメントのお返しで^_^;
ミスター性善説とか、吹きましたww でも私も、渡辺君と琴子の居ない入江君なんて、砂糖の入ってないケーキみたいだと思います!(意味不明)
えっと、こんな私ですが、これからも宜しくです☆

v-20R様
こんばんは♪R様の強がりの指摘にそうそう!!と思いました(^^♪
こんな事くらいで不機嫌になるなよ、って感じですよね。自分で書いてて何ですが。
さあ、この強がりを上手く崩せるといいんですが(笑)でも、なんだか負けっぱなしの直樹を書いているなぁ。もっと俺様な直樹を書いてみたいです^_^;
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::渡辺くん♪
わーい渡辺くん!!と入江くん!!
彼だからこそ、、入江くんも気が緩んで…もう、、無意識に琴子の髪をくるくると。。しかも膝まくらしちゃってるんですよね??うきゃーって感じです。
そういえば、、何気に琴子って男子に人気があるって場面を原作本に発見したんです。。F組の進級試験で琴子に入江くんに勉強を教えてくれるようお願いしてるクラスメートたち、、ほとんど男子なんですよ!これホントに、、。いままで琴子を完全ブロックしてた金ちゃんがいかないことを知って便乗したんじゃーないかと…なーんて。。
さてさて、、琴子の同窓会、、もちろん直樹は自分にしか目がない琴子を他の輩に見せつけに行くんですよね…きっと。まったく、、あんなに人前でいちゃつくな!と言っておきながら何気に自分でそう仕向けることが多々ある直樹…。。やっぱり素直じゃないですよねぇ…。
ありゃ?コメントが半分自分の妄想に…すみません^^;次回作品も楽しみしてます☆
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