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::A Midautumn Night's Dream ⑤

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秋の夜、別荘からテニスコートまでの道のりにある雑木林は、うっすらと月明かりが差し込んではいるものの、ほの暗い影が万物を覆っていた。
しかしそのうす闇を抜け辿り着くテニスコートには眩いばかりのライトが煌々と照らされ、活気溢れる人の声とラケットがボールを打つ明瞭な音が響いている。

くじで決められた対戦表により始められた試合は当初おれが予感した通り、自分の下に飛んできたボールは勿論のこと、琴子の元に飛んだ球もおれがカバーに入らなければならないハードな展開となっていた。おれは今、汗だくになって前後左右にコートを駆け回っては黄色の硬球を追いかけている―。



「くっ・・・!」

左サイドのコーナーに鋭く深く入った球をおれがぎりぎりバックハンドで打ち返した時、ギャラリーからは「おお~~!」だとか「拾ったぞ!」というどよめきが上がった。が、なんとか拾ったその球は高く上がりながら向こうの前衛に返り、そしてそれは相手方にとってチャンスボール以外の何物でもなかった。球の下では、昼間おれ達に一緒にテニスをしないかと声を掛けてきた男―、有沢がしっかりとスマッシュの体勢に入っている。


「―くそっ 琴子、邪魔だ!そこ退け!」

「は、はいぃっ!!」

おれの怒声に合せ、琴子は咄嗟に邪魔にならない場所を探しだすとそちらへ一目散に駆け出していく。(可笑しなことに、琴子にはその判断力だけは備わっている。)
おれは有沢の狙いを読むとその場所めがけてダッシュで捕球に入ったが、高速のスマッシュに追いつけるほどのスピードも体力も最早持ち合わせてなどいなかった。
右側のサービスのコーナーに鋭角に入ったボールは強くバウンドしてコートの外側へと弾け飛んでいく。



「ゲーム! ゲームセットウォンバイ有沢、井上組。カウント7-6」
審判が高らかにコールをする。
白熱したといえるワンセットマッチはとうとう決着がついた。



「ありがとうございました」
コートの真ん中に4人が駆け寄り、ネット越し握手を交わす。

「いや~、想像以上に楽しかったです!入江さん、やはりあなたは噂通りの方ですね。ほぼ一人で試合していたも同然なのに、タイブレークまで粘るとは」

白い歯をキラリと光らせ、有沢が爽やかな笑顔をこちらに向けてくる。

「本当。それにお二人の息もぴったりで、とても久々にダブルスを組まれたようには思えなかったし。さすがベテランの夫婦って感じ~」

有沢とペアを組んでいた井上さんもそう言うと朗らかに笑った。彼らは付き合い始めて間もない仲だと言った。

「そ、それほどでも~~」

井上さんの意外な褒め言葉に、琴子は頭を掻きながら謙遜する。そしておれのウェアの裾をクイクイと引っ張ってきた。


「ねぇ入江くん、あたし達息がぴったりだって!」

「っとにめでたい奴だよな、お前は」

満面の笑みを向けてくる琴子におれは呆れて溜息を吐く。

「お前が褒められたのは逃げ足の速さだけだよ」

「し、失礼ね!」

琴子は憤慨するとおれを睨んできた。

「い、1度位はナイスプレーだってしたはずよ!?」

「ふーん。まるで思い出せないけどな」

おれはわざとらしく首を捻ると僅かに口の端を歪ませる。

「じゃあ、何時どんなプレーをしてくれたか具体的に教えてくれよ」

「うっ え、えっと・・・、そ、それは・・・」

琴子はたちまち言葉を詰まらせると、助けを求めるように有沢たちに目を向けた。が、2人は琴子に向かって苦笑するばかり。


「どう?何か見つかった?」

白々しく尋ねると、琴子は「入江くんのイジワル!」とお決まりの文句を言って頬を膨らませた。おれたちのやり取りに有沢たちはクスクスと笑う。


「まぁまぁ、とにかく休憩しましょうよ」

その場をとりなすように有沢が言う。

「そうですね。ほら、琴子行くぞ」

おれは琴子を促すとコートから離れ、数台並んだべンチの一角で休憩をとることにした。





「・・・入江くん、そんなに負けた事が悔しい?」

2人並んで座ったベンチで、琴子がぼそりと尋ねてきた。
避暑地の秋の夜風は涼しく、火照っていた身体を一気にクールダウンさせる。


「そーだな。もう少しペアの相手がまともだったら、勝てたかもしれないしな」

おれはしれっと答えた。どんなお遊びだろうとも勝負で負けるのは気分が良くないのは確かだ。


「もう、まともに動けないようにしたのは誰なのよ?///」

すると琴子は顔を真っ赤にしておれを睨んできた。そして

「入江くんのせいで脚ガタガタだったんだから!あれだけ走ったことだけでも褒めてほしいくらいよ!」
とさらに抗議してくる。


「ふん、それを言うならおれはもっと疲れているんだけどな?」

おれは腕をマッサージしながら琴子を横目に見た。そしてわざとしげしげと琴子の全身を下から上へと眺めていく。


「・・・もしかしておまえ、太った?」

「し、知らないわよ!」

琴子は憤慨した声を上げる。

「で、でもだからあんな体勢でするのはやめようって言ったじゃない!!」

「おい、声でけー・・・っ!」

おれは慌てて琴子の口を押さえた。琴子がフガフガと苦しそうに目を白黒させる。


「あれ、どうかしましたか?」

そこに自販機から戻ってきた有沢たちが声を掛けてきた。

「いえ、何も!」

おれは琴子の口を押さえたまま引きつった笑顔で首を振った。
隣で琴子は益々フガフガしていたが、とにかくコクコクと頷いて有沢たちに『何もない』と合図した。




― 確かにちょっと無茶しすぎたかな。



おれは少し反省しながらなおも腕をマッサージする。

先程・・・、勢いに任せて琴子を抱いたおれは、誰にも遠慮が要らないその状況にいささか暴走してしまったのを認めざるをえない。
そして加えて言うならば、もう無理だと言う琴子を宥めたり煽ったりしながらその行為を続けたのは、琴子が疲れて「もうテニスなんて出来ない」と言い出すかもしれないという期待が少なからずあった為だった。
けれど琴子は気だるそうにしながらも「約束だから」と身支度を整え、おれはそれを止められるはずも無かった。そして今、互いに疲労を抱えながら一試合を終えたわけである。


「入江さん、もしかして運動不足ですか?」

有沢が少しからかうな表情を浮かべながらおれたちにもポカリを勧めてくれる。
おれは礼を言ってそれを受け取ると、「最近忙しくて」と適当に答えた。


「ところで琴子さん、琴子さんのテニスウェアってすごく可愛いですね」


そこで井上さんがふと話題を変えた。琴子もにっこり笑うと「井上さんのも素敵」と彼女のウェアを褒める。
テニスウェアに限らず、女が互いの服装を褒めあうのは良くある光景だ。おれはその会話に取り立てて興味を持つ事無く水分補給をする。


「あ、そういえばおれも琴子さんのウェアは気になっていたんですよ」

すると有沢がこの話題に食いついてきた。


― へぇ・・・。

特にファッションに興味がありそうな印象ではない男の言葉に、おれはチラリと有沢を横目に見た。


「琴子さんのウェアって、『コトリン』の衣装に似ていますよね」

「グッ・・・!!」

おれは思わず水分を喉に詰まらせる。
そして、漸く琴子が別荘で『なにか思い出す事はない?』と聞いてきた訳を理解した。

そう・・・、琴子が着ているワンピース型のウェアは、『ラケット戦士コトリン』の中でコトリンが着ている服に確かに酷似していたのだ。つまり、琴子はそれに気付いて欲しかったという訳だ。


「もう、有沢くんってばそんなマニアックな事言わないでよ~」

井上さんはいささかうんざりしたように息を吐き出す。そして軽く手を合わせるような仕草をすると、
「ごめんね?こんな事急に言われてもいきなりビックリしちゃうわよね」と琴子に向かって苦笑した。


「この人さ、実はいわゆるゲーマーなのよ。あ、でも『コトリン』は私でも知ってるくらいだからメジャーか。知ってるかな?昔、ファミコンで『ラケット戦士コトリン』ってけっこう面白いゲームがあったんだけど・・・・」

「ゲホッ ゲホッ!」

おれは琴子を止めようとしたが、器官にひっかけてしまったようで思うように声が出せない。

「― 知ってますとも!!!」

すると琴子が目に涙を溜めながら井上さんの手をひしと握った。
井上さんは「わっ・・・!」と小さく叫ぶと少し後ろに仰け反った。

「な、なに?急にどうしたの琴子さん!?」

井上さんは困惑したように琴子を見つめるが、琴子は一向に気にしない。それどころか感涙にむせび泣く始末だ。

「うっ、うっ、うれしいです!入江くんの作ったゲームを今でもこんな風に覚えてくれている人たちが居るなんて!」

「「・・・え・・・?」」

琴子の言葉に、有沢と井上さんは目を丸くするとお互いに顔を見合わせた。


「ゲホッ ゲホッ!」

おれは再び嫌な予感で頭がいっぱいになるが、まだ声が出せない。


「そういや聞いた事ある・・・。なんでもこのゲームはパンダイの社長の息子が学生の時に作ったゲームで、しかも自分の奥さんをイメージキャラにしたって」

「あ・・・、そういえば琴子さんの名前って『コトリン』・・・・・・」

「雰囲気もなんだかそっくりだし・・・・・」

2人の視線はおれと琴子の間を行ったり来たりしている。


「あの、つまり『ラケット戦士コトリン』は、入江さんが製作して、モデルは琴子さん、と言うことですか・・・?」

「はい!あれは入江くんがパンダイとあたしのために必死で作ってくれたゲームでぇ・・・ウフフ・・・///」


好奇の目を向ける2人に琴子は恥ずかしがるどころか胸を張って頷く。そして語尾だけやたらと照れて頬を染める。


― ったく・・・! 琴子の馬鹿!!

おれは頭を抱える。
喉の苦しみからはなんとか解放されたが、この先おれにはまた災難が降りかかるのだろう。
そして、それに対して打つ手立ては、もう残されてはいなかった―。






ひゃ~~!仕事があるのにもうこんな時間!!
続き、あと少し進めようと書いていたらこの倍位になっちゃったので一旦またUPさせていただきますっ。だらだらとすみません!!


P.S.ガッキーの代わりにPC若しくは携帯の向こうから突っ込んでくださる方、大歓迎です。


スキマ未設定(中編)  コメント(12)  △ page top


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::chan-BBさん、ありがとうございます。
chan-BBさん

こんばんは。あらためてお忙しい中コメントしてくださってありがとうございました~。
ぷぷっと笑っていただけるのがこんなに嬉しいなんて(笑)
下らない回想をとにかく真面目に続行する入江くん。
なにをするにつけても全力で、でも空回りな入江くん。
この馬鹿馬鹿しさを受け入れてくださってほんと嬉しいです♪

推理っぽさを感じてくださっていただなんて!そんななかでコトリンが出てきたら、それは「はぁ!?」と思いますよね(笑)
そしてあそこにもっていこうとする私・・・。実は他にも仕込む予定なんですが(←これについてはアップ後私信すると思います)、気付いていただけたらいいなぁ~~(^m^)

ゆっくりまったりいきますよ!考えてみれば集中力のない私がハイペースでUPしていた昨年が異常だったんです(^^;)勝手に凹んだり浮上したりしながら、細々と頑張っていきます(^^)
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::吉キチさん、ありがとうございます。
吉キチさん

こんばんは。先日は数度に渡りコメントをしてくださってありがとうございました!
お陰で楽しいコメントを拝読することが出来幸せであります~♪

ミイラとりがミイラに・・・、そうそう、今回の入江くんはまさにその通りですよね!
琴子からの中止宣言が欲しくていつもより激しくやってしまったら、自分まで疲れてしまったという(苦笑)
おそらく、エプロン琴子ちゃんがキャワユ過ぎたのでしょう(^m^)デザートにむしゃぶりついてしまったというわけですねww
漸く琴子がテニスをしたがっていた訳を書くことが出来たのですが、こんな理由でした♪入江くんが気付かないなんて!という気もしますが、オチが例のアレですからいいですよね?(笑)早くそこまで持って行きたいです!!

そして大嫌いな天敵さんを見事に再現してくださりありがとうございます!
あはは、どんどんボコボコにされる彼の姿がありありと想像出来ましたよ!なんだかジャイアン入ってますよね?この天敵さん『おまえのものはおれのもの、おれのものはおれのもの』って感じで!(←意味分からなくてすみません(;´▽`A`` ) 
入江くんの怒涛の蹴りがお見舞いされるのももろともせず、いやはや、この根性がさすが天敵たる所以ですよね~~。(どんどん何を書いているのか分からなくなってきました・・・(^▽^;)とりあず私もお清めを・・・)

妄想爆走大歓迎です!これからもどんどん突っ走ってください(≧▽≦)
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::藤夏さん、ありがとうございます。
藤夏さん

こんばんは。いつも詳細に読んで下さって嬉しいです~。
入江くん、どんだけ体力と技術あるねん!な今回のお話でした(^^;)
いやほんと、どんな事してたんでしょうね?琴子ちゃんの体が非常に心配です(苦笑)そしてそのうえテニスで駆け回るという・・・。ワンセットマッチでも、タイブレークまでもつれ込んだら相当にしんどいですよね。2人の体力、おそるべし!

ガッキーの突っ込みまでして下さってありがとうございます~~♪まさか藤夏さんが書いて下さるなんて、とっても嬉しかったです!
そっかそっか、ガッキー先生、入江くんって琴子ちゃんの前ではついつい良い格好をしてしまうんですね!!ってうわっ、今後ろから入江くんに蹴りを入れられたような気がします~~(((( ;°Д°))))

災難続きの入江くんですが、漸く出口が見えてきました。多分あと2回くらいでしょうか・・・。ばばばっと書いてしまいたいのですが、文才もなければ集中力も散漫な書き手ですので(;´▽`A``なんとかかんとか頑張ります♪
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::くーこさん、ありがとうございます。
くーこさん

こんばんは。2話連続のコメントありがとうございました~(≧▼≦)
今回もくーこさんのきゃーーーが聞けてムフフって感じです♪

ほんと入江くんてばどんだけ技巧も体力もすごいんでしょうか(笑)
もうここはくーこさんのご想像の中で是非補完してやってください(^m^)
とりあえずガッキー的なレスさせていただくと、
『ふっ、僕なら入江なんかよりずっと満足させてやれると思うよ?(ニヤリ)』ってところでしょうか・・・。←どうぞ遠慮なく蹴り飛ばして下さい(笑)

それと例の件、ほんと停滞しちゃってて申し訳ないです!
こちらのキリリクが終われば…と考えてますが、気分転換に先にアップしちゃうかもです(^^)楽しみにして下さっていると仰って頂けると本当に嬉しくモチベーションも上がります。ありがとうございます♪

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::あけみさん、ありがとうございました。
あけみさん

こんばんは。レスが遅くなり申し訳ないです。
わ~ありがとうございます♪思いもよらぬ展開と思っていただけたなんて!
いえいえ、鈍いだなんてそんなことないです!実はこちらにコメント下さった皆様『コトリン登場は予想外だった』と仰って下さっています~(^-^)こんな事、創作を始めてから初体験かもしれません。書き手としてはちょっと嬉しかったりします(笑)

ゆっくり続きを、とお気遣い下さって感謝します。昨晩続きをと思いPCに向かったら、初っぱなから修正かけはじめてしまいました。こうなるとスパイラルにはまるのが常なので次回のアップはいつ出来るか戦々恐々ですが(苦笑)、ぼちぼち頑張りますね♪

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::管理人のみ閲覧できます
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::babaちゃまさん、ありがとうございます!
babaちゃまさん

こんにちは!そうなんです~。ここに来てコトリン登場です。やっとここまで来たって感じ(苦笑)
のろのろ更新ですが漸く出口が見えてきたので頑張ります。楽しみにしていただけると嬉しいです♪
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::紀子ママさん、ありがとうございます!
紀子ママさん

こんにちは!こちらこそ、朝から紀子ママさんのコメントが届いてとっても嬉しかったです♪
もう!「入江くん最低(笑)」の言葉が今回私にとっては最高の褒め言葉ですww!!ほんと、最低でしょ?(^m^)
琴子ちゃんはコトリンの衣装に気付いてほしかったのに、気付かないは、うやむやにした上でエプロン姿に「いい眺めだ」ですからね!
この時点でも琴子ちゃんが腕枕を拒否したのに頷いていただけて良かったです。
そしてそうなんですよね~。まだやらかしますよ!今回の入江くんは♪そして、例の人も少~しだけ登場します(笑)もう、紀子ママさんってば勘が宜しくってうれしくなっちゃいます!連日の夜更かしが祟り、仕事中立っていてもベリーロールで倒れそうなくらい眠かったので、昨日はPCも開かず早々に眠り、随分とらくになりました。今晩あたり、続き書いていこうと思いましのでまた読んで下さいね♪
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