::秋の夜長に何をする?~裕樹の呟き~
昨日描いたイラストに寄せて短いお話を。
あ、くだらないですよ~~(いつもか)

水玉さん、コメントのシチュ頂いちゃいました~♪

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少し冷え込み始めた秋の夜。

「琴子、風呂空いたぞ」

夫婦の寝室のドアをノックして声を掛けると、僕は自分の部屋に入りまだ湿った髪をタオルで拭いながらマウスを動かしスリープ状態だったPCを起動させた。
続いて引き出しに無造作に入れていた一枚のCDを取り出しディスクドライブに入れる。
勉強を始めるまでの数十分の余暇に聞こうとしているそれは、僕が全く知らないアーティストのものだった。


『これ、最近気に入っているの。良かったら裕樹くんも聞いてみて?』

興味なさそうな僕にそれを手渡した時、好美は『○○と同じ人がプロデュースしているんだよ」とこれまた知名度はあるものの、僕が普段聞かないアーティストの名前を出しにっこりと笑った。

ちょっとこの頃お互い時間が合わなくて会えないからって、自分の趣味ではなさそうな好美のお気に入りの音楽を貴重なリラックスタイムに聴こうとしているんだから、僕も随分なものだ。
きっとアイツに無理矢理恋愛映画やファストフードに付き合わされるうちに、僕の頭のネジはどこか緩くなっていってるんだと思う。

流れてきた音楽はある意味期待を裏切らない、そのプロデューサーらしいテクノポップだった。
調子っぱずれな萌え系(だと思われる)の声は、どこか聞きなれた声のような気がする。
部屋からこれが流れ漏れるのはちょっとバツが悪い気がした僕は、イヤホンをあてがうとインターネットに接続しブックマークをクリックした。


「こういうのはマメだよな、アイツ」

今日の日付の記された記事を見つけ僕は呟く。
モニターに映し出されたのは好美がこの頃始めたというブログだった。高校が違う分、しょっちゅうは会えない僕達の情報交換にと好美が提案したのだ。

もっとも、僕はそんなのに付き合う気はないからブログの登録はしているものの、一方的に好美の日記を読むだけなんだけど。
とはいえ大抵毎晩こうして訪問していたりする。
甘ったるいピンクが基調のテンプレートの中には、学校や家であった些細な事などが絵文字交じりで記されていた。


「そっか、もう来週だもんな」

そこには今日の放課後行われた学園祭の準備の事が記されていた。
忙しいながらも和気あいあいと作業を進めている好美の様子が文面から伝わってくる。

― Y君へ。試食したらとっても美味しかったので当日は是非食べてね♪

最後に僕宛のメッセージを見つけ、「ばぁか、たこせんなんて何処で食べても同じじゃないか」とつっこみながらも僕の頬は実は少し緩んでいたりする。


「・・・僕も何か書いてやってもいいかもな」

そう呟くと僕は管理画面を開いた。
けれど一体何を書けばいいか分からなくてその手は直ぐに止まる。
小学生の頃は琴子の観察日記なんて書いた事もあったけど、自身について語るのは昔から得意じゃない。
自ら発信していない管理画面はやけにこざっぱりとしていて、トピックスばかりが目に入ってくる。

ついそちらにに気を取られた僕はとある記事を何となくクリックした。
それは多分、“お風呂あがりに何をする?”というトピックの題がまさに今の自分の状況にぴったりだった所為だったのだが、然し読み始めて直ぐに分かった事は、それは少なくとも男子高生に向けて発信されているのではなかったという事。

“誰にも見せられない!お風呂から上がってからの女子たちの恥ずかしい行動”
という副題以降、延々と記されるありえない内容に僕はあんぐり口を開けると「げっ・・・、マジかよ」と呻いたのだった。


― パン一で水分補給。

― すっぽんぽんでムダ毛チェック。

― 半裸でシートマスクしながらボディメンテナンス。腹筋100回はノルマ。



それは僕にはどうにも信じられない光景ばかりなのだった。

・・・な、なんだ、これ!?
どんな裸祭り&体育会系だよーーー!?

まさか好美もこんななのか・・・?想像しかけてぶんぶんと首を振る。
そ、そうだ。好美に限ってこんな大胆な行動する訳がない。
大体これ、どうも高校生より上の年代に質問したものみたいだし。
そう、例えば琴子くらいの年代に向けた――。


そこに考えが及んだ時、僕はハタと動きを止めた。
そういや琴子って、いつもどうしてる?

小学生の時からずっと一緒に住んでいるから、僕にとって琴子はどこか本当のお姉さんみたいな感覚があるんだけど、実際は違う。
今や義姉となった訳だけど、元はと言えば赤の他人だ。
意外と気を使う部分もあったのかも・・・。


「いや、やっぱそれはないか」

が、僕は直ぐ肩を竦め苦笑した。
そう、だって琴子はいつもリラックスしているように見える。この頃は涼しくなってきたから違うけれど、つい少し前までは風呂上りはキャミソールと短パンでうろうろしている事もあった。それは昔からの光景。

そういや昔は小さかったし、今は見慣れてしまって何も思わないけど、当時高校生だったお兄ちゃんにはちょっと刺激が強い格好だったように、今更ながら感じる。

「てか、いっつもツルツルだよな。あれ、天然?」

何が・って、あの肌だよ。
だって今まで一緒に暮らしてきて、琴子の肌はいつも綺麗だ。ムダ毛処理なんて気配感じた事もない。
あんだけよく食うのに細いのは体質だって分かるけど(好美はいつも羨ましがっている)、人知れず脱毛とかしてるんならすげーよな。


「天然だよ」

「・・・だよね、やっぱり。なんだかんだ言って、意外と良い体質だよなぁ。世の中の女の人はこんなにも泣ける努力してるのにさ」

「ま、肌は天然として、アイツの場合夜にしっかり動いてるから太らないのかもな」

「そうそう。ったく、昨日も声が聞こえてきて慌ててイヤホンつけたんだよね。おかしいよな、ウチって確か防音工事してるはずなのに」

「あくまで家庭用の範囲を超えないからな。これからは気をつけさせるよ」

「ほんと頼むよ・・・って、え・・・?」


其処まで来て僕はやっと気付いたのだった。
僕、今、声出してた?
というか、会話してた?

慌てて振り返るとイヤホンがPCから外れて、好美が気に入っているというアーティストの調子っぱずれな声が部屋中に鳴り響く。


「えらく珍しい音楽聴いてるんだな、裕樹」

プッと噴き出しそう言ったのは、紛れもなくお兄ちゃんなのだった――。




「お、お兄ちゃん。一体いつから・・・?」

「ん?『げっマジかよ?』ってお前が叫んでた時くらいからかな。ノックしたんだけど返事が無いから開けたら、お前が叫んでた」

お兄ちゃんはそう答えると特に顔色を変えることも無く僕に一冊の本を差し出した。


「これ、今日本屋に寄ったら新巻出てたから」

表紙を確認すると、それは何故かお兄ちゃんがいつも目を通しているこち亀だった。

僕もこち亀は読んでいるからその好意は嬉しい。
嬉しいけどお兄ちゃん、この流れでそんな平然と涼しい顔をされても僕、どう対応すれば良いのか分からないんですけど――!?


「あ、あのねお兄ちゃん・・・」

「裕樹、お前も高校生だし色々検索したり考えが及ぶのは不思議じゃないけど、舞台裏は詮索しない方がお互いの為だぜ?」


そ、それは男女の事ですか?
それとも同居する家族としての話ですか?

「特に琴子の事はこれ以上想像するな。これは忠告じゃなくて命令」

・・・ひぃぃ!
その絶対零度の声と眼で見られたら石になりそうなんですけど・・・っ!!

血の気が引くのを感じながら、僕はなんとかコクコクと頷いたのだった。




「じゃ、用事はそれだけだから。あ、曲って誰が歌ってるの?」

「ま、まりの(marino)って人」

「ふぅん、邪魔して悪かったな」


お兄ちゃんはそう言うと漸く少し笑って部屋を出て行った。
廊下で「あ、入江くん今日はもう勉強終わったの?」と琴子の声がする。
どうやら風呂から上がってきたばかりの琴子はお兄ちゃんに「湯冷めするからもっとちゃんと髪乾かせよ」と叱られている。

そして僕はというと、慌ててイヤホンを挿し直すとさっきよりボリュームを上げたのだった。
やけに頭に残るこのメロディが今はとても助かる。
そして何となくPCの“戻る”をクリックすると、『ブログを書く』という画面が再び映し出された。


「ったく、血迷ったばっかりに久しぶりにこんな目に合った」

溜息を吐きつつ僕はブラウザを閉じた。
ふと今度はお兄ちゃんと琴子の観察日記だったら幾らでも書ける気がしたけれど、そんな事をしたら僕は幾ら命があっても足りないだろう。
という事で僕はこれからも閲覧専門で行こうと思う。ごめんな、好美。


やがて今夜の勉強を放棄し、音楽を聴きながらお兄ちゃんが持ってきてくれたこち亀を読み始めた僕は、隣室で交わされていた会話を知らない。







「んっ・・・/// 入江くん、今日は話してるだけでいいって・・・」

「お前がくしゃみするからしょうがないだろ」

何度かくしゅんと可愛いくしゃみをした琴子に、お兄ちゃんはそう言いながらすっぽり腕の中に抱きすくめ、そのまま身体を反転させ琴子の纏った薄い布の紐をずらしたのだという。

「秋の夜長、やっぱ存分に堪能しなきゃな」

その夜結局お兄ちゃんが僕との約束を守ってくれたのか、幸せなことに僕はそのまま知らずに済んだのだった―。









裕樹くんの災難はいつまでも続く(笑)
とりあえずイラストに添えて書いた入江くんの科白は撤回という事で(^^)

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::コメントありがとうございました
あけみ様

こんばんは!お馴染み裕樹くんの災難編でした♪
裕樹くんと好美ちゃんの付き合いはごく今どきかつ可愛いものの気がします(^^)
入江くんに比べればずっと好きな子に優しい裕樹くんですが、ブログは閲覧だけっていかにもな感じでしょう?拾って頂けて嬉しかったです♪

そして裕樹くんって賢いわりに抜けている感じが若干(かなり?)します。だからこんな頓馬をして、兄の理不尽な制裁を受ける(笑)まぁこれくらいなら可愛いものですよね(^m^)
秋の夜長、強制的に音楽&読書(漫画だけど)になった裕樹くんですが、イリコトは何したんでしょうね~?(笑)
琴子ちゃんの格好がけしからんので、まぁあれこれと大変だったと思いますよ(爆)久々にお色気混みでお話書きたいですが、いかんせん技術がなし・・・(^^;)精進しますっ!!
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::コメントありがとうございました
水玉様

こんばんは!
いや~もう、水玉さんのおかげですよ!SS書くつもりなんてはじめまるでなかったんですが、水玉さんのお言葉のおかげでスイッチ入りました♪

そして元絵の漫画、やはりお見かけされていたんですね(^^)
エピのあれこれに萌えが詰っていますので、また機会がありましたら読んでみて頂けたら嬉しいな♪
裕樹くんの独り言に答える入江くんは可笑しいですよね!で、絶対眉間にわ寄せてるんですよ。こわ~~っ(≧m≦)
ご愁傷様ですが、この可愛いお嫁さんと別居なんて紀子ママが許すわけ無いし。災難は続くよどこまでも、ですね(笑)
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::コメントありがとうございました
narack様

こんばんは!
まぁまぁ、そうだったんですね!?お忙しい中再度送って下さってありがとうました!
もうもう、えまさんやnarackさんの素敵なイラストに触発されてしまってついつい描いてしまいました。お絵かきなんてほぼ小学生以来なんですが、下手なりに楽しいのを再確認してしまってついつい調子こいちゃってます(^^;)
narackさんのイラストもいつUPされるかなぁ?と楽しみにしていますね♪

そして元絵はその通りです!ふふっ、narackさんも御存知だったんですね~~!
ついエピのあれこれをイリコト変換してしまって大変なんです(笑)また是非読んでみて下さいね♪

そしてSSについて♪(やっと(笑))
そうそう、裕樹くんは特に含みもなく純粋な疑問を口にしてるだけなんですよね~~。なのに何故こんな仕打ちを受けるのでしょうか?
もう宿命ですよね。入江くんの弟として生まれた限り避けようがないんですよ(≧m≦)

こちらこそイラスト・SS共にお付き合い頂きがとうございました♪
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::コメントありがとうございました
まあち様

こんばんは!こちらにも連続でありがとうございました~♪
えへへ、早速撤回ですよ。そりゃそうですよね?だってこんな琴子ちゃんを目の前にして、入江くんが草食くんみたいな事言ってる訳が無いじゃないですかっ(≧m≦)
裕樹くんはこの兄をもったばかりに、誰もが羨む境遇のはずなのに同情され続ける運命・・・(^^;)
ええ、ええ。永遠の壮大なテーマでありますww
だからこそ、好美ちゃんは裕樹くんのオアシスなんですよね♪(って、どんな締めだ・・・?)
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::コメントありがとうございました
紀子ママ様

こんばんは!お付き合い頂きありがとうございます~♪
裕樹くんは本当に一体何度被害に遭うんでしょうね…?
ごめんね、ごめんね、って思いつつ反省の色が無い管理人。そして他のサイトの管理人様達ww
いやもう、紀子ママさんの仰るとおりですよ!何もかもこんな独占欲の強い御方が存在するから仕方ないんですっ!ご愁傷様☆

しかしアラバスター琴子ちゃんとは…!!なんて的確な表現なんでしょう♪さすがですよ紀子ママさん(≧m≦)
そして背後にはメデューサのような貫禄の入江くんがいると。入江家ってすごい!!
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::コメントありがとうございました
藤夏様

こんばんは!こちらにもありがとうございました!
裕樹くんと好美ちゃんは付き合い始めてからはわりと順調に交際しているイメージがあります♪
ここでは兄が反面教師になってるというか、ツンな部分はもちろんあるけど入江くんよりずっと素直に優しそうですよね(^^)
そしてそうなんですよね。音楽を聞いていたりなど、外部の音をシャットアウトしているとついついの独り言にも気付かなかったり、人の気配にも鈍感になるんですよね~~。で、このタイミングに一番それを聞かれたくない人(=入江くん)がやって来ると(笑)ははっ間が悪いですよね~~(^^;)
それでもって、入江くんは心境はさておき冷静に受け答えするんですよね。こわーいっ!

運動…、汗…、琴子ちゃんも大変ですよね(笑)でもそのお陰でアラフォーになろうがスレンダーなわけで。
だって、入江くんはその歳になっても琴子ちゃんをめいっぱい可愛がっているだろうから♪
本当にこのパターンはあらゆるサイト様で拝読していますが飽きることなく好きです(^m^)また藤夏さんのバージョンも読ませて頂きたいなぁ♪
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::コメントありがとうございました
REE様

こんばんは!こちらにもありがとうございました♪
昨夜は秋の夜長のお時間お楽しみになられましたでしょうか?(^m^)

そうですよ~~裕樹くんは普通なんですよ!
いや、むしろかなり純粋。だってこれしきの女子の姿に驚いているんですもの。
本当、女子は表で頑張る為に家では色々えげつなかったりするんですよね。そういや独身実家暮らしの頃、暑くて下パンツにタンクトップでいたら姉の彼氏がやって来てびびってたことが…。(向こうがです。私寝てたので姉がすみやかに部屋閉めたようです)
裕樹くんの独り言にしかめっ面で然し律儀に返事する入江くん…。改めて想像するとおかしいっ(≧m≦)
裕樹くんには悪いけど、こういうやりとり好きだからごめんね、これからも書かせてもらうね!と思ってます♪
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::うわ~♪♪♪
うわ~!!
私のつたないコメントなんてとんでもないです!!
でもすごくうれしい~♪
ありがとうございます!!あの素敵な絵を見ていたら、そんな様子が浮かんできたものですから^^
そして、あの絵はその漫画でしたか!!
道理で見た事があると思った!本は持っていないのですが、ネットで評判を聞いてamazonで調べていたので記憶に残っていたんだなあ(笑)

それにしても、後ろから弟の質問?にご丁寧に答える入江くんに笑えました!
ちゃんと会話が成立しているし~!
でも本当、年頃の男の子がいる家庭に若いお嫁さんが同居って色々困りそうですよね、ぷぷぷ!
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::健全なのにご愁傷様!笑
そりゃ、興味持ちますよね・・・
モンモンモヤモヤ?なぜ?な高校生の入江君より、今の裕樹の方が健全な男子ですもの~、お年頃の。うふふ・・・
でも、ほんとに、男兄弟のみの男子は、どこか現実を知らず成長するんでしょうね・・・女子のあんなことやこんなこと。確かに、結構、えげつないかもしれません笑。琴子からはそんな現実見せつけられる前に、「兄嫁」になって、兄の嫉妬によって、隠されている部分が多いような気が・・・笑。
最初から最後までの裕樹の一人ごとにスパッと答える入江くん、きっと、しかめっ面で聞いてたんでしょうね・・・思わず、脳内再生してしまいました笑。裕樹の災難は、一生続くと思います。お気の毒。笑。
連日更新ありがとうございます。今日は、夫が出張で居ない事を良い事に、私は、二次作品と、ビデオ見て、秋の夜長を楽しみます。てへっ!
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