0512345678910111213141516171819202122232425262728293007

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君に出来る事、君にしか出来ない事 1/2

入江くん、ハッピーバースデー!!

なんとか間に合ったぞ☆
とにかく続きからどうぞです。少し長いので前後編に分けますね。

28
・・・・・・・・・・・・・・・・・





―― 数日前、僕の災難は始まった。


「うわ、焦げ臭!」

朝食の為に入ったダイニングで、もくもくと煙る室内に思わず僕は眉を顰めた。
霞むキッチンにはエプロン姿の琴子が佇んでいる。

「あ、裕樹くんおはよう。爽やかな朝ね」

笑いかける声だけは明るかいが、その姿はぼろっとしていて爽やかさの欠片もない。




「一体何なんだよ、これは」

聞きたくもないが僕は尋ねた。

すると琴子は

「あの、今日はあたしが朝食担当なの」と的を射ない返事をする。

「ふぅん、で?」

「うん。だから、色々作とうと思ったんだけど」

「けど・・・?」

「あれをやればこれが出来ない、みたいな感じになって、気がつけばこんな感じに・・・」

そう言うとエヘへと頭を掻く。


「ったく、どうしたらここまで出来るかな」

僕は大きく嘆息した。
普段主にママが使用する機能的なキッチンは今や見る形も無い惨状。

「大体、自分の力量も考えず色んなものを作ろうとするから」

テーブルには酷い出来だが色んな料理が出来上がっていた。
それらは良く言えば和洋折衷、然し現実は無残に焦げた焼き魚や、いかにも味付けの濃そうな煮物があると思えば、オムレツ(と思しき物体)があったりする混沌とした内容。

「うん、そうなの」

琴子はしょんぼりと項垂れた。


「とりあえず先片付けるか」

不器用なくせに、一体何時からキッチンに立っていたのだろう。
朝だけに時間は少なかったが、僕はシャツの袖を捲くった。
琴子に任せたら片付けも更に時間がかかりそうだったし、なんだか放って置けなかった。

「ううん、大丈夫。今日は大学午前中休講だから後でやるよ」

が、琴子は手を振ってそれを辞退する。

「いいの?」

「うん。でもありがとね、裕樹くん」

「・・・別に」

恥ずかしそうに首を竦める姿に顔が赤くなるのを感じ、咄嗟に背を向ける。

「琴子も一旦こっちきて食べれば」

照れ隠しにそう促すと、テーブルについた。



「はい、コーヒー」

差し出されたコーヒーはいつも通り良い香りがした。

「ありがと」

受け取り口に含むと漸く一日が始まった気がする。

中学に入ってから、朝食時に飲んでいた牛乳をコーヒーに変えた。
但しまだブラックではなく、スチームミルクを加えたカフェラテ。
琴子の淹れるコーヒーはなぜか始めから口に合った。その時、僕はお兄ちゃんが琴子にばかり頼むようになった理由がよく分かった気がしたものだ。
誰にも言わないけど、こういう所が僕たちが兄弟なんだなって密かに感じる所だったりする―。

二人きりの所為だろうか、色々考えすぎたような気がした僕はコホンと一つ咳払いをした。

「ところでさ、なんで急に一人で朝ご飯なんか作ろうと思ったの?」

まっとうな質問をして箸を手に取る。
大抵朝は寝坊して降りてくる琴子が、一人で朝食を作るなんて青天の霹靂と言っても過言ではない。

「実はね、入江くんの誕生日の朝に上手に作れるよう練習したいと思って」

でもそう簡単にはいかないと溜息をつく。

「そういやママは?」

「このまえテレビでホテルの美味しいモーニング特集ってのがあったから、それに行ってくるって」

家に居るとつい手を貸してしまいたくなるかららしい。
とにかく僕は漸くいろんな事に合点がいったのだった。


「成程ね。そういやお兄ちゃん、誕生日は学会で泊まりだって言ってたな」

再びカフェオレを口に含みコンとテーブルに置く。
琴子のことだ、結婚後はじめてのお兄ちゃんの誕生日はとても楽しみにしていたのは容易に想像できた。

プレゼントを買ってケーキを手作りし、ハッピーバースデーを歌おうとしていたのかもしれない。
でもそれは叶わないから、せめて自分が作った朝食でお兄ちゃんを見送りたいと思ったんだろう。
出来もしないのに、お兄ちゃんだって多分そんなの期待していないのに、こういう時は異常に根性を出して頑張るのが琴子って奴で。
するとお兄ちゃんも含めた周囲は、付き合ってやるか、と何故かいつもそう思ってしまうんだ。


「ったく、いい迷惑だよな」

僕はわざと迷惑そうに大袈裟に溜息をついた。

「つまりこれから数日はこの不味い料理に付き合わせられなきゃいけないんだ」

実際、調味はともかく出された食事を全て食べていたら、食べ過ぎで授業中何度もトイレに駆け込む事になるだろう。

「ごめんね?つき合わせて」

「いいよ、別に。けど、せめて和食か洋食かどっちかにしろよ。家はホテルでもレストランじゃないんだからな」

「ふふ、そうだね」

偉そうな僕なのに琴子はそう言ってふわりと笑う。


「あ、そういえばオムレツにまだケチャップつけてなかった」

「もしかしてこの得体の知れない黄色い物体のこと?」

「もう、これだけは意外と味はいいのよ」

頬を膨らませつつ、琴子はケチャップを持ってきた。

「可愛いハート描いてあげるね」

「やめろよ。余計な真似すんな」

「まぁまぁ、遠慮せず」

僕たちががやがや言い合っているとがちゃりと扉が開いた。



「あっ、入江くんおはよう!」

途端に琴子の顔がぱぁっと輝く。部屋に入ってきたのはお兄ちゃんだった。
毎日顔を突き合わしているのに、琴子はお兄ちゃんを見つけた瞬間はいつもこんな顔を見せるんだ。

「おはよう、お兄ちゃん」

一方僕ときたら、つい罰が悪い気分になる。

「ったく、嫌になるよ。琴子の奴、止めろっていったのに」

肩を竦め、何故かハートが描かれたオムレツの言い訳をしてしまう。

「もう、いいじゃない照れなくて。あ、今入江くんの分も今用意するね」

「それはいいからコーヒー淹れて」

「そう?分かった」

オムレツを拒否されたと思った琴子は、がっかりした顔を少し覗かせた。
が、直ぐ気を取り直すと従順な犬のように頷きぱたぱたとキッチンに入っていく。
お兄ちゃんは徐に僕の向かいに座った。


「すげー食事」

テーブルを一瞥すると嘆息交じりに言う。

「でしょ。これから暫く琴子が朝食用意するって」

「それは災難だな」

相変わらずきつい事を言うお兄ちゃんは、その後朝刊を開いて読み始めた。
一向に食事に手をつける気配を感じられない。

「食べないの?お兄ちゃん」

「朝っぱらからこんな味の濃そうなものいらない」

・・・まぁ、それは確かに。

でも、どれもお兄ちゃんの為に用意した琴子の事を思うとやはりちょっと冷たいなと思った。
けれどそれを口に出来ない僕はスプーンを手にとる。
琴子が自信作だと言ったオムレツを食べてみようとした時だった。


カサッ

新聞紙が閉じられる音が響いた。

「そういやそれ、えらく可愛い絵だな?」

「・・・っ!」

冷たい声音に僕は思わずスプーンを落としそうになる。
恐る恐る前方を確認すると、そこには冷笑を湛えたお兄ちゃんの顔。

「や、やっぱりこっちにしようかな」

僕はスプーンを箸に持ち直すと、色だけがやたら醤油の色をした煮物を口の中に放り込んだ。噛むとゴリゴリとありえない音がする。
だからオムレツを断ったんだと僕は漸く悟った。
けど、ただハートが描かれているだけでそんな威嚇してくるなんてどうかしてるよ、お兄ちゃん!!


「入江くん、お待たせー」

タイミング良く(?)琴子がコーヒーを運んできた。

「サンキュ」

受け取るとお兄ちゃんはとても綺麗な所作でそれを口元に運ぶ。

「さ、あたしも食べよっと」

それを見届けた琴子は嬉しそうな笑みを浮かべ、お兄ちゃんの隣に座った。


「あれ、裕樹くんオムレツ食べないの?」

「ふん、そんな不気味な物体食べられるか」

「もう、失礼ね。さっきも言ったけど、形はちょっと悪いけど意外といけるのよ」

嫌味を言う僕に不貞腐れながら、琴子はそれを口にする。

「ほら、やっぱりけっこういけてる」

咀嚼するとうんうんと頷いてみせた。

「ね、入江くんも食べてみて?」

「いらない」

「そんな事言わないで。はい、あーん」

琴子が無理矢理口元に運ぶのでお兄ちゃんは鬱陶しそうにしつつ口を開けた。

「ね?結構美味しいでしょ」

「普通」

「もうっ」

繰り広げられる光景に僕は遅まきながら後悔した。
僕も早々に家を出るべきだったんだ。

その朝以降、お兄ちゃんの誕生日まで僕はママたち同様朝食は外で済ます事となった。
琴子は鈍感だからその気遣いに気がついていなかったけど、結果的にお兄ちゃんとの楽しい時間を過ごせていたらしい。

とはいえ僕の災難はこれだけではなかった。
が、それを話すには先ずこの日の午後の話を先にしなければならない。







後編に続く。

28

テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

コメントの投稿

secret

top↑

comment

拍手 コメントありがとうございました

お返事が遅くなり申し訳ありませんでした!



まあち様

前後編ご丁寧に、しかもUPご早々にコメント頂けてとても嬉しかったです♪

もう、まあちさんのへのプレゼントでいいです!
なんでしたらリアルお誕生日を知らせて下さったらお祝いに一話プレゼントしたい位ですよ~~。
少し前に50万のカウンターの時にキリバンを設定・・・などと言っていたのにうっかりしていましたしね(>_<)
狙って下さると仰っていたのに、ああ勿体無い事をした!

裕樹君、キッチンでの会話を聞かれなかったのは確かに不幸中の幸いですよね。
聞かれていたらこの兄、一体どんな態度に出ていたことか・・・ププッ困った人です。



紀子ママ様

紀子ママ様も前後編共にコメント下さりありがとうございました!!
ええ、ええ、ケチャップのハートすら琴子ちゃんの愛は独り占めしたいんですよ。この心の狭いお兄さんは(笑)
あ~んも完全に嫌がらせですよね。それでもこの兄夫婦が好きで退治に思う裕樹君は本当に出来た弟です!

勿論紀子ママさんもネクタイ同好会に是非ご入会を!!随時募集中ですので☆
トレンチコートもいいですよね♪
因みに私、紺のトレンチを着用していて『メーテル』の異名を与えられたことがありますばが何か?(笑)
いやいや、しょうもないカミングアウトは抜きにして、いつかがっつりスーツ&トレンチの入江くんを描いてみたいものです(^m^)

プロフィール

ぴくもん

Author:ぴくもん
ご訪問頂きありがとうございます。
こちらは漫画好きの管理人・ぴくもんの創作ブログです。
各ジャンルの原作者様、著作権者様・出版その他関係者様等とは一切関係ございません。
原作のイメージを大切にされる方や二次創作を理解されない方、不快に思われる方は、此処でお引き返し下さい。
拙い作品ばかりですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


詳しくはこちらをご参照下さい。

カテゴリ

最新記事

online

現在の閲覧者数:

LINK

◆日々草子 (水玉様)

◆kiss shower (幻想夢 影菜様)

◆ 玉響のキセキ (ほろほろ様)

◆イタズラ★Days (ha様)

◆こんぺい糖と医学書 (千夜夢様)

◆Embrasse-moi (えま様)

◆ぼんやり日記 (よもぎ様)

◆雪月野原~snowmoon~ (ソウ様)

◆HAPPY☆SMILE(narack様)

◆*初恋*(miyaco様)

◆みぎての法則(嘉村のと様)

◆φ~ぴろりおのブログ~(ぴろりお様)

◆真の欲深は世界を救う(美和様)

◆むじかくのブログ(むじかく様)

◆つれづれ日和(あおい様)

◆イタKiss~The resident in another world ~(九戸ヒカル様)

◆Snow Blossom(ののの様)

素材拝借サイト様

Dolce様

空に咲く花様
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。