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::約束 ①
配付元…kara no kiss様
50音・26文字お題よりお借りしています。

昨晩は愚痴ってすみませんでした!
とにかく出来る所までやってみます。
約束、三部構成の予定です。結婚式前日までに出来るといいな。

30
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





~ その一、友との約束 ~




11月20日、土曜日――。

銀座のとあるティールームは、昼過ぎという時刻も手伝って席は満席になっていた。
然し近過ぎず配されたテーブルと絶妙のボリュームで流れるクラシックは耳に心地よく、混雑した雰囲気をまるで感じさせない。
一人で休憩している年配の婦人も、買い物の休憩に入っているらしいOL風の若い女性達もそれぞれに心地よい時間を過ごしているのがその表情から窺える。

そんな中、琴子もまた同じくひと時の休息を友人達と得ていた。
古今東西、花嫁になる娘というのは、式までの日々を忙しく駆け回るものであるが、こと琴子においてもそれは例外ではなく、連日休む間もなく用事に追われていた。
大学にも通えていなかったので、こうして友人と顔を合わせるのでさえ実に10日振り以上だった。

もっとも、他の花嫁と琴子には言わずもがなあらゆる相違点がある。
交際期間がないまま半強制的決まった結婚式は準備期間が圧倒的に少なく、琴子には少女の頃どんな花嫁になりたかったのかをゆっくり振り返る時間はなかった。
いや、更に言えば結婚するという事実だけでもう胸が一杯だった。

キャパシティオーバーを見て取った周りの気遣いで、琴子は提案されたドレスや食事の中から希望を伝え、招待客のテーブルの配置に少し口を挟んだものの、あとの事は義母となる紀子に任せきりとなった。
当日の進行も殆ど覚えられていないのだが、それはスタッフがフォローするから心配する事はないと言われている。

とにかく出来る限り最高のコンディションで明日を迎えられるよう、琴子は今日も最後のブライダルエステを受けた。
その終了した足で九代のいる宝飾店(※交差点 参照)に出向き、刻印の入った結婚指輪を受け取りに行ってきたのだからその忙しさといったらない。
そして今、この友人と過ごすひと時間でさえ実はただの休息ではなく、あるきちんとした目的があって設けた時間であった。

気の置けない友人3人が会したのは、かつて交わしたある約束を果たす為だった。







「はい、琴子。これ、あたし達からの結婚のお祝い」

そう言って理美とじんこが差し出したのは、三つの包みだった。

「本当に、準備にたった2週間しかなかったから慌てちゃったわよ」

「二人で手分けして何とか間に合ったわ」

口々に苦労を語る二人だが、その表情は任務をやり遂げた達成感がありありと窺える。

「とにかくこっちの二つから開けてみて」

「うん、分かった」

二人に促され、琴子は頷くと、其々の包装を解きゆっくりと開けた。



「わぁ・・・、可愛い!」

中身を見た琴子は目を輝かせ感嘆した。

「ねぇ、これ大変だったよね?」

続けてそれを手に取ると、二人の親友を交互に見比べる。

「ま、これくらいあたし達が本気を出せばちょろいものよ」

「どう琴子、気に入ってくれた?」

返事は聞くまでも無いのだが、つい二人は胸を張って訊ねてしまう。
琴子の手にしているのは理美とじんこがこの2週間で仕上げたウェルカムベアとリングピロー。
3人のうち誰かが結婚する時には、これらを手作りしてプレゼントしようと約束したのは、まだ彼女達が高校生の頃だった。当時回し読みしていた漫画に同様のエピソードがあったのだ。
あれから数年、とうとうその一回目の約束が果たされたのである。



「琴子が言ってたようなクマが意外となかなか見つからなくてさ」

「ありがとう。あたしが絶対純白のウェルカムベアがいいって言ってたの、覚えてくれてたんだね」

「本当はリングピローもクラウン型とかにしたかったんだけど、ちょっと其処まで手が回らなくて。シンプルなスクエアになっちゃったんだよね」

「そんなの全然構わない。ううん、本当にありがとう。あたし、理美とじんこが親友で本当に良かった・・・」

話しながらぐしっと鼻をすする琴子に、理美とじんこは素早くハンカチを差し出した。

「駄目よ、琴子。明日目が腫れたら、折角エステに通ったのが台無しになっちゃうじゃない」

「そうよ。入江くんに最高の花嫁姿見せなきゃいけないんだから、今日はもう一滴の涙も流させないからね」

そう諭しながら、己の目の淵も熱くなることを二人は懸命に耐える。

「でもまさか、琴子が一番のりになるとはね」

理美とじんこの口調にはしみじみしたものが込められていた。



今までずっと琴子の奮闘を見守ってきた二人には時々の琴子の様子が思い出され、それからは暫くあれこれと思い出話に花が咲いた。

「本当に良くやったわよね。あの入江くんの氷をとうとう溶かすなんて」

「あたしならとっくに次行ってただろうな」

直樹の冷たい姿しか記憶にない二人は、琴子のその不屈の精神にだけはただただ感服してしまう。

「然し入江くんって、いつから琴子を好きだったのかな?」

「分かる、その疑問! ねぇ、あたし達ってもしかして凄く鈍感なのかしら?だってあの時もあたし達、入江くんと話したのにちっとも気付かなかったのよね」

ミルクティーを口に運びながら、理美が首を傾げるのは勿論今から2週間前の出来事の話。
大学で、置きっぱなしの私物の片付けにやって来た直樹と彼女達が顔を合わせたのは、テニス部の練習コートがある付近だった。

「あの時はいつの間にか入江くん、居なくなっちゃってて」

「力説してただけにちょっとムカついたわよね」

腕を組みやや憮然とした表情を浮かべる彼女達は、自分達の他意の無い科白が直樹を劇的な衝動に駆らせた事にやはり気付いていない。
もしあの時、琴子が金之助にプロポーズをされ返事をしに行った事を直樹の耳に入れなければ今の状況は成立しなかったかもしれなかったのに、その事を知っているのはただ一人、当事者である直樹だけなのである。

「ま、結果オーライだよね」

「とにかくおめでとう。琴子」

然し揃って単純思考の彼女達は、顔を見合わせクスリと笑むと後はそれ以上疑問を追及したりしない。



「それはそうと、ねぇ琴子」

と、思い出したように理美がポンと手を打った。

「明日の誓いのキスは絶対写真撮りたいから、入江くんに長~~くしてくれるようにお願いしておいてね」

「あ、それあたしからもお願いするわ。なんだか入江くんが目を閉じてそういう事する姿って、想像しただけでテンション上がるわ~~」

じんこが目を閉じてうっとりとした顔をする。

あまりに直樹の酷い意地悪振りを目撃してきただけに、『どうしてこんな男がいいの?』と言いがちだった二人ではあるが、やはり直樹が容姿端麗であることは認めている。
その直樹が目を閉じてキスする姿はまるでドラマのワンシーンをライブで見るようではないかと二人はついミーハーな気分になる。

「む、無理だよぉ」

一方けしかけられた琴子は、途端に顔を紅潮させブンブンと首を振った。

「大体入江くんが、結婚式にちゃんと出てくれるかさえまだ不安なのに」自身なさげにぽつりと付け足す。

確かに結婚を口にしたのは他でもない直樹だったが、当然今すぐにと考えていた訳ではなかった。
紀子が強引に式の日取りを整えた事を知った時、激昂したのは言うまでもない。
この頃はもう観念したように見えたが、土壇場でやはり無理と言われるのではないかと琴子はあらぬ想像をしてしまう時が未だあった。

― でも・・・。

と、ここで琴子は無意識に指を唇にあてる。
実はこの2週間で、琴子は直樹の形の良い少し薄い唇が想像以上に柔らかいことを知るようになっていた。

お互い忙しい時間を縫って、二人は短い時間だが会話をしていた。
そしてあの雨の夜、もう数を数えなくていいと言った通り、直樹は琴子に数え切れないキスをする。
時に、そっと触れるかのように。
時に、息もつかせぬ激しさで。

そして明日の夜――、もっと深く直樹の事を知るようになるのかと思うと、琴子はまた心拍数が上がっていくのを感じずにはいられない。
するとまるで琴子の心中を見透かしたように、

「でもさ、明日にはきっと入江くんとそういう事になるんだよ?」

と理美が言った。

「なんだか想像つかないけど、入江くんって天才だから上手そうよね」

「琴子も今まで取っておいた価値があるってものよ」

下世話な話題に無邪気とも無神経とも言える様子で盛り上がる二人は、かつて自分たちも頂いた筈のその時の不安や緊張をつい忘れがちだったりする。



「そうだ、琴子。そっちの箱も開けて見てみてよ」

そう言うとじんこは、先程渡した箱を取り上げ再度琴子に手渡した。

「でもこっそりと見てね」と念を押すのを忘れない。


「な・・・・っ!」

言われるがままに控えめに中身を確認した琴子は目を見開き口をパクパクさせた。

「もう一つのあたし達からのプレゼントよ。初夜の必需品」

「サムシングブルーってことで、白基調だけどリボンとレースにブルーってとこがポイント」

「やだもう、二人とも~~///」

琴子は恥ずかしさのあまり、茹蛸のように顔を真赤にさせると箱を抱え込んだまま俯いてしまった。
実は似たような物を密かに準備していたので、やはり結婚式の夜に想像する事は皆同じなのだと思わずにいられない。

そんな琴子の心中を知ってか知らずか、理美とじんこはにんまりと似たような表情を琴子に向けて浮かべた。

「これ着た琴子を見た入江くんの反応、新婚旅行の後でいいから聞かせてね」

「む、無理!」

「あら、ケチね~。それじゃとにかくこれであのポーカーフェイスを完全にノックアウトさせちゃいなさいよ」

「も、もっと無理っ!」琴子はこれ以上ない程に顔を赤くして必死に否定する。


すると理美が「そんな事ないよ」ときっぱり言った。

「そうだよ。この数日で確実に綺麗になってるよ、琴子」じんこも大きく頷いて続く。

「そ、そんなこと・・・。 でも、ありがとう」

今度は心からそう思っていると分かる優しい顔をする二人に、琴子は漸く素直な言葉を口にした。

「うん。だから絶対幸せになるのよ」

「それが私達からのただ一つお願いしたい約束」

そっと視線を上げた初々しい明日の花嫁に、二人は微笑む小指を立てて首を傾げて見せたのだった。



やがて店を出た三人は、空に立ち込める灰色の雲に気付き歩く速度を早くした。

「これから一雨ありそうね。傘持ってきてないし急ごう」

「11月ってこんな夕立めいた天気が多かったかしら?」

愚痴めいた科白を口にしつつ、その空が2週間前と何となく似ていると感じた彼女達は、数時間後顔を見せるであろう星空を疑わない。

「でも、明日はきっと晴れね」

コートを翻し踏みしめる地面には、紅葉した葉がカサカサとメロディを奏でていた。





さらっとさらっと友達との小さな、然し温かい約束でした。
次回はお父さんとの約束です(^^)


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10巻スキマ  コメント(4)  △ page top


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::コメントありがとうございました

藤夏様

こんにちは~。お忙しい中駆けつけて下さりありがとうございます(^^)
ミラクルアシスト!まさにそうですよね♪
でも当人達はそんな気全くなしのうえ気付いていないのがいいんですよね~。
(入江くんさえ自分がこんなにショックを受けると思っていなかったという部分は大いに頷いてしまいました^^)

とかく学生時代からの友人は、その後の環境の変化でいつまでも同じとはいきにくいものですが、この三人はずっと良い友人関係を続けていきそうですよね。ある程度言いたい事を口にしつつ、ちゃんと遠慮する部分も持っているところがいいのかもしれません。
「入江くんは天才だから~」は実は既に二人が琴子に言った事を書いているんですよ(笑)【はじまり】でです♪なのでここで入れなきゃイカンだろうと個人的にはワクワクしながら書いておりました~~(^m^)
約束もまた頑張りますね!いつもありがとうございます♪
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::拍手 コメントありがとうございました
ひろりん様

いつもの事ですが、お返事が遅くなってしまい本当に申し訳ありません。でもいつも有難く何度も拝読させて頂いております。ありがとうございます(*^_^*)
そうですよね。人間関係の築き方は入江くんより琴子ちゃんの方がずっと上手ですよね。そういう自分にないものを持っているという部分でも入江くんは琴子ちゃんに惹かれたのかもしれないですよね。
次はパパの話・・・って、いきなり横道にしれてしまいました(>_<)自分なりに頑張りましたが、ひろりんさんのお眼鏡にかなうようなお話にはとても・・・とほほ。
とはいえ次回琴子ちゃんとのやり取りを書いていきたいと思います。宜しければお付き合いくださいませ(^^)
そして22日からのお知らせありがとうございます!また読みに行かせて頂きますね♪
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::コメントありがとうございました!
まあち様

そうなんですよね。もちろんいつか入江くんはどこかの段階で政略結婚を破棄し、琴子を選んでいたとは思うんです。
でもあのタイミングで行動出来たのは、理美とじんこが金ちゃんからのプロポーズの事を他意無く話したからこそかなぁ、と。もしも例えば武人君の時のように、「琴子が他の男に言い寄られているけどいいの?」的に話していたら、入江くんは事の重大さにきちんと気がついていなかったかもしれない。(その辺り、韓国版の二人は私の見解と離れてしまうんですが^^; ――って、話が飛躍しすぎてすみません!まあちさん、韓版もご覧になっていたはずと思って思わず熱弁しちゃいました~~(>_<)

はい、次はお父さん入りますよ!多分冒頭は私の完全な捏造話になっちゃいますが、また読んで頂けると嬉しいです♪
乙女なまあちさん、大好き(≧m≦)




水玉様

あはっ!あれは持ち歩きOKですかww(≧m≦)
でもね、ワンポイントの可愛いのじゃなくて全体的にグレーでぬぼーっとしたデザインなんですよ(笑)たしかウチの母親が娘にと持って来たのですが、当時幼児だった娘にあれは渋すぎるやろ!と思いましたね(^^;)

と、話を戻して(笑)
ああ、その描写にきちんと反応してくださる所が嬉しい!!
短い婚約期間でしたが、この時期って本当に二次創作が多いんですよね。なので入江くんと琴子ちゃんのドキドキのキスが私の頭の中にはてんこ盛りでインプットされていて・・・。
そのいろんなシチュを思い出している琴子ちゃん・・・というようなイメージで書いていました。そりゃ思わず唇に指を当ててしまうだろうと(^m^)もう水玉さんをはじめ素敵な作家の皆様のお陰です!ありがとうございます!

結婚式、やはり親友同士にこういうやり取りはつきものですよね♪
理美とじんこ、普段は好き勝手言いあい、厳しい意見を言ったりもするけど、いざという時には琴子の為に入江くんに食ってかかりに行ったりもしていましたよね。高校生の頃にした約束もきちんと覚えていてくれたりするんじゃないかなぁと思ったんです(^^)
キスは・・・ねぇ?あんな事になってしまってww 確か「さすが琴子大胆な花嫁」とか言ってましたよね(笑)

はい、次は相原パパです!本当ですか号泣って!?
が、頑張りますよ・・・!って、狙うと外すんだよな私(^^;)自然体で行きまっす!
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