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電信柱さん 1

拍手御礼画面に載せていた話の再掲です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




わたくしの前を2人の女子中学生が通り過ぎて行きます。


「中学に入って何が嬉しいって、集団登校じゃなくなった事だよね」
「うん。周りを気にせずこうして雑誌も読めちゃうし」


こらこら、いけません。学校に不必要な私物は持ち込んではいけない筈です。
せめて校門の20メートル前まで来たら鞄に仕舞うのですよ。


しかしそれにしても、女性というものは短期間でどうしてこうも変化を遂げるのでしょうか。
彼女達もほんの数ヶ月前はランドセルを背負っていたというのに、制服と鞄が変わっただけで随分と大人びたような気がします。


「ねぇ見て、今日の天秤座占い1位だよっ!『意中のあの人と接近のチャンス』だって」
「うそ~~。じゃあもしかして今日は会えちゃったりするのかなぁ?」


話す会話も少々色気付いてきたようです。


「でもさ、本当に一目ぼれってあるんだね」
「うん。あたしも正直信じてなかったんだけど、今はあるって思えるよ。本当に見つけた瞬間ビビッてきたの。なんていうかな、電流が流れた感じ?」


ほうほう。という事は人間も自家発電が出来るという事なのでしょうか?
それは疑い深いところですが、然し一目ぼれというのが存在する事は私も大いに賛成しましょう。


「あっ うそ、本当に占いあたった・・・!」
「わぁ、やったじゃん!今日はラッキーデーだね~~」


遠くに目をやりながらキャッキャッとはしゃぐ彼女達の視線を追うと、そこにはわたくしの憎きライバルがいました。
彼はわたくしの事を知らないでしょう。でもわたくしは知っています。
それはもう随分と昔、彼がこの世に生を受けた時からわたくしは彼を見てきているのです。


彼の名は、入江直樹といいます。



彼の姿を見つけてからというもの、彼女達は突如大人しくなりました。
好意をよせる異性の前に立つと、人間という生き物は消極的になる場合があるようです。
彼とすれ違った時、俯きがちになった彼女たちの背中は遠めに見ても緊張が窺えました。
彼は全く彼女達を意識していないというのに。
さて、あの星占いは果たして当たっていたのでしょうか―?




「入江く~~ん、待って~~~」


彼女達の後姿が遠くなった頃、ちょうどわたくしの前にさしかかった彼を呼ぶ声が聞こえてきました。
ああ、この声を耳にするとわたくしの鼓動はドクドクと早くなっていく。何故ならわたくしはこの声の主である女性に恋をしているから。
ええ、まぁそうです。残念ながらこれはわたくしの完全な片思い。
はじまりは所謂一目ぼれってやつでした。


と、話が逸れましたがわたくしは心臓を速くさせている場合ではありません。
というのも、わたくしには重大な任務があります。
大袈裟でなく、わたくしの仕事ぶりひとつでここ周辺の日常は簡単に良くも悪くもなるのです。
それなのにちっとも評価されないのどころか、半ば邪魔者扱いされる時もあるというのですから人生とはなんと世知辛いのでしょう。


え?一体何の任務だと?
というよりも、わたくしは一体何者だと?


申し遅れました。足許を見られてばかりの不甲斐ないわたくし、名を電信柱と申します。






「はぁ、はぁ、やっと追いついた」


彼に追いついた彼女は少し苦しそうに呼吸を整えています。その表情ですら可愛らしく、わたくしはついうっとりと眺めてしまいます。
出来ることならその背中をさすってさしあげたい。けれど地面にしっかりと固定されているわたくしは彼女に触れることが出来ません。


「なんだよ。家の外で無闇に話しかけるなって言ってるだろ?」


一方小憎たらしいこの男は迷惑感を露にして彼女を睨みつけます。きーーーっ!なんと腹が立つ!
しかし彼女は彼のそんな仕打ちにめげたりなどしません。


「いいじゃない。同居はもうばれちゃったんだし、駅まで一緒に歩いているところなんて誰も見てないよ」
「おれは静かに歩きたいんだ」
「なによ。あたしが居ると煩いっていうの?」
「それ以外にどう解釈出来る?」


彼の意地悪な笑みに彼女はムッとした様子を見せました。しかし彼は少し立ち止まった彼女を振り返る事無く、そのままの歩調で前へ進んでいきます。


「・・・もう、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」


呟く彼女の姿がいたわしい。そう、彼女はほぼ毎日のように彼からこのような冷たい仕打ちを受けているのです。
今まで黙って見てきましたが、彼女のこんな顔を見てしまってはわたくしもそろそろ黙ってはいられません。今日こそは彼を少しぎゃふんと言わせてやりたいと思いました。


あ、そこの貴女、今ただの電信柱になにが出来る?とお思いになったでしょう?
ふっふっふ、嘗めてもらっては困ります。なにせわたくしには高圧の電流が流れているのですから、ちょっと奮起すれば彼に電流のひとつやふたつお見舞いしてやれます。
え?それでは彼の命が危ない?ああ、言われてみればその通りですね。
命まで奪うのはわたくしも望んでいませんので、この案は見送らせていただきましょう。


・・・と、そんな事を考えていると彼女が歩を一歩進めました。


「でも、こんなことくらいでへこたれたりしないんだからっ!」


彼女はそう言うとまたパタパタと走って彼の元に追いついて行きました。そしてなんと、二人はそのまま並んでわたくしのまえから姿を消して行くではありませんか。


ああ琴子さん、良かったですね。今朝ははじめて彼と一緒に登校出来た記念日ですね。
そういえば今日の占い、てんびん座は『意中のあの人と接近のチャンス』でしたっけ――。



以降、わたくしは彼らの恋模様をつぶさに見守ることになるのです。
しかしそれはまた別の機会においおい話していこうと思います―。


テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

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