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::Présent de la surprise 2
そう、これは入江君を好きになってから5回目の誕生日、私の二十歳の誕生日の時の話。

私の二十歳の誕生日を初めて「おめでとう」と祝ってくれた入江君。

それだけで胸が一杯で泣き出しそうな私に入江君はプレゼントをくれたの。
『形あるものばかりがプレゼントじゃないだろ』なんて、私や皆をドギマギさせてくれちゃって・・・蓋を開ければ試験勉強の家庭教師をしてくれるなんて、色気も何もない内容で。

でもね、私にはやっぱり素敵なプレゼントだったの。だって、例え嫌いな勉強でも、大好きな入江君が私のためにずっと一緒に居てくれたんだもん。すごく嬉しかった。

この指輪に記されたメッセージ。広げられたノートに、これと同じ言葉を入江君の骨ばった大きな手がサラサラと書いた時、私にはそれが何か魔法のように見えたの覚えている。





「はぁ、やっと明日で試験が終わるよ!入江君、本当にありがとね。お陰で今回の試験は、大学入学以来初めて感じる手応えがあるわ!」

「それは結果が出てから判断させてもらうよ。で、明日の試験は何」

「明日はフランス語だけなんだ」

「フランス語・・・なんで英語もからっきしなお前がフランス語なんて履修してるんだ!!」

「え、えっとそれは・・・『第二外国語でフランス語とってるんです~』なんて言ったらちょっと頭良さそうかな、なんて。へへへ」

「そんな虚勢を張らなくてもお前が馬鹿なのは周知の事実だ」

「むっ、でもまぁそうだよね。で、今すごく後悔してるし。本当に何にも分かんないんだもん」

「もっと早く気付けよ」

「ところで入江君、入江君はフランス語わかるの?」

「日常で困らない程度はね。で、範囲は?」

「さ、さすが天才・・・!えっと。範囲は戯曲の【シラノ・ド・ベルジュラック】と小説からサガンの【悲しみよこんにちは】で、大体半分ずつ出るみたい」

「お前が一晩で両方詰め込むのは無理な相談だな。どっちの方が興味ある?」

「うーん、サガンかなぁ」

「ま、予想通りだな。じゃあ始めるぞ」

こうして入江君のいつもながら的確にポイントを押さえた解説が始まった。あんなに耳にするのも嫌になっていたフランス語がスッと入っていく。入江君って教えるの本当に上手だなぁ。

数時間後。

「ま、こんなもんだな。サガンが半分出るんなら、50点は取れるだろ」

「はぁ~~~。終わった・・・これでなんとかなりそう。ありがとう、入江君!」

「どういたしまして。じゃ、俺帰るから」

「ま、待って!今日で最後でしょ。お礼にならないかもしれないけど、コーヒー淹れるから飲んで帰って!!」

「・・・わかったよ」

「良かった!じゃあすぐに淹れるから待っててね!」

もう少し一緒に居たくて思わず出た私の科白に、意外にも入江君は応じてくれた。
嬉しくて私は急いで階下へ降りてコーヒーの準備をした。


「おまちどうさま」

「どうも」
私からコーヒーカップを受けとって、それを口元に運び、
ふぅ・と一息ついた入江君に私は話しかける。

「入江君、日常会話程度って言ってたけど、スラスラ教えてくれたよね。この話、読んだことあるの?」

「あまりにも有名だからな」

「そ、そうだよね。私もタイトルくらいは聞いたことあったんだけど、教材で出てくるまで読んだ事なくて。翻訳本を読めば少しは理解できるかも、って最近読んだの。なんだか意外だな。入江君がこんな本読んだことあるって」

「原文の本が書斎にあったんだよ。で、暇つぶしに読んだ」

「げ、原文で・・・。どうりで的確に教えてくれたわけだ」

分かってるつもりだったけど、入江君の頭の出来は私の想像を絶する。

「で?お前はこれ読んでどんな感想もったの?」

「うっ、感想文とかすごく苦手なんだけど。ただ・・・やりきれなかっただろうなって。だって、セシルはアンヌが大好きだったんだろうから」

「好き?どちらかと言えば苦手だったんじゃないのか?全く違う性質で、相手のペースに巻き込まれるに抵抗して、策略巡らせて。結果それが悲しさや後悔を招いたんだろうけど、それは好きとかじゃ無く一種の感傷に過ぎない気がしたけど」

「確かにそうなんだけど。なんてゆうかな・・・きっとセシルはアンヌが眩しかったのよ。自尊心が強くて素直に認められないけれど、アンヌの正しさみたいなものに強烈な憧れをもっていて。認められないけど、実は大好きだったんだと思ったんだけどな」

「・・・ふーん。お前がそう感じたんなら、そうなのかもな」入江君はそう言いながら、開いたままのノートにサラサラと何か書き込んだ。

「なんて書いてるの?」

「L'amour que j'ai caché  隠し持った愛って意味」

「へぇ・・・・でも、私には良く分かんない気持ちだな。だって、好きだったら伝えたいじゃない?私にとって大好きって気持ちは、馬鹿みたいに単純だから。だから、その・・・私が入江君を好きな気持ちは今も昔も変わらなくって、揺るぎないものなの・・・」

わぁ、私・何喋ってるんだろう//// 訳わかんないよね?恥ずかしい!
話しているうちに何故か告白状態になっている私。
すっかり赤面してしまった顔をわずかに上げ、入江君の様子を伺う。

「・・・知ってるよ。充分ね」

入江君は目をノートに向けたままそう言って、またサラサラとなにか書き込む。

「今度はなんて意味なの?」

「自分で調べろ。辞書もあるだろ?じゃ、俺帰るから。コーヒーご馳走様」

「う、うん。ありがとう。試験の結果、報告するから楽しみにしててね」

「期待しないで待ってるよ」

「ま、待って。玄関まで送る!」

「いいよ、ここで。おやすみ」

さっさと身支度を整えて入江君は扉を後ろ手に閉めて帰って行ってしまった。

「おやすみ・・・」閉まってしまった扉に向かってそう呟いて、
私はさっきまで入江君が座っていた場所に目を向ける。

視界に止まったノート。

「あ、意味・・・」私はぎこちなく辞書を開き調べる。

【Amour absolu ・・・絶対的な愛】

「あ、これって・・・」

さっきの私の不器用な表現が簡潔なひと言で表現されていた。入江君、受け止めてくれたのかな・・・
私の心にほんのりと暖かさが込み上げてくる。

ノートにはさっきまで教えてもらっていた内容を書き留めた私の子供っぽい丸い文字と、入江君の大人っぽいスラっとした文字が並んでいる。
復習するというのではなく、その文字たちを追いかける。

「さっき教えてもらった『~を込めて』のAvec tout ... etと、Amour absoluを組み合わせたら、絶対的な愛をこめて・・・か、なんいいかも」

そうだ、今度入江君にプレゼントをあげる時とかにメッセージカードに書いてみようかな?入江君、驚いてくれるかも・・・!

私の妄想はこうして深夜まで続いていった―――





「で?その後、その言葉はメッセージとして贈ったの?」

「そ、それが今の今まですっかり忘れてて・・・」蒼くなりながら琴子が答える。

「ま、そんな事だろうと思ったけど。入江先生、覚えていらしたのねぇ」

つまりその頃から入江先生は、琴子の事を想っていたのよね。ほんと妬けちゃうわ。幹は大きく溜息をつく。

「それに、今の今までメッセージに気付いてなかったんですものねぇ。」

「ど、どうしよう。入江君、すごく呆れてるかな」オロオロする琴子。

「何をいまさら。そんなことで入江先生は呆れたりなんてしないわよ。でも、この事をチャラにしてお釣がくるくらいの返事はするべきかもね」

「そ、そうね。・・・そうだ、あの、メッセージって、指輪以外にも入れることはできるんですか?」

何か思いついたらしい琴子は、そのまま話を一緒に聞くことになってしまっていた店員の方を向き、尋ねる。

「はい、種類にもよりますが・・・」突然聞かれて驚きながらも店員は答える。

「じゃあ、これにはどうですか?」ショーケースを指さし、琴子が尋ねる。

「はい、こちらなら大丈夫ですよ」

なるほど、これなら入江先生も必ず持ち歩くわよね。幹は納得し、琴子に問う。

「なんてメッセージをいれるの?」

「それなのよね・・・それに、フランス語で貰ったメッセージだから、私もフランス語で贈りたいんだけど、これ以外何も覚えていないし」

「琴子らしいわね」

「あの、よろしければ、日本語で書いてくださったら、私が翻訳しますが」店員がの言葉に

「「え、フランス語わかるんですか!?」」と2人の声がはもる。

「はい、勉強して長くなりますから、お役にたてると思います」店員はにっこり笑って答えた。

「あ、ありがとうございます・・・!それじゃあ、これでお願いします」
用意されたメモに琴子はメッセージを書き込む。

「翻訳、大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ」琴子のメッセージの下に店員はフランス語に訳したメッセージを記す。

「こちらになります。よろしいでしょうか?」

「はい!これでお願いします!!」

「なかなかいい考えじゃない」幹は感心したように琴子を見て微笑む。

「そうかな?クリスマスプレゼント、これにしようと思って」琴子もにっこり笑って応える。

「そうね。入江先生、喜んでくださるんじゃないかしら」

「クリスマスまでに間に合いますか?」

「はい、一週間のお預かりで出来ますので、充分間に合いますよ」

「ではよろしくお願いします」
手続き、会計を済ませて2人はカウンターを後にした 。




「今日モトちゃんに誘ってもらってよかったよ」

「本当、私のお陰よね。まったく、私のピアスを取りに行ったはずが、まさかの展開だったわ」

「へへ。ごめんね?」

「いーえ。むしろ意外な入江さんの一面を見られて私は楽しかったわよ」

「そうだね。私も入江君がこんな事してくれるなんて、思わなかったよ。それに、あの日の事、覚えていてくれたなんて・・・すごく嬉しい」
本当に幸せそうに微笑う琴子。その表情は、幹の顔にも伝染する。


「モトちゃん、私がメッセージに気付いた事・・・」

「分かってるわよ。クリスマスまで、入江先生には秘密にするわ」

「・・・・。さすがモトちゃん・・・・」

「ところで琴子、そのフランス語、何点だったの?」

「・・・3点」

「何?ハッキリおっしゃい!」

「――53点よ!でも、でもね、ちゃんとサガンの方は満点だったのよ!!」

どこまでも琴子らしい。幹は笑いすぎで涙が止まらない。

「もう!そこには触れられたくなかったのに~」

「あ~ゴメン、ゴメン。でもそれでこそ琴子よ。・・・楽しみね、クリスマス」幹の優しい笑顔に

「うん、そうだね」
琴子も漸く笑顔を向ける。

そして、2人はそれぞれの帰途へと付いたのだった。






あとがき

話を発想した時点では、もっとあっさり終わらせる予定だったのですが・・・甘くありませんでした。
指輪のメッセージをフランス語設定にするために、何か甘い名言のようなものは無いものかと、有名なフランス人作家・サガンの『悲しみよこんにちわ』を読んだものの、そんな都合よく指輪のメッセージのイメージに合うセリフなどありませんでした(*_*)
かと言って、やみくもにフランス小説読む気にもなれず・・・
折角その為だけに読んだ本だったので、なんとか話を繋げなければと半ば無理矢理話に絡ませていきました。
やっぱり無理感丸出しですよね(汗)
いや、もう過ぎた事なので。結果オーライ(何が?)ですね!

23巻スキマ  コメント(2)   トラックバック(0)  △ page top


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::Re: なおちゃん様
> なおちゃん様

懐かしいお話にありがとうございます。
そうですね、琴子が自分では片思いだと思っていた時期もいざといういう時は必ず入江くんは駆けつけてきてくれてましたよね。お互い違う意味で鈍感だからなかなかもどかしい時期ではありますが、そこがまたなんとも素敵な期間ですよね。
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