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::girl's talk
パタパタパタパタ・・・・

夕刻、面会時間が終わりを告げる30分前、斗南病院の入院病棟に軽快な足跡が響く。

「廊下は走らないようご協力下さいね」

「あっ・・・すいません!!」
看護師の注意に素直に謝った琴子は、目一杯の早歩きで病室へ向った。


コンコン

「理美~、お見舞いに来たよ!どう?お腹はもう痛くない?つわりは大丈夫?」
ノック後、返事を待つのももどかしく引き戸を開ける。

「琴子、来てくれたんだ。うん、安静にとは言われてるけど大丈夫よ」
理美は穏やかな笑顔で答えた。

「それより、昨日はありがとうね。琴子と入江君が居てくれなかったらと思うとゾッとするわ」

「本当に良かったよ、理美も赤ちゃんも無事で・・・。それに、理美が良くんと仲直りできて」

「そうね。琴子たちと、・・・お腹の子供のお陰だよね」
理美は愛しげに腹を撫でながら微笑む。



大学の講義後だったから売店しか寄れなくて、と琴子が差しいれたグレープフルーツゼリーを食べながら世間話をする。
ふと会話が途切れた時、理美がスプーンを動かしていた手を止め折入った様子で琴子に向き直った。


「・・・ねえ、琴子。ちょっと聞いてもいい?」

「ん?何、改まって・・・」
親友の真剣な眼差しに琴子の手も止まる。

「あのさ・・・琴子って専業主婦になろうって思った事、ないの?」

「え・・・?」
琴子は唐突な質問に言葉を詰らせる。

「今はさ、看護師を目指してるって知ってるから、そんなつもりはないって分かるよ。でも、もし普通に卒業してたらどうしてた・・・?」

考え込む琴子に理美は更に言葉を続ける。

「・・・ほら、琴子って四回生の頃、妊娠騒動あったじゃない?て事はあの時点では、卒業後は専業主婦で、そのまま母親になるのもいいって思ってたのかなって。琴子、落第が決まって暫く家出て悩んでたわよね。どんないきさつで看護師になるって決めたの?」


記憶を遡っていた琴子がふっと笑う。

「・・・そう言えば理美もじんこも私が看護科に行くって言った時、理由とかあんまり聞いてこなかったよね。聞かなくても入江君が理由ってのは分かってただろうけど。・・・ねえ理美、私が看護師になりたいって思ったの、本当は何時からだったと思う?」

「それは・・・落第が決定してからじゃないって事?」

琴子は静かに頷いた。

「私ね、本当は入江君がお医者様を目指しているって知った時から看護師になりたかったんだ。でもほら、私って頭悪いしドジだし・・・。人の命に係るお仕事なんて出来ないだろうと思って諦めていたの。でも留年が決まった時に『大学辞めて奥さんしようかな』って入江君に言ったら、私から根性を取ったら何の魅力もない、結婚を逃げ道にするなって言われて・・・」

「相変わらずキツイわね・・・」

同情の表情を見せる理美に、琴子は笑って首を振る。

「ううん、図星だったもん。・・・私ね、入江君と結婚出来た事に浮かれて将来から目を逸らしてた。入江君の言う通り、結婚を逃げ道にしてたんだよ。荒療治だったけど、入江君は私の眼を覚まさせてくれたんだ」

「そっか・・・。琴子、私も正直に言うね。私も結婚を逃げ道にしたいって思ってたよ。四回生になって就職活動が本格的になった時、私にはこんな仕事がしたいって熱意なんて持っていなくて、取敢えずどこでもいいから腰掛けで就職して、何年か働いたら寿退社でもすればいいって思ってた。でもこんな不況の時代に、そんないい加減な気持ちの人間を雇ってくれる企業なんて見つからなくってさ・・・。当然、就職浪人を決めた後も事態が好転するなんて事はなくて。 体力的にも、精神的にも疲れていたのよね。就職なんてどうでもいい。誰かに護られたい、いっそデキ婚してしまうのも悪くないって投げやりになってた。それで、妊娠の可能性があるなんて事、十分分かってたのに・・・・浅はかだよね」

「理美・・・・」

理美は舌をペロッと出して笑うと、また真面目な顔に戻って言葉を紡ぐ。

「そしたらあっさり妊娠しちゃってさ。それからは琴子も知っての通りよ。でも考えてみたら当然よね。男が、入社一年目で、まだまだこれからって時にいきなり結婚、しかも父親になるなんてね。重いわよ、私が男でも逃げ出したくなるわ」

「・・・・・」

それは、昨日駆けつけた良が琴子と直樹の前で吐露した言葉だった。琴子が掛けるべき言葉を見つけられないでいると、理美が琴子の手を握った。

「いいのよ、気を使わないで。昨日ね、琴子たちが帰った後、良と今までの気持ちを言い合ったの。まだまだ新米未満の私たちだけど、少し前進出来た気がする」

「そっか・・・・」

「うん。私ね、目標見つけられたよ。良を一番理解して支えてあげられる奥さんになる。そして、精一杯この子を護る、幸せにする。・・・ねえ琴子。 幸せって、与えてもらうものじゃないんだよね。一緒に生んで、育んでいくものなんだよね・・・。社会に出て働くとい事は取敢えず暫くはお預けだけど、こんな目標でもいいんだよね・・・?」

縋るように自分を見つめてくる理美の手を琴子はギュっと握り返す。

「勿論だよ・・・!!私が入江君に叱られたのは、いい加減な気持ちで主婦になるなんて言うなって意味だったんだもん。理美、私思うんだ。主婦って立派な役割だよ。お義母さんを見てて思うんだ。お義母さんは入江君を産んだお母さんだけあって、ソツなく家事全般をこなしちゃうけど、皆の健康を考えたご飯を作って、いつもお家の中を綺麗にしてくれて。そして家の中を明るくしてくれる。決して簡単な事じゃないよ。外に出て働くのと、家を守るって事は、どちらの方が大変なのかって言われたりすることもあるけど、優劣なんてないんだよ、きっと。そう、きっと・・・ここの鍛える部分が少し違うだけなのよ」
そう言って、自分の胸に手を当てた。

「理美、私は理美の目標は十分素敵だと思う。だから、元気な赤ちゃんを産んでね。そして、いつか私にも赤ちゃんが生まれたら先輩としていっぱい相談に乗ってね」
理美の顔を覗き込んでニッと笑うと、その笑顔に漸く理美も同じように笑った。

「うん。いつかお互いの子供を連れて、遊園地にでも行きたいね」

「それ、すごく楽しそう!!」
2人は声を出して笑う。
すると扉がノックされる音がして、看護師が入って来た。

「にぎやかね~、石川さん、元気そうで何よりだわ。でも、面会時間はもう終わりですよ」

「「えっ、もうそんな時間・・・?」」
声がはもり、再び顔を見合わせクスリと笑う。


「じゃあ理美、私帰るね。お大事にね」
帰ろうとする琴子を理美が僅かに引きとめる。

「待って。ね、昨日結局あれからパーティには行ったの?」

「ううん、時間も時間だったし。入江君もむしろ良かったって。それがどうかした?」

「申し訳なかったな、って。お義母さん、怒ってなかった?」

琴子はうーんと唸って考えた末、答えた。
「ううん、拍子抜けするほど何も言われなかったよ。今朝ね、お義母さんに謝ろうとしたの。そしたら、なんだかニコニコ笑って、『2人が仲良しならそれでいいのよ』って」

「・・・・・。琴子、ちょっと」

理美は琴子を自分の元に呼び寄せると、琴子の髪をグッと束ねる。

「な、なにっイキナリ・・・!」

「はは~ん。成程ね」

「だから、何よ~」

「気付いてないの?此処に、2人が仲良しな印がちゃんと残っているからよ」
そう言って琴子の項を軽く突く。

「う、うそ・・・・!」

「入江君って、意外と見せつけるわよねぇ。私やじんこはね、ずっと琴子と一緒に居て琴子の話ばっかり聞いていたから、2人の関係って琴子の万年片思いみたいに映ってたんだけど、実はそうでもないのね。少し離れた所から見るようになって分かったわ。2人の赤ちゃんができるのも時間の問題かもね。楽しみにしてるわ」

「//////」

「じゃあまたね、今日はありがと」

理美はイタズラ顔でウインクする。
琴子はまだ赤い顔のまま病室を後にした。



急に静けさを取り戻す室内。でも理美は淋しくない。

「一歩ずつ、一歩ずつ、だよね。・・・これから宜しくね、赤ちゃん」

まさに母親の微笑みを浮かべて、理美はまだ見ぬ我が子に挨拶をした。

16巻スキマ  コメント(4)   トラックバック(0)  △ page top


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::拍手コメントありがとうございます!
F様
おはようございます!
昨日御礼をうっかり忘れてしまっていました。すいません(>_<)
夢レベルでは看護師になる事を話した事はありましたが、実は本気でそう思ってる事、直樹はちゃんと分かっていたんだと思うんですよね。だから、あえて、落第の時には突き放したのだと思います。
素敵なパートナーですよね。
お約束は・・・ね(笑)
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::Re: コメント&拍手コメントありがとうございます!!
今回の話はスピンオフっぽいお話になりましたが、頂いたコメントが皆とても深く、読ませていただきながら大きく頷いてしまいました。本当にありがとうございました。
以下、下さった方其々へのお礼です。

C様
昨晩(今日か!!)は遅くにメール失礼しましたっ
いつも思いやり溢れるお言葉心に染み入ります。
本日も私の作品への勿体ないお言葉、恐縮しております。ほんと、全っ然そんな事ないです!(^_^;)
今回のお話も好きと言っていただけて良かった~。もう、何でも書く!と言ったので、我が道路線まっしぐらでも何でも書いてやる!と意味不明なやる気で取りかかりました(笑)
仲良し印は、私自身の糖分補給の為(笑)お約束ってヤツです♪

M様
このタイトルでは、確かにキャピキャピしたものを想像してしまいますよね~。がっつり本音路線で失礼しました!!
M様とても真剣に読んで下さったんだなぁって胸が熱くなりました。理美は分かる部分もあるけれど、確かに甘えるな!と言いたくなりますよね。でもこの一件で大きく成長したのではと思います。本当、結婚はしてからが勝負です!そんな時に相談して、激励してくれる友達がいるって幸せな事ですよね。


M様
良かったですか?あぁ書いて良かったです~、ありがとうございます!!原作では、良君が自分の甘さを吐露するシーンがありましたが、理美も同じように自分の甘さを省みる時があったんじゃないかなぁと思って書きました。私も琴子は理美やじんこに助けてもらった部分、色々あると思います!そして、琴子もいざという時、大事な事を助言してくれる親友なんだと思います。
入江君のおイタ(笑)はお約束です♪結婚記念日でしたもの!路上でチューしてましたし。その後はLOVE×2だったでしょう!!


R様
素敵な感想ありがとうございます!本当にそうだな~と、頷きながら読ませていただきました。
人生って不思議ですよね。様々な場所で分岐点があって、選択が違えば未来はうんと違うものになっていくのでしょうね。そう考えると、琴子の落第も想像妊娠も、意味のある出来事なんですよね。
理美もここで良君と話し合う機会が無かったら上手くいかなかったかもしれないですよね。起こる出来事には全て意味があるんだなぁと、改めて考えました。


N様
的確な読解ありがとうございます。まさに私の言いたかった事です。
夢を持つって、青臭く感じる時もありますが、あるとなしでは人生観が変わると思います。人それぞれ方向は違っても、それに向かっている人が輝いて見える事に大きく共感します。
そして…どんな人生であれ琴子が自分の夢に向きあうように直樹ならきっとしていたと私も思います。琴子の家出を黙って見ていたのも、琴子ならきっと向き合えると信用していたのだと思います。そんな風に接してくれる旦那様って、凄く愛が深いですよねぇ。やっぱり、直樹最高!!
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::夢
どんな形であれ直樹の側にいつもいるのが琴子の夢で、琴子は落第がきっかけでその夢を追いかけ、、里美は妊娠がきっかけで夢を見つけた…といったところでしょうか?夢は人それぞれ違うけど、、それにむかって行く人は、輝いてみえます。
ところで、、琴子は落第がきっかけで看護婦になる決意をしましたが、もし普通に卒業してたらどうなっていたんでしょうね??
…と、少し想像してみたんですけど。直樹ってずっと知っていたんですよね、、琴子の夢。きっとなんらかの形で気がつかせるんだろうなぁ・・とそんなことを思うと、、やっぱり琴子っていろんな意味で(痣含む^^)直樹に愛されているんだなぁと、、いろんなことを考えさせられちゃいました。
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