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::Her monologue
・・・・・・・・・・・・・・






今更だけど、正直に言うわ。
分かっていたのよ、本当は。

直樹が私に、従妹以上の感情なんて持った事もない事も。そして琴子さんの事を大好きだってことも・・・

***

「本当に何にも出来ない奴で、お前とは大違いなんだけど。あいつのあのパワー、好きなんだ」

泣いて私たちの元を去った琴子さんの後ろ姿を見つめながら、直樹は言った。何にも、誰にも好意を見せた事が無かった直樹の口から、いとも簡単に好きという言葉が零れ落ちた。…分かっていたけど、完敗を思い知らされる。

直樹は、妹をあやす様に私の頭をポンポンとして、ゆっくりと、でも迷いのない足取りで琴子さんを追いかけていった。


裕樹の胸を借りて思いっきり泣いた私がバーベキューの場所に戻ると、そこには一足早く直樹と琴子さんが戻って来ていた。

一見するといつもと変わらない2人の姿。
まだ火の通っていないお肉に手を伸ばそうとする琴子さんに、直樹が呆れたように突っ込んでいる。
でも良く見ると、さっきとは少し違う琴子さんの顔。

目がまだ充血しているのは、さっきの一件で泣きはらした証拠。
そしていつもともう一つ違う所…琴子さんの唇。

新緑の季節にぴったりの瑞々しい透明ピンクのグロスを塗っていた琴子さんの口元から、今はそれが落ちていた。
琴子さんは知っているのかしら。
食事をした事によるグロスの落ち方と、キスをした事によるそれは、似ているようで非なるものであるという事を――
琴子さんのグロスの落ち方は、後者。
それは、さっきまで直樹と琴子さんがキスをしていた名残……


お互いに気を使いながら、なんとか終わったバーベキュー。
皆で分担して後片付けを行う中、琴子さんは伯母様を手伝ってキッチンで食器洗いを始めた。
今日はキッチンを手伝う気にはどうしてもなれなくて、庭の片付けの手伝いをしようと洗い物を運んだあと私はもう一度足を庭に向ける。
伯父様たちは網なんかを綺麗にし終え、物置に一緒に片付けに行ったらしい。直樹が一人、使ったテーブルやイスの後片付けをしていた。

私は直樹に近付く。

「ねえ直樹、あのね…」

「理加か、どうした」

「…直樹が琴子さんの事を好きなのは、良く分かったわ。ううん、分かってたよ、はじめから。だって、直樹は自分の気持ちを誤魔化したり、一時の感情で物事を決めるような人じゃないもの。琴子さんとの結婚は直樹が望んだからこそ、したんだよね」

「…ああ、そうだな」

「ねえ、直樹。…あの時、私が直樹にキスをした時の事…覚えてる?」

「…覚えてるよ」

「クスッ 私ったら強引に直樹にキスしたんだよね。直樹、結構驚いてたよね」

「ああ、そうだったな」


――でも、それだけの事。不器用で強引な私のキスに直樹が一瞬でも応えてくれる事は無かった。


「…ねえ、直樹。琴子さんとのキスは、直樹からしたの?」

「ああ、俺からだったな」

「それって、どんな気持ちでキスしたの?」

あっさりと認める直樹が少し憎らしくて、私は直樹に意地悪な質問をぶつける。でも…直樹はフッと笑って私を見つめた。


「言わなくても分かるんじゃない。…多分、理加がおれにそうした時に思った事とそう変わらないよ」

そう言うと、直樹はまた、私の頭をポンポンとすると、テーブルを運んで行った。


――もう、ほんと悔しいな。
私は唇を噛みしめる。
私が直樹にキスをした時の気持ち。…今でもしっかり覚えているよ。

『私を見て』

『貴方が好き』

そして…

『…ただ、唇に触れたかった。傍に居たかった…』


あの直樹に、こんな気持ちを抱かせるなんて…琴子さん。あなたって凄い人だね。悔しいけど、認めるしかないよ。


***

その夜、昼間にたっぷりご馳走を頂いた入江家では、夕食は軽く済ませて早めに其々の部屋に入っていた。
私も早めにお風呂を頂いて自室に閉じこもっていたんだけど、少し喉が渇いたから水を取りに階下に降り、リビングの扉を開ける。

誰もいないリビングは、小さな常夜灯だけが足元を照らしている。
冷蔵庫からペットボトルを取り出すだけだから、電気を付けずに私は中に入った。

夜目が利いてきた頃、ベランダに続くリビングのカーテンが微かに開いているのに気付く。
几帳面な叔母様にしては雑な締め方だな、と思いながら私はきちんと引きなおそうとカーテンに近付いた。

カーテンに手を掛けようとした時に、ベランダに人影がある事に気付き、私はそっと誰かを確認する。
そこに居たのは…琴子さんと、直樹――。


ベランダの扉は閉じられているから、会話は聞こえない。表情も、立ち位置の関係で私の居る場所から見えるのは、直樹のものだけ。

でも、私は思わず盗み見をしてしまった。
だって、あんな色々表情を変える直樹なんて、初めてみたんだもの。


皆が居る前ではポーカーフェイスを決め込んでいるのか、それともいつも一人百面相状態の琴子さんの印象が強すぎて、直樹の表情の変化が目立たないのか、理由は分からない。
でも、今私が目の当たりにしている直樹はクルクルと表情を変えている。

からかうような皮肉な笑顔。
眉を吊り上げて怒っている顔。
長い睫毛を伏せて溜息を吐く表情。
そして…見たこともない優しい笑顔で、たった一人の女性を見つめる姿――

ああ、直樹って琴子さんにはこんな表情見せるんだ。
もう、今日は何度悔しさを味わっているんだろう。
でもね、遠くからでもこんな直樹の顔を見られて、ちょっとラッキーだな、って思っちゃうよ。


あと一週間。私は此処に居候する。
長かったこの恋を失って、さらにまだ2人の事を見せつけられるのはちょっとした拷問だけど、許してあげるよ。この直樹の笑顔に免じて。


ああもう、さらに見せつけられちゃった…
そんなキス、誰が見てるとも知れないところでしないでよ…さすがにそれはあて過ぎよ。

私はそっと笑って心の中で呟いた。


さよなら、直樹。大好きだった直樹。
そしてさよなら、…私の、初恋。





18巻スキマ  コメント(3)   トラックバック(0)  △ page top


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:: 
     おはようございます。 
 理加ちやんも 直樹に百面相させちゃったり 直樹を思う一途さ知ったら・・・
しかたないと 思えちゃうよね。 
  
  琴子だからこそ・・・ 諦められたんだろうなぁ
 
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::コメント&拍手コメントありがとうございます!!
C様
こんばんは♪毎日遊びに来て頂いて、そのうえコメントも頂けるなんて、幸せ以外の何ものでもありません!!本当にありがとうございます(^-^)
入江君に数々言い寄ってくる女の子の中でも、理加ちゃん(あと松本姉も)は真剣度が違いますよね。好きな分、昔と全く変わった直樹に戸惑い、琴子に嫉妬したんでしょうね。

なおき&まーママ様
こんばんは♪いつも深く読んで下さってありがとうございます!!
私も、理加ちゃんの真剣な気持ちを理解できるようになった直樹だから、真摯に琴子への気持ちを理加ちゃんに語ったのだと思います。琴子にはその半分も言ってあげられないのは…仕方ないですよね。それこそが直樹なんですもの(^_^;) それでも琴子と直樹のやり取りの端々に2人の仲良さを感じ取ってしまうのかな…。でも私も、出て行く時には理加ちゃんの思いが晴れていたと願っています(*^_^*)

F様
こんばんは♪両方にコメント下さって嬉しいです(*^_^*)
この時の理加ちゃんは、分かっていたけれど直樹の口からハッキリと琴子への気持ちを聞いたのだから、とても辛かったと思います。でも、直樹も真剣な思いを汲んで、だからこそ真摯に応えたんですよね。
裕樹君は、理加ちゃんの気持ちも、直樹の気持ちも痛いほど分かるから、優しく受け止めてあげたんですよね。裕樹くんって、いつもそういう役割ですよね。ほんといい子だわ!!私もあの時の裕樹君はとってもカッコイイと思います!!


R様
こんばんは♪こちらこそいつもコメント頂いてありがとうございます!!
理加ちゃん、直樹の気持ち痛いほど分かっているけど、どうしても嫉妬を止められなかったんですよね。それだけ真剣に好きだったんだと思います。この一日は本当に辛かっただろうけど、この経験があったからこそちゃんと諦める事が出来たのだと思います。
直樹の琴子への愛情表現の下手さは病ですからね。でも、だからこそのここぞという時が堪りません♪
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::理加ちゃん
このお話大好きなんで、隙間が読めてうれしいです!ホントに素敵なエピソードテンコ盛りなのにアニメやドラマでカットされてて、何で!!!って声を大にして言いたいくらい…(;^_^A
多分、、この後、理加ちゃんはこれ以上当てられることはなかったんじゃないかなぁ…なんて思いました。だって昔はわからなかった理加ちゃんの気持ち今の直樹なら理解できてるから。だからこそいつもみたいに回りくどく言わないでストレートに琴子を好きだってあえて理加ちゃんに言ったのかなぁ、、なんて。だって、琴子には相変わらず回りくどくしか言ってないですよねぇ、、琴子にも好きってストレートに言ってあげればいいのに(*´艸`)
だから、二人きりなところに遭遇しないかぎり甘甘は大丈夫、、ただ直樹の変化が目に映るのは、仕方ないかもしれません。ただ、それはそれで辛いですよね、、でもきっとそれ以上に凄いことを仕出かす琴子に目を奪われ、、きっと理加ちゃんも少しは癒されたんだと思います。
そして、、帰る頃にはすっぱり諦めることが出来たのではと。そう、良いように考えている私です。
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