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::Fireworks of that summer
「今晩は、この辺りで一番の花火大会があるんよ」


「わぁ!そうなの?最後の夜にぴったりだね、入江君!!」

従弟のタケの言葉に、琴子は大きな目を更に見開き、期待を込めた表情で直樹を見上げた。
2週間に及んだ紀子の実家での生活も今日が最終日。昨日祖父に出された難題もクリアし、今日一日はやっとのんびりと過ごせる一日である。
滞在期間中は、炊事・洗濯・畑仕事と次から次へと仕事があり、ちっとも直樹とロマンチックになど過ごす事も出来ず、がっかりしていた琴子には願ってもない朗報であった。

「無理だな」

「な、なんで…!?」

けんもほろろの直樹の返事に琴子は憤慨する。直樹はそれには返事せずに、従弟のタケに話しかける。

「花火大会って毎年隣町であるやつだよな?」

「そうたい。直樹兄ちゃんはさすが良く覚えとるのう」

タケが感心したように答える。

「一度行った事があるからな。勿論、一家総出で行くんだろ?」

「そうよぉ。ここら一帯では夏の一大イベントだからねえ」

今度はメグが返事する。

「ね、ねえ…それが無理っていうのとどう関係があるの…?」

琴子が堪らず直樹に詰め寄る。直樹は琴子の手を振り払うと淡々と答える。

「毎年この時期に隣町で花火大会があるんだ。田舎だからな、夏一番のイベントでここらの住民は勿論、多少の遠方からも沢山人が集まるんだよ。一色家も毎年総出で出掛ける事になってる」

「だ、だから私たちも一緒に…」

「無理なんだよ。隣町って言っても遠いから車で出掛けないといけない。車を出すのは恵三おじさんと博子おばさん。博子おばさんのワンボックスには明子おばさんとマキ、ヒロ、ヤス、ミキ、ユキ、ケンが乗る。恵三おじさんの車はセダンだから5人乗り。タケ、トシ、メグ。つまり、俺達が乗ると定員オーバー」

「そ、それならタクシーとか…」

「行きは良いとして、帰りは混雑でとても乗れないんよ」

叔母の明子が申し訳なさそうに言う。がっくりと肩を落とした琴子にメグが袋を差しだす。

「琴子さん、悪かねぇ。良かったらこれ使って」

「な、何…?」

琴子が受け取って袋を開いて中をみると、そこには花火セットが入っていた。

「め、メグちゃん…本当にもらっていいの?」

メグは、目を潤ませて感激する琴子に苦笑しながら頷いた。

「おいどんら、ちょっと琴子さんの事からかい過ぎたからねぇ。罪滅ぼしたい。使って」

「あ、ありがとう…!!」

すっかり元気を取り戻した琴子に周りも明るく微笑んだ。


***


「今晩はちょっと淋しいですね。おじいちゃんとおばあちゃんと私たちだけで…」

皆は花火大会に出掛けた為、留守番の4人での食卓は2週間ずっと賑やかだったのに比べて全く静かなものであった。
後片付けを済ませ、昨日琴子が採ってきたアケビをデザートに、 4人で団欒しながら琴子が呟く。

「たまにはこんな日があるのも良いもんよ。ねえ?じいちゃん」
直樹の祖母が笑って答える。

「まあ、そうたいねぇ。…ところで琴子さん、昨日の話やけど」

「なあに?おじいちゃん」

「菊之助さんの事たい。琴子さん、此処来てから菊之助さんとはよく会っとったと?」

「あ…は、はい。夜中に目が覚めた時とかには、いつも会ってました」

10代前の当主の話を振られ、この2週間の不思議な遭遇を思い出しながら琴子は答える。

「菊之助さんとは、どんな話をしんしゃったと?」

「ええっと…。一色家の皆さんの事を話していました。おじいちゃん、本当に皆の事、良く知ってたなぁ…」

菊之助は言うなれば幽霊であるが、一緒に過ごした時間を思い出すと全く怖い存在ではなく、寧ろもう一度会えれば御礼を言いたいほど優しい人物であった。
琴子がそのように話をすると、祖父が徐に口を開いた。

「…やっぱり、わしら生きる者全て、一人ゝの存在は、ご先祖様あってこそ、っていう事たいねぇ。巡り巡って生まれてきて、誰かと出逢ってまた新しく道を作っていく…。やがて生を終えても子孫を見守っている。その流れの中で直樹と琴子さんは縁あって一緒になった。これからも仲良うしんしゃい」

「おじいちゃん…!!」
琴子は祖父に抱きつく。

「全く 、暑苦しかオナゴじゃのう…!」
口では邪険に扱う祖父だが、その瞳の奥は優しく琴子を見つめている。

「そうじゃ…。琴子さん、今日は直樹と二人、離れに泊まりんしゃい」

「え、どうして?あと1日泊まるだけなのに――」

「わかった。ありがとう、じいちゃん」
突然の祖父の言葉に訝る琴子の言葉を遮って直樹が答えた。

「ど、どうしたの。入江君まで」

「・・・離れからは花火が良く見えるんだよ。お前、見たかったんだろ?」

「そ、そうなの…?お、おじいちゃん…ありがとう!!」

涙を流さんばかりに感激する琴子の姿に、祖父は少し顔を赤らめそっぽを向き、祖母はそれを微笑ましく見守っている。

「ほら、布団とか運んでおくから、お前は風呂に入ってこいよ」

「うん…!おじいちゃん、おばあちゃん、本当にありがとう!!」


***


「琴子さん、おいで」

風呂から上がった琴子を祖母が手招きする。

「なあに?おばあちゃん」

「ほら、浴衣着せてあげるけん」

琴子が祖母のいる部屋に入ると、そこには琴子が東京から持ってきていた浴衣が用意されていた。

「もう一度くらい着たかろう?」

「おばあちゃん・・・嬉しい、お願いします!」

「良かった。それじゃあ、そこに立って」

祖母はにっこり笑って琴子の浴衣の着付けをし、髪も綺麗に結い上ると、琴子を姿見に連れて行く。

「ほら、出来たよ。花火、直樹と楽しんでね」

姿見には、藍色の中に華やかな花が描かれた浴衣に身を包み、その花の一色と同じ赤い帯、簪を合わせた艶やかな琴子が映っていた。

「わあ・・・!!綺麗にしてくれてありがとう、おばあちゃん!入江君、褒めてくれるといいな・・・」

「ああ、きっと褒めてくれるよ」

琴子と祖母は鏡越しに微笑んだ。

「さあ、直樹もそろそろ風呂から上がってるだろうし、花火も始まるから離れに行っといで」

「はい!おばあちゃん、ありがとう。おやすみなさい!」

琴子は逸る気持ちを押えながら、浴衣を着崩さないよう小股で離れへと急いだ。






入江君と紀子ママの実家へ行った時のIf…という事で書かせて頂きます。
原作ではアケビを取りに行った次の日には帰っているし、ロマンチックな事は何もなかった、と書いていましたが、
もしも、あと一日お泊りしていたら…?と妄想しながら書いています。
ダラダラと前置き長いですね、我ながら^_^;
次で終わるつもりです!
今度は【after】って事でパス付きで行かせて頂く予定です。(本当に懲りない奴…)
12巻スキマ  コメント(5)   トラックバック(0)  △ page top


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::コメントありがとうございます。
さや様

はじめまして^^この度は数あるサイトから当ブログを見つけて下さりありがとうございました。
楽しんで読んで頂けているようで嬉しいです。

さて、パスワードについてですが、当ブログはクイズ形式になっており、答えについては申し訳ないですが直接お問い合わせ頂いてもお答え致しかねます。詳しくはプロフィールをご参照下さいね。
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::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
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::拍手コメントありがとうございます!
繭様
こんにちは♪コメントありがとうございます!
じいちゃんの気遣い、直樹にしては待ってました!てとこでしょうか(笑)即答するあたり、自分で書いていて余裕ないなぁなんて思ってしまいます(^_^;)2週間禁欲ですからね~。新婚&若いし…ありと言う事でお願いします(苦笑)

まあち様
こんにちは♪おじいちゃんの話、深イイのお言葉ありがとうございます!なのに、あらら…(笑)すぐにそっちの方へ話を持っていきたがる私(^_^;)私の気の急きが直樹の即答へ繋がっています。すまない、直樹…(笑)ご期待通りの展開になるよう頑張ります(^-^)

りきまる様
こんにちは♪ついてきて下さって嬉しいです~(*^_^*)
ホント、原作ってなかなか2人のLOVE×2にお目にかかれないですよねぇ。でも、たまに描かれているそのさじ加減が絶妙で♪だからこそ、想像を掻き立てられるのですよね(笑)

Chan‐BB様
こんにちは♪コメント読んでニヤニヤが止まりません!!
夏の風物詩の力を借りてLOVEに挑戦します(笑)
そして、佐賀弁へのご反応ありがとうございます(*^_^*)
生まれも育ちも大阪ですが、全く違和感なく書けました♪読みこんでるってことですかね?
他にもお話したい事ありますので、あらためてまたメールさせて頂きますね☆

なおき&まーママ様
こんにちは♪こちらこそすみれお様のサイトで素敵なお話読ませて頂いてありがとうございました。すごく感動しました!しかし、コメントのやり取りまで食い入るようにみててすいません。引かれてしまうかと心配しながら、書かずにはいられなくて(^_^;)
この話、その余韻で書いています。伝わったようで嬉しいです。
しかし、その後をそっちのお話に持っていく私…すいません!なんだか、書きたくてしょうがない周期でして(笑)
どうしたもこうしたも…の下りにぶぶっと笑ってしまいました。ほんと、まったくその通りだww

かやん様
こんにちは♪コメントありがとうございます!
chan‐BB様となおき&まーママ様のお話の影響でちょっとこんなお話を書いてみました(^-^)
LOVE×2を書きたい気分なのでそっちに繋げてしまいました。そちらも楽しんでいただければいいな♪
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