::THE VOW 2
「イタキス Zircon Wedding 2012」

(上のバナーからemaさんが012年7月にemaさんが発行された「suite kiss」の再録ページに進めます♪)


前回は応援ありがとうございました!
元気頂いて今回は前よりボリューム増でお届けです。・・・が、どうしても纏まらない文章・・・(T_T)

もう考えすぎて頭はもちろん肩から腰まで相当きちゃったので(現在さろんぱす中w)、申し訳ないですがこんなんで勘弁してやって下さい。

コメント下さった皆様、大変申し訳ないですがお返事今しばらくお待ち下さいね。
→ 返信完了しました!なお、こちらのコメント欄もご返信の為開放致しました。
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 それから数十分後―。

ウェディングドレスから打ち合わせに着てきた自前の洋服に着替えた琴子は、紀子と共に山下に案内された打ち合わせ用のテーブルに移動すると、ゆったりとしたソファーに腰を下ろしポラロイド写真を一枚一枚丁寧に吟味していった。
その数たるやよくぞこの時間中に撮り溜めたものと驚嘆に値するのだが、彼女達は疲れを微塵も見せず、和気藹々とした雰囲気を絶やさない。
中でもとりわけ元気なのは紀子である。
紀子はほくほくと満足気な表情を見せながら、選りすぐりの数枚をピックアップしテーブルに並べた。そうしてひとしきりふんふんと頷きつつ見定めると、その中の一枚を写真をもう一度ぴらりと摘み取り目を細める。

「やっぱりこういう時の花嫁のインスピレーションっていうのは間違いないわね!」

そう言ってしみじみと眺めたのは、例の琴子が自ら着てみたいと志願したドレスだった。

「勿論、琴子ちゃんは何を着てもすごく可愛かったんだけど。
 でもこれは群を抜いて似合っているわ。ねぇ?山下さん」

「ええ、本当にその通りでございますわ」

紀子の問いかけに山下は顔を綻ばせ柔和に頷く。

それは勿論二人の主観的な感想ではあるが、第三者の客観的な感想を加わっても同じ結論が多く集まったことだろう。それくらいこのドレスは試着を重ねた他のどれよりも琴子に一番良く似合っていた。胸元に大胆にリボンを組み込んだデザインは彼女の華奢な肩をさらにそう見せたし、青みがかった白の生地も抜けるような肌の白さに見事に映える。
その他デコルテの露出具合やウエストの切り替え位置、ふんだんなボリュームのチュチュに沿って広がったスカートのシルエットといい何もかもがまるで琴子の為に誂えられたようであった。これを試したら最後、更に良いものは見つけるのはさぞかし困難とさえ思われる。

「琴子ちゃんはどう?」

「はい!あたしもこれがいいです」

紀子の問いかけに、琴子も先程までの借りてきた猫のような様子は無くにっこりと頷いた。その表情に紀子も山下も安心したように穏やかな目を向ける。

「それでは本日はここまでにしましょうか。お二方とも大変お疲れ様でした」

「いいえ、山下さんこそ、無理を言ってしまって申し訳ないわね」

「とんでもございません。こちらこそまた明日ご足労頂く事まことに恐れ入りますが、宜しくお願い致します」

こうして本日の打ち合わせは終了となり、山下と紀子は各々の手帳を開くと明日のスケジュールについて軽く確認を始める。


「・・・では明日は本日の続きからという事で、まずカクテルドレスをお選びしましょう。それが済みましたら、本日お決まりになりましたウェディングドレスと共に、ヘアメイクとアクセサリーを選びたいと思います。もしも既にご希望のスタイルがございましたら、雑誌・切抜き等どうぞご遠慮なくお持ち下さい。勿論、当方でも沢山ご用意させて頂きますので」

「分かったわ。その後は?」

「はい、それが済みましたら次は披露宴の席の再確認をさせて頂きます。問題が無ければ即、式次第と共に印刷所に発注致します。恐らく此処までで昼時になると思われますので、昼食はランチを兼ねてコースのご試食をお出しさせて頂きたいのですが如何でしょう」

「ええ。大丈夫よ」

「恐れ入ります。それでは手配させて頂きます。
 ご試食が終わりましたら30分程ご休憩を。そして午後からは引き出物のチェックの後――・・・」

繰り返すがまったく通常では考えられない打ち合わせのスピードだ。この全ての調整をつつがなく進める事はまさに至難の業である。
が、山下は見事な手腕で取り仕切っていった。それは彼女の仕事に対する日頃からの姿勢であったり、この結婚式がかのパンダイ社長子息の結婚式だから、くれぐれも粗相の無いようにと上からのお達しがあったというのは紛れもない事実なのだが、山下がこれだけ尽力する最大の理由は他にもあった。

「あの、あたしが出来る事は何がありますか?」

慌しく打ち合わせする自分と入江夫人の間で、思わず目を回してしまいそうになりながらも一生懸命自分がすべき事を探そうとする、このまだあどけなささえ残す可愛い新婦に山下はすっかり好感を抱いていたのだった。

「では、参列者の方々へのメッセージカードの作成などは可能でしょうか?なにぶん数が多いのと時間が差し迫っているので大変だと思いますし、印刷したものでも宜しいかとは存じますが・・・」

「いえ、大丈夫です。折角来て頂くんだもの。心をこめて書きますね」

こうした地味で根気のいる作業もしんどそうな顔は一切見せず、寧ろ喜んで引き受ける。
結婚式に夢を抱きつつも、現実を目の当たりにするとげんなりとした表情を見せる花嫁が少なくない中、琴子のこうした姿勢は山下のやる気を突き動かす大きな原動力となっていた。



「― それでは本日もお疲れ様でございました」

そうして明日のスケジュールの確認も終わると山下は背筋を伸ばし、折り目正しく頭を下げた。

「琴子さん、本日はお疲れになったでしょうから、どうぞごゆっくりお休み下さいませ」

「はい、ありがとうございます」

「奥様、大変恐れ入りますが明日も宜しくお願いします」

「こちらこそ。頼りにしているわ」

紀子も鷹揚に笑って答えると、彼女達は其々の持ち物をまとめ片付け始める。

とその時―。

「・・・すみません。あの、ひとついいですか?」

おずおずと尋ねる琴子の声に山下は手を止めた。紀子も羽織りかけたコートをそのままに振り返る。

「どうしたの?琴子ちゃん」

首を傾げる紀子に琴子は「はい、実はその・・・、ちょっと気になっていたんですけど・・・」と少しもじもじしながら答えた。

「なんでも仰いなさいな。ね?」

「はい。えーっと、その・・・あたし、入江くんの衣装はどうなってるのかなぁ?って、ちょっと気になちゃって。差し出がましいかとは思ったんですけど・・・」

「まさか!全然そんな事ないわ」

「そうですとも!」

紀子と山下は口々に否定する。

「けれどご心配には及びませんわ、琴子さん。新郎様のご衣裳は既にお選び頂いておりますよ」

さらに山下はそう言うと良く磨かれたガラスのテーブルに一冊のファイルを琴子に向けて開いて見せた。その中には白・黒・グレーのタキシードを其々着こなしたモデルの写真がスクラップされている。

「挙式用と披露宴用2着の計3着、こちらにてお母様より承っておりますが、本日新郎ご本人様にもご確認して頂くよう、このファイルをお持ち帰り頂く事になっております」

「そうなのよ、琴子ちゃん。どうせお兄ちゃんは何を着たって対して変わらないだろうし、ほんとは見せるまでもないと思ったんだけど。
 サイズについても去年のクリスマスパーティの時に採寸したから、今回は特に測りなおす必要もないはずだし」

それでもまぁ一応、確認くらいはねと笑う紀子は、実の息子の衣装については全く頓着がないらしい。
もっともオーソドックスなそれらは直樹が着ればどれもパーフェクトに着こなされるのは間違いなかった。正直、スクラップされているモデルも顔負けであるに違いない。
従って紀子の興味はともかく、直樹がわざわざ忙しい中を掻い潜ってこちらに必然性が無かったのは事実であろう。

「そ、そうだったんですか」

が、知らぬ間に決まっていた段取りに琴子は肩透かしを食らった感に少々間抜けな声を出した。実はせめて衣装合わせくらいは打ち合わせにノータッチの直樹も姿を見せてくれるのではないかと期待していたのだ。
けれどどうやらそれは空振りだったらしく、琴子は内心がっくりと肩を落とす。

とはいえこの無謀とも言える計画を遂行するために紀子が尽力しているのはよく分かっていたので気を取り直すと、

「じゃ、じゃあ早速今夜入江くんが帰ってきたらあたしから聞いてみます」

笑顔を作って紀子に伝えた。

「実はこの頃入江くんと殆どまともに顔さえ合わせてなくて。だからちょっと話したいなぁって思ってたんです」

紀子による突然の結婚式の日取りが発表されて以降、式の打ち合わせやエステに忙しい事に加えどこか直樹に遠慮を覚える琴子は、なかなか今までと同じように直樹に接する事が出来ていなかった。
なのでどうにか状況を打破したい思いがあった。

然し「そうねぇ・・・」と返事する紀子の反応は予想外に鈍く、

「でもお兄ちゃん、きっと今日もすごく遅いわよ?」

続けられた科白の言下には反対の意が汲み取れた。

「はい。でも全然平気です!メッセージカードを書きながら待てばいいですし」

食い下がってみたものの、やんわりと首を横に振られてしまう。

「そうは言ってもねぇ・・・?きっとタクシーで2時とかにならないと帰ってこないだろうし。
 だからメモでも付けてあの子の部屋に置いておけばいいのよ。どうせOKとかそんな返事が返ってくるだけなんだし。
 琴子ちゃんもメッセージ書き頑張ってくれるのは嬉しいけれど、明日も早いし、日付が変わる頃には眠った方がいいわ。何せ寝不足は美容の敵。花嫁の敵ですからね!」

「そ、そうですよね・・・!」

最後は力説してくる紀子に琴子は同調するより仕方ない。
本当は多少睡眠時間が削られようが構わないから直樹に会いたいが、紀子が自分を気遣ってくれているのは良く分かるので自己主張ばかりを通す訳にもいかなかった。
そしてなにより、そんな遅くに帰宅した直樹に話を持ちかけたらきっともっと一緒に居たくなり直樹を引き止めてしまうだろう。そうすれば貴重な直樹の休息の時間を奪ってしまう事になる。

が、それでも――、つい小さな溜息をつきたくなってしまうのは、今日という日にちの所為だった。

「・・・それにしても入江くんってすごいですよね」

琴子は感嘆の溜息を漏らしながら呟いた。

「もしあたしが入江くんと同じ立場だったら、今日くらいはちょっと早く帰ってゆっくりしたいって思うのに」

「あら、どうして?今日って何か特別な事あったかしら?」

「・・・え?いえその・・・、だって今日は入江くん、誕生日じゃないですか」

不思議そうに尋ねてくる紀子に聞き返すように答える。

そう、今日は11月12日だった。言わずもがな直樹の二十一歳の誕生日である。
これまで一緒に暮らしてきて、直樹が記念日的なものに無頓着なのは承知していたつもりだが、それにしても自分の誕生日だ。こんな年に一度の特別な日にまで、たった一人あの広い執務室に籠って仕事漬けなんて、自分ならばどれだけ嘆いてしまうだろうと琴子は考えてしまう。

「実はあたし、今日入江くんに誕生日プレゼント用意してたんです。その、今日は衣装合わせだしもしかしたら入江くん、こっちに来るんじゃなないかなぁ、ってちょっぴり思ってて。
 ・・・でもそれどころじゃないくらい忙しいんですよね!なのにあたしってばそういう事イマイチちゃんと分かってなくて」
 
そこまで話してから、なんと自分勝手な思いばかり抱いていたんだろうと思わず顔を赤らめる。

「えっと・・・だから入江くんにはまたあらためて渡しますね。すみません、詰らない事ばかり言って」

最後は恥ずかしそうに苦笑し、ぺこりと頭を下げた。

が、紀子はというとそんな琴子の言葉など全く耳に入っておらず、

「誕生日・・・」

唸るよに呟くと両手で頬を挟みひょ~~~と声にならない呻き声を出した。

「・・・そう、そうね。そう言えば今日は12日だったわ。
 なんてこと、私ったらこんなにカレンダーを確かめているのにお兄ちゃんの誕生日をすっかり忘れてたなんて!」

「あ・・・はは、そうでしたか」

未だどこか呆然と遠い目をしている紀子に、琴子は思わず苦笑いを浮かべた。
確かに毎年直樹の誕生日は本人の意向により盛大に祝われる事はなかったが、まさか息子の誕生日を失念していたとは―。

「お式の準備って本当に大変ですから・・・」

紀子と琴子の会話にそれまで口を挟む事がなかった山下もフォローしつつ琴子と似たような表情を浮かべている。


「うーーん、困ったわね」

紀子は腕組みをしつつ思案顔を見せた。

「思い出したからには何もしない訳にはいかないけれど・・・。でも今からじゃプレゼントを探すにはちょっと時間が無いし、だいいちあの子、今日中に家に帰って来ないわよね。
 あぁ、それにしてもお兄ちゃんってどうしてああなのかしら?自分の誕生日なんだからもっと何かアピールしてくれたっていいじゃないの」

もっとも良く考えればいい歳して自らの誕生日を主張してくる息子などあまり見たくなどないが、とはいえそのあまりに淡白な直樹の性質が紀子には少々不満だったりする。
どうにか直樹をあっと言わせるお祝いは出来ないものか――?

が、それから暫くして何やら閃いたらしい紀子は指を鳴らすと目をキラキラとさせた。

「そうだわ!んもう~、私ったらバカね。何もこんなに悩まなくたって、お兄ちゃんが今一番欲しいものなんて此処にちゃーんとあるじゃない!」

そう言って琴子を振り返り「ね?」とウインクする。

「・・・へ?此処に?」

「ふふ、そうですわね」
 
キョトンとする琴子の一方で、紀子の言わんとする事を瞬時に察知した山下はにっこりと意味深な笑顔を浮かべるとさてさてとばかりに立ち上がった。

「ではここは私も一役買って出てもよろしいですか?」

「まぁ、山下さんったら素敵!最高!」

キャーーと黄色い悲鳴をあげパチパチ手を叩く紀子。

「あの・・・、ですから一体どういう事でしょう――?」

然し此処にきても訳の分かっていない琴子は交互に二人に視線を向けるばかりである。
二人は一体どんなプレゼントを見つけ出したのだろう。
だいたい直樹の一番欲しいものなんて、どうして分かるのだろうか。自分にはさっぱり思い浮かばないというのに――。

が、首を傾げる琴子を尻目に二人は顔を見合わせるとその視線を琴子に向けにっこりと笑うと

「さぁ、それでは準備を始めましょう♪」

言うが早いか琴子の腕をとり、あっという間に再びドレッサーに座らせてしまうのだった。




今回も長い前置き話にお付き合い頂きありがとうございました(T_T)
というか話ちゃんと通じているのでしょうか・・・。
妄想を文章化するのって、今さらながら難しいです・・・!

と、それはともかくとして(←していいのか?)今さらながら思いましたが、このオリキャラの山下さんは紀子ママとあのスモークもくもくだとかゴンドラを一緒にノリノリで計画したのでしょうか?
うーーん・・・、「した」に一票(笑)

あ、それから次から入江くん出てきますから・・・!すみません。決して焦らすつもりはないんです~~っ。

良ければまたお付き合い・・・下さい!
10巻スキマ  コメント(4)  △ page top


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::拍手コメントありがとうございました
> 無記名様(11/07 19:59ご投稿)

こんにちは。このたびはコメントありがとうございました!
無記名様はemaさんの御本をお手にとられたのですね。私の作品も何度も読み返しえてくださったなんて本当に嬉しいです。ありがとうございました!

今回、再掲にあたりかなり改訂しましたが、こちらもお楽しみ頂けていたら嬉しいです^^
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::拍手コメントありがとうございました
> meg様

はじめまして!昨日はコメントありがとうございました^^
megさんはイタキスをお知りになって一年ほどなんですね。もうずっと前に連載されていた作品ですのに、今も尚こうしてファンを増やしているイタキスというお話はやはりすごいなぁとあらためて思います♪

本編を見ているほうだと仰って頂けると本当に嬉しいです!入江君にあいたいと思う琴子の気持ち、可愛いですよね。
拙い二次創作とは自覚していますが、当ブログはかなり原作にそった形でお話を書いていますので♪様々な隙間や続きもこれからも楽しんで頂けたら嬉しいです。
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::拍手コメントありがとうございました!
> YKママ様

こんにちは!
YKママ様も更新して間もなくの拍手コメントどうもありがとうございました!

いえいえ、唐突だなんて(^m^)
ありがとうございます♪YKママさんも「した」に一票投じて下さいますか♪
そうですね。吉田さんも山下さんもなんとまぁプロフェッショナルなことでしょうかwwどうやら二人の周りにはこんな人たちばかりが集まるようです(≧m≦)
ええ、ええ。入江くんの迷惑などまるで顧みない~~♪

そしてでも・・・という後のコメントはそうですね。ほんとどっちもどっち(笑)
私も心から琴子ちゃんに「がんばれ~~!」とエールを送りたいと思いますw
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::拍手コメントありがとうございました!
> 紀子ママ様

こんにちは!先程は更新して早速のコメントどうもありがとうございました!

原作の琴子ちゃんのドレス、とっても可愛いですよね(*^_^*)

しかし紀子ママさん!今回は貴重な情報をお教え頂きありがとうございます!
私、連載当時は別マは読んだ事がなくて、イタキスとの出会いは11巻のコミックが発行された頃だったんです。
なので読者アンケートなるものが存在した事は勿論、ミニドレスが採用されたはずというのは本当に今はじめて知りました!!うわ~~そうだったんですね~~!!
然しどうして?と思うとやはり直ぐに入江君が・・・なんて妄想をはじめてしまうのは、もうどうしょうもないですね、私(≧m≦)

紀子ママ、結婚式の準備に全力投球で息子さんの誕生日なんてすっかり頭の外に追いやってしまっていたようです(笑)でもなんというか、“らしい”ですよね(笑)
入江君が淡白なのはそうですよね。普通ですよね~~。
しかしローソクふーっを想像してニマニマしてしまう私もいます・・・(≧m≦)
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