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藤色の記憶 1/2

どこまで進む、私のいかれた脳内・・・。

「自制するライオン」で入江くんがどうして薄紫のベビードールを買ってやったのか、きちんと説明してほしいと挙手して下さった数名の皆様に捧げます(笑)

無駄に長くなったので前後編で。
前編は普通ですが後編進むにつれて入江くんが壊れていってます・・・。

・・・・・・・・・・・・・・



「・・・もう待ってられない。先に出る」

「ちょっとお兄ちゃん、あと数分くらい待ってあげなさいな。琴子ちゃーん、急いで~~お兄ちゃんが行っちゃいそうよ~~」

「あ~~待って~~!いま、今行くから~~っ」

朝の自宅玄関前でいつも繰り広げられる光景が今日もまた性懲りも無く繰り返される―。

二階のドアがバタンと閉まる音がしたと思えば、次は階段がダダダと騒がしくなった。

「ごめんなさ~いっ。出る前に一冊参考書入れ忘れてるの気付いて、でもそれが見つからなくて探してて――」

「言い訳はいい。もう出ないと電車に乗り遅れるから早く靴履けよ」

「う、うん」

「ったく、それにしてもよくもまぁ毎朝何かしら忘れ物するもんだ。前日のうちにきちんと準備くらいしておけよな」

いざとなれば走れるようにであろう、靴箱からフラットシューズを取り出し足を滑り込ませる琴子を眺めながらつい小言が吐いて出た。
すると「あら、それはお兄ちゃんにもきっと責任があるんじゃないのぉ?」と、間髪入れずお袋がいやらしく口端を歪める。

「お兄ちゃん。琴子ちゃんは今、看護科に転科してまだ間もないんだから、あまり無理させちゃダメよ~。夜はほどほどにね♪」

「お、お義母さん///」

「でももしも愛の結晶を授かったら、この私が全面的にフォローするから任せておいて頂戴。ふふ、素敵よね~~。大学生のパパとママなんて~~」

「はぁ?何血迷った事言ってんだ。ほら琴子、早く行くぞ」

「は、はーいっ。じゃ、じゃあお義母さん、いってきます」

早々にドアを開け外階段を下りる俺を追いかけるべく、琴子はお袋に決まり悪そうにそういうと小走りで追いついてきた。

「はいはい、いってらっしゃい。あ、お兄ちゃん琴子ちゃん、今晩は悪いけどよろしくね~~」

後ろからお袋の能天気な見送りの声が聞こえた。


自宅から駅までは緩やかな下り坂が続く。この道を一緒に歩く時、歩幅の違いか琴子はいつも俺の少し後ろをついて来る形になる。

「ま、参っちゃったよねぇ~、さっきは。お義母さんたら、あんな事」少しおどけた口調で話し掛けてくる琴子。

「・・・。」

「きっとあたしが最近いつも眠そうにしてるから勘違いしちゃったんだね」

「そうだな」

「ご、ごめんね・・・入江くん。毎晩遅くまで勉強みてもらっちゃって」

「別に。お前が看護科に転科するって決めた時点でこういう生活は予想してたから」

「そ、そっか」

見なくても赤面する姿が想像できる。きっと次に何を言えば良いのか考えあぐねてこめかみあたりを少し掻くような仕草でもしてるんだろう。

「で、今晩はどうする?」

話を振ると「えぇっ!?」と分かりやすく声がひっくり返る。

「何食べたい?そういやお前、こないだ雑誌見ながら『ここ行ってみたい~』って騒いでなかったっけ。どうせならそこにするか?」

「あ・・・」

漸く俺の質問の意味を理解したようで間抜けな声を出した。
そう、俺が訊ねたのは今晩の夕食の確認だった。裕樹の学校で三者懇談の後、食事も済ませてくるから俺と琴子は二人で別で済ませてきて欲しいと言ってきたのはお袋だった。
もっともそれは単なる口実である。
琴子が看護科転科の試験に合格したご褒美に出掛けたデート以来、二人で出掛けていない俺達を見かねての計らいだったのだ。
実際そろそろ少し息抜きした方がいいタイミングなのだと感じていた。勉強が苦手な琴子が授業や実習についていく為机に向う時間はとにかく長い。加えて主婦業もなるべく疎かにしたくないと頑張ろうとするのですっかり消耗しているのは明らかだった。たまにこれくらいの羽伸ばしに付き合ってやるくらい構わない。

「べ、ベリーニってお店!真鯛のアクアパッツァが食べたかったの!」

「ふーん、悪くないな。けど今から予約出来るかな」

「あ、あたし休憩時間にでも電話して聞いてみるよ!時間は何時くらいにしようか?19:00でいい?」

「ああ」

「えっと、電話番号・・・。検索したら出てくるかな」

早速鞄から携帯を取り出し調べようとするのでそれを奪った。

「後にしろよ。歩きながら調べたらお前は絶対転ぶ。それに今は電車に乗り遅れない事が先決だ」

「あ、そうだった!きゃ~~、あと5分で駅まで着かないと授業に間に合わない!」

時計を確認し叫ぶ琴子を振り返り携帯を返す。ったく、さっき俺に急かされた事もすっかり忘れるなんて、これだけの事でどれだけ舞い上がってるんだか。少し歩くペースを速める。

携帯を鞄に戻すと琴子は俺に追いつこうとまたパタパタと駆けてきた。

「じゃあ予約出来たら連絡するね」

「ああ」

「それにしてもまさかこんな早く行けるなんて嬉しいなぁ~~。しかも入江くんから誘ってくれるなんて~~」

「そういう事はちゃんと予約がとれてから言えよ」

「ふふ、はぁい♪」

やっと俺の隣に並ふとこちらを見上げて満面の笑みを浮かべる。
その顔を見ると、たまにこんな時間をとるのは琴子のためだけではないなと感じた。
改札を抜けホームに立つと、乗りたかった電車がちょうど滑り込んできた。



*****




そして夕方、俺は苦虫を噛み潰したような顔でその場所に腰を下ろしていた。
空を仰げばそこには薄紫の花がゆらゆらと揺れている。藤の花である。

斗南大学の敷地の隅の隅―。
ひっそりと設けられた藤棚の存在を知っている学生はまぁそれなりに居るだろう。気候のいい季節の休憩時間や突然の休講時に此処でのんびりする者も少なくない。
けれどこれから帰るという時にわざわざ訪れる奴らは殆ど居なかった。理由は先にいった通り、設置された場所の利便の悪さだ。通用門から此処の距離はちょっとした散歩コースになるといっても過言ではない。つまり帰りの待ち合わせにはまるで適さない。

「ったく、なのになんでこんな辺鄙なとこで」まるで非合理的な行為に思わずひとりごちた。
とふと看護科一日目の感想を尋ねたときの琴子の返事が脳裏を過ぎる。

『あらためて思うけど、あたし、スゴイ人と結婚しちゃったんだなぁ~って』

『あたし当分医学部行かないから』

この言葉がこんな長く尾を引くなんて、あの時は俺も想像していなかった。



琴子から携帯に電話が掛かってきたのは午後の講義が始まる約5分前だった。
琴子が店に電話を入れると、ベリーニの今日の予約席の枠は既に埋まってしまっていたらしい。
それでも早目に来店すればフリーの席につけるだろうとの事だった。幸い今日はお互い17:00には帰れる日である。直ぐに店に向かえば待たされる事もないだろう。

しかしその後、『じゃあ17:15に藤棚で待ち合わせね』と続けた琴子に俺は眉を顰めた。

『そんな所でわざわざ待ち合わせなくたって、授業が終わったら医学部に来ればいいだろ。隣なんだから』

すると電話口から琴子の『そんな事言わないで、ね?だって今のは藤の花が一番綺麗な時期じゃない?』というやたらとはしゃいだ声が返ってくる。

『せっかくだからデート気分を満喫したいんだもん。大学内で待ち合わせって素敵じゃない?ねぇ?』

いかにもあいつらしい理由を捏ねてくるが、然しその本当の思惑を俺は知っている。

『そういやお前、この頃医学部全く来なくなったよな。文学部に居た時の方がよっぽど足繁く通ってたんじゃねーの』

『あ、うん。そうね。今はあたしも忙しくてなかなか行けなくなっちゃって』

『ふ~ん、忙しくて、ねぇ・・・』

勘ぐるように言ってやると『あっ ごめんなさい。あたし次、実習なんだ。移動しなくちゃいけないからもう切るね』と言って一方的に通話を切り上げやがった。
プツっと音がする直前、『琴子~行くわよ~~』と呼ぶ癖のある声が聞こえてきた。たしか桔梗とかいう琴子と同じ班のオカマ(琴子がいうには、間違って男に生まれてしまった女らしい)だ。自称入江直樹私設ファンクラブ会長らしい。

『ったくしょうがない奴』

心の中で毒吐くと俺は携帯を閉じパンツのポケットにそれをつっこんだ。誰が何を言おうがどう思おうが俺の奥さんが琴子であるのに変わりはないのに。
看護科に転科して直ぐの頃、コイツらの目が怖くて自分が俺の妻だとはじめ言い出せなかった琴子は、結果医学部に顔を出すのを控えるようになった。
見かねた俺がばらすきっかけを作った後も、やれ飲み会を開けだとか俺と話するきっかけを作れと催促してくる友人達をかわすのに苦心してるらしい。今日も帰りに俺と待ち合わせをしていると知れたらくっついて来られるだとうと予想し、その対策としてこの場所を思いついたのだろう。

とにかくそれ以降、実習に入った琴子とは連絡を取ることが出来なかったため俺は、言われたままに藤棚の下で待つ事にしたのだった。それでもこうして夕暮れ時に美しく咲き乱れる藤の花を見上げれば、此処での待ち合わせも存外悪くないかもしれない気がした。

誰も居ないのをいい事にベンチに寝そべってみる。これも思いのほか気持ちよくて瞼を閉じてみた。
ああ、そういえばこのところ自分の勉強と琴子の勉強を見てやる生活で睡眠不足だったけ―。

押し寄せてくる睡眠欲に俺は俄かにさらわれた。





後編に続く
多分今日中にはUPできます。

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