::マンガ好き彼女的、彼と彼女の考察
たまには第三者目線のユルいスキマ話でも・・・。



・・・・・・・・・



その日の昼休み、急遽掲示板に貼り出された4限休講のお知らせに私の隣にいた有香は「ラッキー!」と軽く手を叩いて喜んだ。

「やったね、今日は5限とってないし、3限が終わったら帰れる~」

「あ~、そうだね」

「今日はバイトもないんだぁ。たまには真直ぐ帰ってのんびりするぞーっ」

「あ~、いいじゃん。それ」

対してまったくいつも通りのテンションで相槌を打つ私。

「なによ~、麻友はちっともテンション上がらないのね~?」

有香は最初不思議そうな顔をしてちらっと私に視線を寄越してきた。
けれど、私の肩にバッグと共に担がれているものに気付くと「あ、そっかー」と苦笑する。

「麻友はその後部活だもんね」

「そういうこと」

私は有香に向けてわざとそれの存在を強調するように肩を少し高く上げた。

「あれ、こないだまでWILSONのカバーじゃなかった?」

「新調したの。今度はシャラポアモデルのHEAD」

「ぷっ 前はウィリアムズモデルとか言ってなかった?変なところでミーハーだよね~麻友って」

「ふん、いいでしょ?別に」

「まぁいいけど?麻友のそういうトコ、私けっこう好きだし」



ニッと綺麗な歯並びを見せて有香は笑うと、「じゃあ、頑張ってね~」と3限の講義が終わるとさっさと荷物を纏め私に手を振って教室を後にした。
私も軽く口角を上げて応じる。

「よいしょっと」

テニスの着替えも入っているから結構重たいバッグ、そしてラケットケースを肩に引っ掛けると校舎を出て大学の敷地をゆったりとした足取りで歩いた。
途中立ち寄った事務所で部室の鍵貸与状況を調べる。
今日はまだ誰も受け取っていないようだったのでフォームに学籍番号と名前を入力し、職員の人から鍵を受け取った。

「ふふっ 私もけっこうラッキー・・・!」

こっそり笑うといそいそと部室に向かったのだった。






「さぁ、これから1時間ちょっと、フリータイムだ~♪」

私は兎にも角にも練習用の着替えを済ませると、誰が持ってきたのか、部室内に置かれたそれほど良いとは言えない座り心地の古いソファーに腰を下ろした。
その横にドサッとバッグを置くと中をごそごそと探る。
そしてまだ店の名前のシールがついたままの小さな紙の袋を取り出すと、無造作にシールを剥がし中身を取り出した。

「へへっ 家に帰ってからのお楽しみの予定だったけど、こういうシチュで読めるのもまたひとつの贅沢・・・♪」

にんまりと笑みが零れるのを禁じ得ない私の手にしているのは、この頃新しく読み始めた少女マンガ(しかも恐らく中学生がメインターゲット)の新刊だ。
ふとさっき有香に言われた言葉を思い出す。

『麻友のそういうトコ、私けっこう好きだし』

昔からの付き合いの有香は、私が無類の漫画好きな事もよく知っている。
少年誌系からOL向け(?)みたいなものまで、見境無く読むのが私のポリシーだ。
(え、何をそんな胸を張ってといわれても)




さてこの漫画。そんな私の視点から言えば、まさに少女マンガと言えるドリーミーで非現実的な話に違いなかった。
ヒロインは日本屈指の名家のお嬢様。美人でスタイル良し(胸でかし)。ついでに天然という鉄板さ。
そのお嬢様が庶民の男(だがめちゃくちゃイケメン)と家のしきたりに沿って18歳で初対面にも拘らずいきなり結婚。愛を深めていく。
しかしいい男と女には初っ端から当て馬がわんさか登場して・・・。
まだ4巻が出たところだというのに、めくるめく世界。

と、ざっくり書くとなんと元も子もない内容って感じなんだけど――。

まぁそれをいいなぁっと思わせるのが少女マンガの魔法なわけで。
要所要所で出てくる二人のいちゃこらがいい塩梅なんだな!これが!
はやく結ばれちゃえよ!と焦らされるのも萌えポイント~☆
そうそう、萌えといえば、普段は女なんて興味なしって感じの男がヒロインに対してはテンポ乱されまくってて、これがまた堪らないのよね~~。ムフフッ
今回も露天風呂でヒロインがバスタオル一枚で迫ってきてスイッチON!と思ったのに、ヒロインがあっという間にのぼせてお預け。
『マジかよ・・・』とがっくりする姿にもう私、ソファーに投げ出していた足をバタバタしちゃったわよ~~っ!


てな訳でホクホクと読了し、部室の壁時計に目をやると4限が終了するまであと30分ほどになっていた。
そうしたらちらほらと部員も此処へやってくるだろう。
5限は履修してない人の方が多いし。

でもとりあえずまだ暫し一人時間だ。私はペットボトルのお茶を一口飲むと再び漫画を開いた。いわゆる2周目。

とその時、コンコンとノックがし、続いて扉が開いた。

「あ・・・、麻友だったんだ」

「ああ、うん。今日4限休講になったからここで時間潰してた。そっちこそどうしたの?こんな中途半端な時間に」

私がそう訊き返したのは同じ学年の部員。相原琴子。

「あたしは課題で再提出しないといけないのがあって、さっきまで図書室に行ってたの」

琴子は恥ずかしそうに頭を掻きながらそう言うとロッカーを開け着替え始めた。

「ふーん、お疲れ」

私は手元に視線を戻し漫画を読むのを再開した。さっきと同じように静かな部室。けれどそれはやはりどこか違う空気。

やがてバタンとロッカーが閉められる音がした。
すると頭上が少し暗くなる。

「・・・あの、麻友。それ、もしかして新巻――?」

見上げるとそこにはいつのまに編んだのか、さっきまでただ垂らしていた長い髪をおさげをした琴子が居た。
その視線はあたしの手にした漫画にジィーッと注がれている。

「・・・え、もしかして琴子もこれ読んでるの?」

「・・・うんうん!もうドキドキしながら読んでるよ~~」

そう言って勢いよく頭を縦に何度も振る琴子は、私と違って真直ぐ夢見がちにこれを読んでいるのが伝わってきた。
思わずクスッと笑ってしまう。
だって、まぁなんというか・・・スペックは全然違うけど、この子もたいがい天然純粋培養って感じだもんなぁ。
だいいち置かれた身の上がまるで漫画なんだもの。

好きな男(イケメン・成績超優秀・スポーツ万能)と高校3年から同居。
一時期家を出たらしいけどあっという間に再同居決定(しかもウチの部の合宿中に強行突破)。
それぞれの両親は結婚前提でOKって感じで、あとは彼の気持ちだけ・・・という状況なんだから(ま、そこが一番重要なんだけど)。

「・・・あ~・・・、私さっき1回読み終わったし、琴子読む?」

「―え・・・っ いいの?いいの~~!?」

「いいよ・・・。そんなキラキラした目で見られて貸してあげないとか、私オニじゃない?」

「そ、そんなことないよ・・・!でも嬉しい!ありがと~~っ」

琴子は心底嬉しそうに笑うと私の隣にちょこんと座った。
手渡した漫画を開いて読み始めたその横顔は口角がほんのり上がっててなんだか子供みたいで可愛い。
私は携帯を取り出し適当に弄って時間を潰す事にする。


それから暫くして――。
ふと横に目をやると、琴子が傍目から見ても一目で分かるほど顔を真っにしているの分かった。

「なにそんな真っ赤になってるの?」

「――ひああっ///」

声を掛けると失礼なほど動揺した声を上げる。
その手はちょうど例のヒロインが迫っているシーン。

「なぁに~~?可愛いなぁ、その初心な反応?」

思わずからかいたい衝動に駆られて私は琴子をじぃーーっと見つめた。

「ああでも、この『こんなの理性飛ばない男なんていねーよ』ってのはリアルかもね~。琴子、1回入江くんに試してみたら?」

「い、入江くんに~~!?///」

「そう」私はにっこり笑って頷く。だって、ちょっと想像してみちゃったんだもん~~。
入江くんの焦る姿!ああやだ、萌え度がこの漫画の比じゃないわぁ~~っ!

「む、無理・・・だよ」

するとこれ以上真っ赤になれないってくらい真赤な顔をした琴子が首を振った。

「あはは、冗談だって――」

私は手を横に振って応える。
分かってるよ。琴子がそんな大胆な真似出来る様な性格じゃない事はもう十分分かってるもの―。

「だって、入江くん『色気の無い身体』って・・・。『同じ家に住んだからって襲う気にもなれない』って・・・///」

すると悲しそうな表情を浮かべて消え入りそうな声になる琴子。
その瞬間、私は全身が硬直するのが分かった――。


・・・は、はあ~~~~っ!!?


琴子、あんた入江くんにバスタオル一枚で誘ったの?
そんな純粋培養120%って顔して?
で、入江くんは入江くんでその鬼畜反応?

・・・ありえない~~!ありえなさすぎ~~!!


「・・・あ、あの、麻友・・・?」

「琴子、あんたもう入江くんやめて他に目を向けたら?」

私は私の反応にちょっと面食らってる感じの琴子の肩をむんずと掴み捲し立てた。

「だって、何気にウチの学部でも琴子の事結構タイプって男子いる―――」

その時カチャリと部室の扉が開く音がして、私と琴子はそちらに視線が行った。


「「い、入江くん――!?」」

「・・・なんだよ。うるさいな」

「だってだって、部活に出てくるなんて・・・///」

「来ちゃ悪いかよ?」

私も一応居るというのに、琴子と入江くん歯はまるでそこに2人きりで居るように話をし出す。
透明人間ってこんな気分かしら?
いや、この表現何か違うな・・・。

そうだ、この2人ってなんだかやっぱりこちらの立ち居地が傍観者になってしまうのよ。
そう、まるで少女マンガを見ているような――。


「お前このボールのカゴ出さないといけないんだろ?」

「あ、う、うん」

やがて入江くんにそう冷たい声で促された琴子は、うんしょとカゴを持ち上げると部室を出て行った。

「あ、私もそろそろコートに出ようかなぁ・・・」

もしかすると私の姿なんて入江くんには見えていないのかもしれないけれど、私は一応白々しくそう言うとソファーを立ち上がった。
だって、入江くんと2人きりってなんだか息が詰る。
実際この部室、なんだか気温下がった気がするもの・・・。


「余計な事あいつに吹き込むなよ」

と、背後からそんな一言が聞こえ、私は思わず振り返った。
けれど入江くんは私の方など全く見ていなくて――、やっぱり気のせいだったのかなと思う。

だけどもし気のせいがじゃなかったとしたら、それは一体あたしのどの科白を指して言ったのだろう――?





その日、結局入江くんは部活に出てくる事は無かった。
代わりに翌日は途中からやってきて、須藤さんをシングルスでコテンパに負かしてさっさと帰っていった。
入江くんのしたい事、気持ちって良く分からない。
琴子と2人でいる時は、どこか少女マンガの登場人物みたいなのになぁ―。





・・・そうして私が入江くんの気持ちを知る事になるのは、それからもっと後の事となる。
2人がやはり少女マンガのように結婚することになってから。

それからというもの、琴子の首筋にはこれまたおきまりのようにキスマークがついてたりする。
入江くんってそんなことする人だったのね・・・。
ムフフッ そんなところで私はまた一人萌えを感じバタバタとしてしまう。

でもそれはドリーミーなおとぎ話ではなく、現実に起こっている事なのだから更に面白いのだと思うのだ――。




あああ~~!私も恋がしたくなるっ!!





今日一気読みしたマンガをネタに一話書いてみました。
うーん、イマイチ?^^;まぁいっか。スラスラかけたし!

因みにこちら、萌えイラストが沢山あったのでそのうちそっちでも活用したいです♪

4巻スキマ  コメント(10)  △ page top


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::拍手コメント ありがとうございました
> kaotokuchan様

こんばんは。引き続きこちらにも拍手コメントありがとうございました。
わぁ~っkaotokuchanさんもこのコミックご存知だったのですね!
こちらはくっついてからがドラマですが、イリコトはくっつく前も後もドラマ♪

麻友の観察日記続編をご所望くださるなんて、ありがとうございます!まさかそんなお声を聞かせて頂けるとは思っていなかったので嬉しいです!
漫画好き設定だけに、色んな漫画のこのシチュ、みたいな感じで書けるような気もします(^m^)
なにかおススメの漫画がありましたら是非教えて下さいね♪
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::コメントありがとうございました
> みゆっち様

こんばんは。
も~お忙しいでしょうに、再びありがとうございます!
そんな、うざいなんて思うわけないじゃないですか!楽しく拝読いたしましたよ~♪

ふふっみゆっちさんもドリーミーで非現実的なお話好きですか?そんな気がしてましたww
このお話、気になられます?良かったらコミックレンタルか、漫画喫茶に行かれてみてください♪
え、パラレル?そんな、私には力不足もいいところですよ~~^^;見てみたい気はすっごくしますけど♪

入江くん、きっと立ち聞きしてたんだと思いますよ~(笑)
そもそもなんで部室にやってきたのかは不明ですけどね~。須藤さんのこと誤解してイライラしてたときだからつい気が付いたら足が向いてたのかも。
あ、青すぎる・・・っ!ww
女の子にさえ容赦なく威嚇して・・・。どんだけ了見狭いんだ~~(爆)(爆)

そして未来にはキスマークね(≧m≦)
麻友と一緒にじたばたしてくれてありがとう!私も一緒にとなりでジタバタするよ~っ!

こんなお話もノリノリで読んで下さって私の方こそありがとうございました!



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::コメントありがとうございました
> ねーさん様

こんばんは。
そうそう、女の子に対しても容赦なく牽制する入江くんって、これで無自覚とか笑いますよね!
そして部活に出るつもりもなかったのに、何かを察知して顔を出すこの野生の本能といったら!
まさになんて嗅覚なんだ(爆)(爆)

翌日に須藤さんをコテンパにするエピを持ってくるあたりもイイと思って頂けて光栄です^^
イラストも楽しみにして下さりありがとうございます♪どうぞまたお付き合いくださいね!
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::コメント ありがとうございました
> みゆっち様

こんばんは♪ふふふ、休憩ちうのご訪問ありがとうございます~~っ♪♪

「余計なこと吹き込むな」
おお!ドストライクきましたか!(≧▽≦)
たしかにまさに入江くんwwですよねっ。

勢いにまかせてUPしたので、色々言葉足らずだったりツッコミどころ満載なお話になっちゃいましたが、パワーチャージして頂けて良かったです^^
そのお言葉に私もまたパワーチャージさせて頂きましたよ!ありがとうございました☆
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::コメントありがとうございました
> 紀子ママ様

こんばんは。ふふっレンタルして下さったんですね~♪
やはり独占欲丸出しの王子様は鉄板ですよね!
いくつになってもやめられそうにないです(笑)ここに出てくる麻友は殆ど私そのもののような気がしますw
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::拍手 コメント ありがとうございました
> 玉子様

こんばんは。昨日は朝のお忙しい中一言ありがとうございました♪
おお!玉子さんはこの漫画ご存知なんですね!?もうもう、ばっちり正解です!
こちら、イラスト綺麗ですよね~♪
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