::Result of honesty

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2月14日、聖バレンタインデー。
琴子が入江家にやって来てからというもの、すっかり一大イベントと化したこの日。

しかし今年は琴子と直樹の事よりも、裕樹と好美の仲を進展させるべく紀子と琴子の画策のもと主催されたパーティーであった。
が、蓋を開ければ約束の時間を過ぎて一緒に現れた2人の様子は…ここ数日続いていたギスギスした雰囲気は消え、何処か仲睦まじさまで感じられた。


「すみません、おばさま。すっかり長居しちゃって…でも、おかげでセーター、出来上がりました」

「なに言ってるの、家は全然構わないのよ!それより最近はちっとも家に来てなかったのに凄いわ。ちゃんとお家で進めていたのね」

「ふふ、そうなんです」
紀子の言葉に好美がふわりと笑う。

「…じゃあ僕、好美を送ってくるから」

「「・・・・・・」」

予想外の裕樹の言葉に琴子と紀子が裕樹を見つめる。

元々琴子より計画的に作業を進めていた好美だったので、パーティーの途中にはセーターが完成した。
はにかみながら手渡す好美に、顔をを真っ赤にして小さな声で礼を言う裕樹。
それだけでも十分今までよりも進歩であった。
そのうえ、家まで好美を送り届けるよう紀子が言おうとする前に自らその旨を言葉に出して立ち上がった事に2人の間に起った何かを感じ取りニヤニヤする入江家の嫁姑。


「へ~え、裕樹にしては珍しく優しいじゃない」
琴子が裕樹の腕のあたりを肘で小突く。

「な、なんだよ。気もち悪いな…///こ、好美、ほら行くぞ!」
裕樹は顔を真っ赤にしてコートを着込み始めた。

「う、うん/// そ、それじゃ…お邪魔しました!」
好美も慌てて仕度を整えて裕樹を追いかけて入江家を後にした。



***

―22時。直樹と琴子の寝室



「裕樹、帰ってくるの遅かったねー。ねぇ入江君、ぜ~ったいあの2人、何かあったよね。ウフフフ・・・!」
なんとか右袖を編み終え身頃と繋ぎ合わせながら、琴子は顔をニヤニヤさせ直樹に話しかける。

「ったく、お前どんどんお袋に似てくるよな。そういうとこ」
直樹は呆れ顔で溜息をつく。

「だって首突っ込みたくもなるわよ。最近の裕樹、好美ちゃんにすごく意地悪だったじゃない?好美ちゃん泣いちゃって…本当に心配してたんだもの。それが今日は2人揃って家に来たし、なんだか流れる空気が今までと違っているんだから、そりゃ気になるってもんよ!」

「―お前って…偶に敏感だよな」

「た、偶にとは何よ、失礼ねっ、…あれ?…という事は、もしかして入江君、何か知ってるの!?」

「…っとに要らない所で敏感な奴」

「あ、やっぱり知ってるんだ!ね~教えてよー」

「煩いな、放っておいてやれよ」

「放っておけないから聞いてるんじゃない!」

「ったく、お前とお袋の方が同じ血が流れてるんじゃないか…?何があったかなんて知るわけないだろ。…ま、ここに反面教師が居るから、アイツなりに色々考えたんだろうな」

「ん?何の話?」

「自分の気持ちに正直になれ、ってな。
昨日、裕樹に聞かれたんだよ、琴子の何所を一体好きになったのかって。俺の理想とは正反対そうなお前を選んだ理由は何かって」

「せ、正反対とはなによっ失礼しちゃうわ!///あ、一目拾い忘れちゃったよ…!」
琴子は動揺しながら、間違った箇所の毛糸を解いて修正しようとする。

「出来上がるかな、それ」

「か、完成させてみせるわよ!もう少しなんだからっ。…ね、ねえそれより、入江君は…その質問にどう答えたの…?」

 ――つまり、それっていつから入江君が私の事好きになり始めたかって事だよね?
琴子は作業の手を止めて直樹を見つめる。

結婚してもう何年か経つというのに、琴子は何となくその話を聞きそびれていた。
直樹との付き合いはそれなりに長い。だから聞いたところではぐらかされるのは目に見えていたし、今、直樹が自分を好きな事は確かに感じられたので、あえて自分から聞こうとした事はなかった。
でも直樹の口からこの話が出たという事は、聞いてもいいという事だ。思い切って琴子は直樹に問いかけてみる。

直樹はふっと笑うと琴子から完成間近のセーターを取り上げる。そして編み目を確認して元に戻してやった。

「ほら。続けないと今日中に終わらないぞ」

「う、うん…」

 ――はぐらかされちゃった、か…
琴子はやはり聞かなければ良かったと思い、その落胆した様子を直樹に悟られぬ様セーターに視線を集中させる。
しかし人一倍喜怒哀楽の表現が豊かな琴子。そのうえ琴子の様子を悟るのに誰よりも長けている直樹には、琴子の落胆ぶりは余す事無く伝わってくる。

直樹は小さく息を吐き出すと、琴子に問いかけた。

「プロポーズした日の事、覚えてるか?」

「…え、う、うん。それって…あの日の事だよね…?」

 ――激しい雨の日だった。・・・あの瞬間までの、私の心のように…。

「じゃあ、あの時お前に言った言葉も忘れてない?」

「…勿論。忘れたりするわけ、ないよ」

頷きながら琴子はそっと目を瞑って、あの時の言葉を心の中で反芻する。


 『 俺以外の男、好きなんて言うな 』


――私と入江君との間でこれ以上の告白はないと思った。この言葉を忘れたりする事なんて、一生ないと誓える。

「…次の質問。初めてキスした時の事は?」

「…忘れるわけ無いじゃない。ファーストキスだもん、どんなものでも…私にとっては特別だよ」

「つまり、素直にいい思い出、とは言えないわけだよな」

「…拘っている訳ではないんだよ? ただ、あれは気まぐれっていうか…ちょっとした意地悪でだったんでしょ?」

琴子はずっと下を向いたまま、直樹の質問に答えていた。
セーターの最後の仕上げの為が半分、どんな顔をして直樹の顔を見れば良いのか分からなかったのが半分の理由だった。2人の間を暫し沈黙が流れた。


「―よし、出来上がった!ねえ入江君、どうかな。私にしては、わりと上手に出来たと思うんだけど…」

琴子は殊更明るい声をだして、直樹の身体にあてがう様にしてセーターを広げて見せる。

「うん、いい感じ。これなら入江君、着てくれ――」

話しかけた言葉は、直樹の唇で塞がれ宙に浮く。少し乾いていた二人の唇が潤うのにそう時間はかからなかった。

「…っはぁ・・////な、なに?…いきなり…」

漸く解放された唇から酸素を吸い込み、琴子は直樹を見上げる。

「何か一人で勝手に結論付けてるから、引き戻そうと思って」

「え……?」

「 確かに、当時は苛めてやりたい気分だったからだと思った」

「…ファーストキス?」

直樹は頷く。

「でも、思い返すとその奥にはあの日と同じ感情が流れていたんだよな」

「同じ気持ち…?」

「あの時、俺に言っただろ。…もう俺の事好きなの、やめるって」

「あ……」

「いつからかは分からない。…でも思っていたより、お前は早い段階で俺の心に入り込んでいたよ。ほんと怖い女だよな、フッ 今じゃすっかりマゾ体質だ」
直樹は口角を上げて琴子の頬を撫でる。

「ひど…」
瞬く間に頬を紅潮させながら、琴子はぷぅっと膨れる。その様子に直樹は余計に笑いながら、琴子の頭をポンポンとして言った。

「ほら、余計にバカそうに見えるぞ。…それにお前が初めに言ったんだぜ?」

「…?」

「刺激のある毎日を約束するって」
 
「あは、…そういえば言ったね。私には珍しい有言実行だわ」

「調子のいい奴…」

顔を見合わせてクスリと笑う。

「へへ、バレンタインに思いがけないプレゼント貰っちゃった」

「なにが」

「入江君の気持ち、教えてくれてありがとう。嬉しい」

琴子は幸せそうにふわりと笑った。こんな小さな事を心から喜ぶ琴子に、直樹の心は熱くなる。

「…そういえばさ、今年のバレンタインはチョコレートは用意しなかったのか?」

本当は知っている。いくら毎年『甘いものは食べない』と言っても、琴子は必ずそれを用意している。
そして、思った通りの反応を琴子が見せた。

「あ、実は用意してるの!クス、毎年食べないって言われているのにね、どうしても準備しちゃうんだ。…ホントは手作りしたかったんだけど、今年はセーター作りで手一杯で、チョコレートは買ったものなの…。でも、入江君でも食べられそうなビターなものを選んだんだよ!」

そう言ってクローゼットから隠していたらしい紙袋を取りだしてきた。

「はい、入江君!えっと…、大好きだから、ね?」
顔を紅くさせて渡す姿は、綴りの間違ったチョコレートを差し出した時と変わり事が無い。

「…耳にタコ」

「エヘヘ」

「お前の手作りじゃないなら味は期待できるかな」

「もぅ、チョコ自体の味はいつも失敗してないもん!」

「…食べさせてよ。甘すぎないんだろ?」

「あ、うん。そうなんだ。買う時に色々試食させてもらってね、決めたの」
包装紙を開いて箱を開けると12個の趣向を凝らしたチョコレートが鎮座していた。

「自分で好きなものを選んで入れてもらったから、買うだけなのに時間かかっちゃったんだ」

「お前…まさか全部味見た訳じゃないよな」

「え!?そ、そんなことする訳ないじゃない」

「…すげぇ根性。店の人、大迷惑だったろうな」

「//////」

どうやら図星だったらしい。直樹はクスリと口角を上げ琴子に尋ねる。

「どれが一番ビター?」

「えっとね…これ」
一つを指差す。こういう事の物覚えは長けている琴子である。

「ふぅん、じゃあこれ」

「はーい♪」
細い指でそれを摘んで直樹の口元に運ぶ。直樹はそれを口に含んだ。

「どうかな…?」

「…うん。これなら食えるな」

「よかった!でもそれ、ほんとに全然甘くないのよね。こんなのチョコじゃないって私は思ったんだけど」

「どうせ甘いのも中に入れてあるんだろ」

「…バレたかぁ。実はね、私の好きな物も入れたの。一緒に食べたかったから」

「お前らしいよ。どれがお前用?」

「フフ、これ♪」

琴子が指差した物を直樹は掴み、琴子の口元に持っていく。琴子は嬉しそうにそれを口に含んだ。その様子に、たちまち直樹のイタズラ心に火が付く。

「…俺へのプレゼントなんだろ?」

「―――んん…!!」
直樹は琴子の唇を奪い、歯列を割って舌で琴子の口内を侵す。チョコレートの溶ける様と琴子の身体から力が抜けていくのがシンクロする……


「…っぷはぁ。///も、な、何するのよ!私のチョコ…////」

「甘いな、これ」

「だから私専用だって――」

「同じ甘いなら、こっちの方がいいな」
そう言って琴子の唇にスゥっと指を這わせた。

2人の距離がまた0cmになろうとした時―――

コンコン

寝室の扉をノックする音で邪魔が入った。

「「・・・・・・はぁ・・」」

琴子から離れ、直樹は扉を開けた。

***


「…裕樹か。なんだ」

「あ、お兄ちゃん。お風呂空いたよ。入ってるかどうか分からなかったから」

「ああ、未だだった」

「そっか、じゃあ他は皆もう入ったみたいだからいつでも大丈夫だよ。 それから、…昨日はありがとう」

「お前は俺と違って素直だから。良かったな」

「//////」

「裕樹。折角だからもうひとつ、忠告させてもらおうか」

「な、何?」

「夫婦はな、これからが楽しい時間なんだよ。だからもう、寝室に居る時は訪ねてくるなよ」

「/////!!!!ごごご、ごめん―!!!」
裕樹は踵を返して自室に駆け込んでいった。


「も、もう!入江君~~、何て事言うのよーー!!」
琴子が慌てて直樹に駆け寄ってきた。

「あ、聞こえた?」

「聞こえるわよ!も~、明日裕樹に顔合わせ辛いじゃない!」

「そう?俺達夫婦だし、普通の事じゃん」

「入江君って羞恥心少ないよね…」

「プッ お前に言われたら終いだな。それから、裕樹にはああ言ったけど、実は風呂のタイミング的にはベストだったかな」

「//////」

「先入ってくる。…続きは後で」

直樹は琴子に囁き、その真っ赤に染まる耳を甘咬みした。
2人のバレンタインはまだまだこれから・・・・





一つ目UPですm(__)m

いつから、なんて直樹は特に気にした事は無いと思うんですが^_^;
コミックで裕樹に質問されて改めて考えて再確認した様子だったので、裕樹にだけじゃなくて、琴子にもちゃんと話してあげてほしいなぁと思い書きました☆


21巻スキマ  コメント(7)  △ page top


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コメント・拍手コメントありがとうございます!

繭様
こんにちは!甘甘でしたか♪っていうよりバカップル?(笑)でも、それを言うなら私の書いてるイリコトは全てバカップルだと思います(^^;
繭様がLast Night~で書いて欲しかったと仰っていた事、こちらの話で書きたかった為温存していました。結婚してから色々経験したからこそ直樹は正直に琴子に本音を話せるようになったのでは?と思ったのでコミック21巻のスキマに埋めさせていただきました^^
こちらのお話は、一応これで終わりのつもりです。続き・・・は気が向いたら(笑)
あと2つはまた別のバレンタインを書かせて頂きますね。

rinnn様
はじめまして、コメント下さってありがとうございます(^^)
お仕事中まで(笑)ありがとうございます!!
私も今お返事を会社で書いていたり(笑)
今のところ書いているお話は原作で私がもっと見たかったという場面の妄想です(^^;
読んでくださる方が『そうそう!そう思ってた!!』と仰って下さるのがとても嬉しいです。ありがとうございます!!
これからも妄想全開で書かせていただきます。たまにリクエストなども聞いてみたいと思っていますので、宜しくお願いします。

ルナルナ様
こんにちは!フフ、ありがとうございますwwそんな風に言っていただいて、私が踊りだしそうです(ココ会社!!アブナイアブナイww)
ルナルナ様もそう思いますか!?私もずっとそう思っていて、『Blessing to you』で、松本姉目線でも書いた事があるんですが、どうせなら入江君本人にきちんと琴子に伝えてあげてほしくって(^^)
10巻で入江君、唖然とした表情はそんな風におもってたんですかね~(笑)私はてっきり「コイツ調子に乗って・・・」みたいな意味だと思っていたんですが、ルナルナ様の考えの方がステキだな、と思いました♪
これからも糖分過多のお話書かせていただきます☆胸焼けご注意ですww

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::はじめまして
ぴくもん様

はじめまして。
いつも楽しいお話をありがとうございます。

最近このサイトの存在を知り、仕事中も夢中で読んでしまうくらいはまっています。
原作でははっきり書かれていなかった入江くんと琴子の大人の部分が読めて、すごくうれしいです。

原作のあの後どんな会話してたんだろうって思ってたところを題材にしたお話が多くて、確かにあの後の入江くんはこんな優しい言葉で琴子を愛したんだろうなって。今更ながら原作当時の二人の気持ちをもう一度再確認できてホント楽しんでいます。

これからもよろしくお願いします。
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::No title
コメントありがとうございます!

ともとも様
こんにちは、はじめまして!
コメント下さってありがとうございます(^^♪ありえないほど素直な入江君ばかりですが楽しんで頂けて嬉しいです!
勝手にバレンタイン企画、あと2つ違うお話書かせて頂きます☆よろしければ読んで頂けると嬉しいです。まず普通のを1つ目に。次はちょっとお馬鹿な予定^_^;3つ目は書けたらまた鍵付きの物など…書けるかな(>_<)
こちらこそどうぞ宜しくお願いします!!

りきまる様
こんにちは(^^)勝手にバレンタイン企画にコメント頂けて嬉しいです!
裕樹と好美ちゃんのカップルは初々しくてイリコトとは違う良さがありますよね。2人が上手くいったのは、裕樹が直樹に相談したからですよね!って間違っても裕樹は琴子に相談はしないか^_^;
誘う時の直樹は普段とは違って素直でリードしてくれていて私も大好きです。2人きりの時にこんな話してほしいな、の気持ちでこれからも妄想していきたいと思います^m^
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::No title
拍手ありがとうございます!

まあち様
こんにちは♪私の方こそ心温まるメッセージを下さってありがとうございます(*^_^*)
ほんとに全然ツンじゃない入江君ばかり書いてしまう私…こんな素直な直樹もありですか~?(苦笑)
台湾イタキス、気になる話だけをピックアップして観るという暴挙に出ています。さっきまでもず~っと観ていて、流石にちょっと疲れてしまいました^_^;
大きくなった裕樹も観ましたよ!あ~なんかこんな感じの子っていますよね~。もう、まあち様のコメントにバカ受けしてしまいました!!入江君はいませんよーー!!(大笑)
ホントまあち様、可愛すぎです(^^♪

藤夏様
こんにちは!さっき『何でも~』にコメントさせて頂きました!本当に素敵なお話ありがとうございました!!
やっぱり藤夏様も思っていらっしゃったんですね。「それは琴子に言ってあげて~!」と思ったんですよね。直樹は本人以外には結構言ってるんですよね。ああもどかしい!でもそこが良いんですけどね^m^
それと、こちらもそうですよねー?紀子ママと悦子ママの血が混じって琴子になるって感じですよね!アレ?パパハドコ?
好美ちゃんは紀子ママと琴子というとんでもないタッグで応援されるんだから怖いもの無しですね!いや、寧ろこわい!?
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