::スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 △ page top


::似て非なる僕ら。
たまには違うツンデレさんのお話をさくっと。

・・・・・・・・・




「えー、それでは裕樹くんと好美ちゃんの卒業を祝してカンパーイ!」

昼下がりのリビングにいかにもお調子者らしい琴子の音頭とともにグラスの重なる音が響く。

「ありがとうございます。こんな風にお祝いなんてしていただいて」

はにかんだような笑みを浮かべて琴子やママ、お兄ちゃんにペコッと頭を下げている好美。

「中学最後のいい思い出になります」

今日、斗南中学では卒業式が執り行われた。
事前にママと琴子に誘われていた好美は、その足で我が家にやって来てこうしてホームパーティに参加している。
この前家にやって来たのはたしか期末試験直前だったか。
僕が勉強を教えてやってるんだから、同じ高校に進めない筈がないって思い込んでたあの頃。

実際――、あいつが怪我したチビを助けようとさえしなければそれは現実になったんだと思う。
好美はどっちみちダメだったなんて言ってたけど、この僕がいけるって思ったんだ。僕の予測が見誤っていたなんてことはきっとない。

だからどうして試験に遅刻したのか、真実を知ったときのあの言いようの無い気持ちといったら・・・。今思い出してもまだ胸が少し疼く。
好美の将来を狂わせてしまった、って思った。
好美は4月から僕とは違う高校に通う。

『大学は・・・絶対に一緒のとこに行くぞ』

気がつけば好美を引き寄せてそう口にしてしまっていたのは、きっとその贖罪みたいな感情が先走ってしまったからだ。
僕がそうしたい、っていうのとはまた違うんだからな・・・っ。


・・・と、心の中で一体誰に言い訳をしているのかという僕の横ではママたちが姦しく喋り続けている。

「好美ちゃん、高校生になっても裕樹を見捨てずにいてやって頂戴ね。学校が違うと以前より会うのは難しいかもしれないけど、家にも遊びにきてね?」

「え、ええ。そう言って下さるならよろこんで」

ママが眉を下げ切羽詰った様子で言うものだから好美がやや気圧されたように返事する。
くそっ!これじゃあますます僕がこれからも好美と一緒に居たいって思っているみたいじゃないか!

「たしか第一女子高に決まったのよね?」

僕から話した覚えは無いから琴子伝いにでも聞いたらしい。

「あ、はい。そうなんです。来月から学校に女子しかいないってなんだか不思議な感じで」

たしかに、学校中の生徒が同性ばかりなのは何だか変な感じだよな。

「そうねぇ~。あたしもこれまでずっと共学だったから女子高の雰囲気って分かんないなぁ」

琴子もそう言って腕を組み、あれやこれやと想像をめぐらせるような顔をする。
数秒後ブルブルととんでもないと言わんばかりに首を横に振った。

「・・・ああ、やっぱりダメ。入江くんが居ない高校生活なんて考えるのもイヤッ!あたしの高校生活の思い出は全て入江くんに繋がるんだもの~~」

結局思考はそちらに向うらしい。

「や、やっぱり同じ学校じゃないって辛いですかね・・・?」

「そりゃそうよ。だってたとえクラスが離れていても同じ学校に居る限りは努力すれば入江くんの姿が見られたもの。どんなに女の子が入江くんと親しくなろうと近付いても入江くんが全く相手にしないのを目の当たりにしてどれだけホッとした事か。・・・まぁ、あたしも含めてだけど」

好美がうっ、と泣きそうな顔になるのにも気付かないでぽわ~んとした顔をしたかと思えば強張った顔を見せたりと忙しない。

「ったく、不安にさせてどーする」

お兄ちゃんが呆れた顔してぼそっと呟くので僕は「だよね?」と思わず同調した。

「ほんと思った事がすぐ口に出る奴だ。こっちの気も知らないで」溜息まじりに肩をすくめると、今度はポカンとした表情で僕を見てくる。

「何?」訊ねるとクスッと笑われた。

「悪いな、裕樹。琴子はああいう奴だから。好美ちゃんが不安にならないようにフォローはお前がしてやってくれよ?」

「――!!」

僕はそこで自分の失言にやっと気付いた。

「だ、誰があいつのご機嫌取りなんて!」

「ぷっ!そうだな。お前は俺と一緒で、どんな娘(こ)が近付いてきても相手にする気なんか無いんだもんなぁ」

お兄ちゃんはさらにツボに嵌ったようにクックックと小刻みに震えながら僕の反応を楽しんでいる。

「あれ?どうしたの入江くん?そんなに笑って」

「裕樹くんもなんだか顔赤いよ?」

漸くこちらの様子に気付いた琴子や好美達が僕とお兄ちゃんを不思議そうに見て小首を傾げた。

「なんでもないよ!」

僕はお兄ちゃんが口を挟む間を作らず答えた。
グラスのジュースをぐいっと一気飲みする。
傍でお兄ちゃんは涼しい顔をしてビールの入ったグラスを傾けたのだった。




それから暫くパーティの時間は比較的和やかに過ぎていった。
昔、琴子が教生として学校にやってきた時の思い出(失敗)話や、ママがやはりしっかり撮っていたビデオの上映会。
数ヶ月前に僕の部屋でしょっちゅう行なわれていた好美との勉強会の様子なんか何が面白くて観なきゃいけないんだって思う。
けど、こうして第三者的な視点で見るとなんだかそれは僕がもっと子供だったころに見てきた世界の再現だと感じずには居られないものだった。

『違う!違う、全然違う!なんでこの問題にこの公式もってくるんだ!?』

『え、えっとえっと・・・なんでかな?』

『こっちを使うんだよ!』

『あ、そっか♪』

怒鳴る僕とそれに対しまるで柳に風の好美の後姿が映っている。

『何だか・・・懐かしいわね~琴子ちゃん』

『はいいっ』

その傍からぼそぼそと、然しイキイキとした声音でママと琴子の声が入ってくる。

『あれは琴子ちゃんがこの家に来てまもない頃だったわねぇ。そうそう、こんな風に仲良さそうにお兄ちゃんに勉強見てもらってたのよね~』

『はいっ』

『あの頃から私には琴子ちゃんとお兄ちゃんがこうなるって分かっていたわ。この二人もそうなるのかしらね~』

『間違いないですよ。さっ あたしは好美ちゃんに受験のお守りつくってあげなきゃね』

そうだ。この琴子のとんでもない発言(琴子のお守りの効力は絶大だからな)にとうとうあの時僕は立ち上がったんだ。

『うるさいんだよ!あっちいってろっ!』

フレームアウトして聞こえてくる僕の怒声は我ながらお兄ちゃんの声によく似てきたものだと思う。

「ここ!ここよ~っ。裕樹くんのこの声、口調。入江くんとそっくり~♪」

琴子も申し合わせていたようにそう言うとうっとりと目を細めた。

「でもほんの少し高いのよね。そう、たしか高校の入学式の頃は入江くんもこんな声だった気がするわ」

「くだらない事ばっかお前は覚えてるんだな」

お兄ちゃんは心底そう思っているようで呆れ声で言った。

「くだらなくないもん。あたしにとって新入生挨拶の入江くんの姿をみた瞬間は運命の瞬間だったのよ!」

すると琴子も負けじと言い返す。

「あの時の入江くんはそれはもう、まるで壇上で後光がさしているようだったんだから。キラキラしていて眩しくて・・・。あぁ、でもそれは今でもある意味そうかもっ♪エヘへ」

「まぁ、琴子ちゃんったら今もお兄ちゃんがそんな風に見えてるのね!素敵っ!」

「あ・・・でもそれはあたしも一緒です」

鼻の穴を膨らまして喜ぶママの隣で好美が照れくさそうに同意している。
なんだよ。アイツ僕の事そんな風に見えてるんだ・・・。

「きゃ~~、二人ともなんて可愛いのかしら!」

ママは手を叩いて喜ぶと勢い良くこちらを振り返った。

「あなた達って本当に幸せ者ねっ♪」

「「そりゃどうも」」図らずも声が揃う僕とお兄ちゃん。
でもお兄ちゃんの落ち着いた声に比べて僕は少し上擦っていたような気がする。
それがなんか無性に恥ずかしくて僕は顔が熱くなるのを感じた。

「ね~、入江くんもあたしが輝いて見えることってある?ある?」

暢気に尋ねる琴子が今回ばかりは僕を救ってくれる。

「ないね」間髪入れずお兄ちゃんはきっぱり言い切るとふいとそっぽを向いた。

「ひどーい、入江くん」

「ないものはないんだから、しょうがないだろ」

「でもほら、人を好きって思った瞬間ってパァッとなるものじゃない?ほら、よく思い出してみて!入江くんにもあたしの後ろに光か花が見えた瞬間があったはず」

「ねーよ!ったく、お前はズカズカとおれの視界に入り込んできてそのまま居座ったんだろうがっ!」

「え~。それってなんだかちっともロマンチックじゃない~~」

「勝手に言ってろ。お前のお花畑の脳内になんか付き合ってられるか」

お兄ちゃんはそう言うと話はここまでとばかりに「そろそろいいだろ」と席を立った。

「好美ちゃん、またいつでも遊びにおいで」

「あ、は はいっ。直樹先生」

「待って~、入江くん~~。あ、直ぐに戻ってくるから、皆はそのままパーティ続けててね」

琴子は慌しくそう言うとお兄ちゃんを追って部屋から出て行った。
二人が居なくなったリビングはなんだか急に広く、そして静かになった感じがした。

「― あー・・・」何か言わなくては口を開く僕。

でもその横でママが「あ~ん!今の所もちゃんとビデオに撮っておきたかったわ~~っ」と悔しそうな声をあげるのでギョッとした。

「はぁ?なんでこんな痴話喧嘩まで記録に残しておきたいんだよ?」

「何言ってるの?裕樹ったらまだまだ子供なのね~」するとママが肩を竦めて答える。

「ねぇ?好美ちゃん」

「ふふ、そうですね。いつのまにか直樹先生の心の中に居座るなんて、琴子先生すごいなぁ。あたしもいつか、そんな風になれたらいいなぁ・・・」

「大丈夫、きっとなれるわ!」

「ありがとうございます。おば様」

ママと好美は唖然とする僕など気にも留めない様子でそう言いあうとしっかと手を握り合ったのだった。
僕はそれをただただ無言で見守るしかない。

もし、僕の胸の真ん中あたりはもう既に好美がドンと厚かましく居座っているといったら、二人はどんな顔をするんだろうか――。



そんな僕の心のうちなど知らずに人数が減ったままのパーティはまだ少し続くのだった。

そしてやがて好美が帰る時間、玄関に見送りに下りてきたお兄ちゃんがどこかほくそ笑んだ笑みを浮かべ、琴子が少しおとなしくなっていたのはまた別の話。
その様子に僕は気付かぬ振りをして、好美を送るためスニーカーに乱暴に足を入れたのだった。




いつか裕樹くんも兄のようになるのか・・・。
なって欲しいような、欲しくないような不思議な感じがします(笑)

最後に、今日で震災から3年。
勝手気ままに書いているだけのブログですが、癒されていますと被災された方からメッセージを頂いた事があります。
大したお話は今も当時も書けませんが、少しでもどなたかの励みになっていたら幸いだと思います。

19巻スキマ  コメント(10)  △ page top


<<prevhomenext>>
::Re: みゆっち様
こんばんは。先日はお疲れのところをコメントお寄せくださりありがとうございました。

ふふ、脇役フェチを自負されているみゆっちさんですが、今回のお話も気に入っていただき嬉しいです。
ごち!なんてありがとうございます^^

そうですね。好美ちゃんとの出会いははじめは予想していなかった子とだったでしょうね。
でもすっかり兄に続けと言わんばかりのこの状況。漫画でも直樹が「お前も同じような道すすむことになるんだな」言ってましたっけ(笑)
嫉妬全開になるのも愛ダダ漏れになるのは自明の理でしょう(^m^)
編集 △ page top
::Re: kaotokuchan様
先日はコメントありがとうございました。お返事が大変遅くなり申し訳ありません>_<

春らしいお話と仰って頂き嬉しいです。そうそう、いつもは兄夫婦の観察役を担う事が多い裕樹くんですが、今回は自身の気持ちを時には素直に、また時には隠し、そしてつっこんでみるという珍しいパターンだったかもしれません^^

仰るとおり裕樹くんと直樹とでは育った環境が兄弟ながら違うんですよね。直樹が母・紀子の過激な愛情の果てに孤独になったというのは奥深いコメントだと思いました。
こちら、ちょうど千夜夢さんのお話『サボテン』が更新された直後に読ませて頂いたコメントだったのでついイメージがリンクしてしまいました。もしかしたら同時期にお読み下さったのかなぁ?もしそうだとしたら、嬉しいなぁと思って読ませて頂きました。

それから琴子が愛情の示し方が不器用というのもたしかに、と思いました。とにかく直球なばかりの愛情は、ともすると寧ろ不信感を抱く人も少なくないような気がします。でも、直樹にはそれこそが必要なものだった。だからこそドタバタ劇が繰り広げられ、私たちは笑い、時に泣き、そして感動するんですよね^^

裕樹くんと好美ちゃんはごく自然に愛情を育んでいくというのは私も同感です。ええ、ええ、兄夫婦よりよほど落ち着いた雰囲気をそのうち纏うようになるんだと思います(笑)
編集 △ page top
::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
編集 △ page top
::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
編集 △ page top
::Re: 紀子ママ様
コメントありがとうございました^^

あはは!いつも兄夫婦から酷い目に遭う裕樹くんって!
いかにも子供子供している頃の裕樹くんもいいですが、この少し恋を知り始めたくらいの時期の視点もまた味があるものですよね(^m^)
まだまだ乙女心には疎いってほんとその通り!
(でも大人な関係については兄夫婦の所為ですっかり察するスキルが身についてしまってるあたり・・・爆)
でも好美ちゃんは大人しいながらも芯のある子で、二人でこれから少しずつ成長していくんですよね^^

琴子ちゃんはこの二人のことを心から応援しているんだけど、なにせ入江くん中心に世界が出来てるからすぐこんな事態に(^^;)
でもそう、裕樹くん、呆れながらも許してあげてるんですよね~。いい義姉弟になったものです♪
編集 △ page top
::Re: たまち様
こちらこそコメントありがとうございました^^

そうそう、似てるけどやっぱり違~う!なんですよね(笑)
仰る通り、裕樹くんの方が素直で人間らしい(爆)のですが、なぜか直樹の影に隠れてしまう存在。。。
人ってどうしても『いい人』より『アクの強い人』に注目しがちですから^^;
でもちゃんと見てくれている人はいるんですよね。好美ちゃんなんてまさにそんな女の子なのかもしれませんよね。

そうですね。パーティーの首謀者は間違いなく紀子でしょう。もちろん琴子もノリノリなんでしょうね(煮たもの同士 笑)
あはは!たしかに!琴子の失言のフォローを裕樹くんに丸投げする入江くんは大人になりましたよね!
裕樹くんは入江くんのようなKISS+αのスキルはないでしょうが(^^;)、不器用に好美ちゃんをフォローするんだろうなぁと思います。
照れ屋で不器用な二人は見ていて微笑ましいですね^^

最後に癒されたり励まされるなんてありがとうございます。勿体無いくらいのお言葉です!
私こそご褒美のように戴けるコメントに次への活力を頂いております♪
編集 △ page top
::Re: ねーさん様
コメントありがとうございました^^

そうなんですね~、ねーさんさんも裕樹くんを書こうとなさっていたんですね♪
しっくりいかないですか。書くのは苦手ってキャラは少なからずありますもんね。私はどっちかと言えば裕樹くんは得意かもしれません(笑)

いえいえ、謝らないで下さいね。文章抜粋した方がコメントしやすい時もありますもんね^^
そして今回抜き出して頂いた箇所は、今回このお話を書こうと思ったきっかけです♪これを入江くんに言わせたいが為に何個かパターンを出して採用したのがこちらで。
(なんで敢えてこのパターン採用したかは我ながら不明ですがw)

拍手コメントも再度お寄せ下さりありがとうございました。このお話とても気に入って下さったのが伝わってきて嬉しかったです♪
そうそう、好美ちゃんは琴子よりだいぶおとなしい感じですよね^^
編集 △ page top
::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
編集 △ page top
::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
編集 △ page top
::管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
編集 △ page top
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

| home |
Copyright © 2017 Swinging Heart , All rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。