::The Gift of the Magi ~ I send you the bouquet with love.~【下】 3/3 (了)
The Gift of the Magi 琴子Ver.の最終話です。

chan-BBさんの書いて下さっている直樹Ver.はこちらよりとべます。


The Gift of the Magi ~She is always walking ahead. ~3/3(終)




―― 2日後 入江君の旅立ちの日・・・・


あの決心した日の翌日と同じように、私は今日も目覚ましがなる前に目が覚めた。


今朝も私は入江君の腕に抱かれて眠っていた。2人の間をさえぎる布など何も無い、生まれたままの姿で・・・。

「昨日あんなにすぐに沈没するとは思わなかったよ」
って・・・。不適な笑みを浮かべた入江君に、昨夜も私は翻弄された。今日入江君は出発だし、私も見送りに行くんだけど―― ちょっと身体がだるいよ・・・。


私の身体にはこの2日で入江君につけられた花が咲き乱れている。
少し薄くなっているものとまだ鮮やかな赤―― この花はあと何日ここにあるのだろうか。
入江君の肌にも、同じように花が咲き乱れている。

― やっぱり、、抱き枕買っておいたほうが良かったんじゃない?入江君・・・?

私はクスっと微笑ってしまう。
夜の激しさとは打って変わって、今私の目の前ですやすや眠るこの穏やかな表情はなんて優しいんだろう。

私はその頬に入江君が起きないようにそっとキスするとベッドから抜け出す。カーテンを捲ると、夜が明け始めた空は白っぽい色をしていた 。


デスクの上にはアルバムと、昨日私が送った写真立ての包みが置かれている。包みには青いリボンがかけられていた。
リボンなんていらないって 入江君は言ったけど、どうしてもってかけてもらったの。
神戸に着いた入江君が、部屋に入って一番にこの包みのリボンを解くところを想像すると、なんだか温かい気持ちになれるから―


下に降りた私は、おかあさんと一緒に朝食の準備と入江君のお弁当作りをする。
今日こそは殻が入らないようにと気を付けて卵を割ったけれど、結局4回目のチャレンジでやっと成功した。殻入りの卵はその後カルシウムたっぷりのオムレツとなり、裕樹くんの朝ご飯となった。
唐揚げや海老フライはおかあさんの万全の下準備のお陰で、なんとか上手く揚げられた。
ウインナーは可愛くタコへ変身している。
プチトマトやアスパラガスで綺麗な色合いを用意し、私は出来上がったお弁当を丁寧にナフキンで包んだ。


「おはよう」

ジーンズとニットに着替えた入江君が部屋に入ってきた。時計を見ると出発まであと2時間。
今日、新幹線のホームまで見送りをするのは私だけだ。

「おはよう、入江君」

私は返事をすると、早速コーヒーの準備をした。
お弁当を作ってあげることも、こうしてコーヒーを淹れることも―― これで…暫くは最後になる。




* * * * * *


旅立つ人の行き交う東京駅は、その人の数の分だけのドラマがあり、プラットホームでけたたましくなる発車の警笛音がそれを助長するかのような不思議な空間だ。

その音が改札口外側からでも聞こえてきて、さっきまでいつもと同じように話をしていた私たちも、どちらからともなく口数が減っていく。

何時の間に手配していたのか、入江君はポケットから指定席の切符を取り出す。私は券売機で入場券を買って2人改札口を通った。

「入江君、その切符だいぶ前に買ってたの?ズボンのポケットにでも入れっぱなしだった?」

入江君の手にした乗車券を見て、私は思わず尋ねた。乗車券は妙に丸まっていた。

「ん?…ああ。お前って時々、妙な所に気がつくよな」

入江君はそう言って何か思い出したように少し笑い、ボストンバッグのショルダーを肩にかけ直した。

ホームに新幹線が滑り込んできた。停車駅を知らせるアナウンスが幾度と繰り返される。

「じゃあな」

こちらに振り向いた入江君が微かに笑う。

「う、…うん。つ、着いたら連絡してね……」

いよいよこの時が来てしまった。覚悟していたはずなのに、今心臓はぎゅうっと縮んで鷲掴みにされているかのよう。
私は自分に発破をかけるように、矢継ぎ早に入江君に話しかける。



「お、お弁当…!」

「中で食うよ」

「岡山の次だからねっ 寝過ごさないで…」

「新大阪だろ。… もう行ってもいいか」

「う…うん……」

そう言いながらも私の手は入江君のブルゾンの裾を放せないでいる。

「お、お別れのキス、してもいーよ」

ちょっと恥ずかしいけど言ってみたら、入江君は呆れて何も言えないようだった。

「も、もうっ 冗談だ――」

慌てて打ち消そうとしたら、バーカと小さな囁きと同時に一瞬唇が触れた。


「あ……」

「じゃあな。 勉強、がんばれよ」

そう言って、入江君はとうとう車内に足を踏み入れた。同時に扉が閉まる。

「い、入江君!写真――!!」

入江君は微かに笑って頷いた。


―― ホームに居られる方は、白線の内側に下がって・・・・


アナウンスが遠くで聞こえる。窓の向こう側から入江に下がれと促され、私は前を向いたまま足だけを後ろに動かした。

車体がゆっくりと動き出す。
私は糸で引っ張られるかのようにそれを追いかける。

「入江君…!」


私の声は入江君に届いているのだろうか。車体は段々と加速し、直ぐに私は追い付けなくなった。

「ガンバレ!入江君――!! ……入江君…」

耳をひき裂くかのような轟音と共に、新幹線はあっという間に視界から消えていった。
騒がしいはずのプラットホームも、今の私には無音のように感じる。
入江君は、行ってしまった…

私は溢れ出てくる涙を強引にブルゾンの袖で拭う。
これは、悲しい別れじゃない。未来への入り口なんだ――


― ガンバレ 入江君

― ガンバレ 琴子

― ガンバレ 私たち ・・・・



* * * * * * *


「ただいま戻りました」

入江家に帰った私は、リビングにいるおかあさんに声をかける。

「おかえりなさい、琴子ちゃん。お兄ちゃん、行っちゃったわね…」

おかあさんは私に近づくと私の髪を撫でてくれた。こういう仕草は入江君とそっくりで、改めて2人は親子だなぁと不意に感じた。


「ありがとうね、琴子ちゃん」

「え…?」

「お兄ちゃんの気持ちをちゃんと受け止めてくれて。きっと、、その分の成果を上げてくるはずよ」

おかあさんの目にも涙が溢れていた。その姿に、私は大きく頷いて返事をする。

「はい…っ。私も負けずに頑張らないと…」

「そうね…。きっと大丈夫よ、琴子ちゃんなら…!」

おかあさんは指で涙を押さえ、何度も頷く。…と、何かを思い出したように右拳で左手をポンと打った。

「そうそう、琴子ちゃん、もうお部屋には飾ったの?後で私にも、もう一度見せてちょうだいね」

「…? な、なんの事ですか?」

にっこり笑うおかあさんの言う事の意味が分からず、戸惑って聞きかえすと、おかあさんは暫く無言になり、そしてニヤリと笑ってこう言った。

「まったく…。ほんと素直じゃないんだから。琴子ちゃん、お部屋に行ってごらんなさいな」



― 笑い方までそっくり…。やっぱり、親子なんだな……

あらためてそんな事を思いながら、私はおかあさんに促されるまま2階へ上がり、寝室の扉に手をかける。
広い室内―。これから1年、私は此処で一人で眠り起きるのかと思うと、まだこの部屋にはあまり足を踏み入れたくなかった。

― こんな弱音を吐いていてはダメだ・・・

私は臆病な心を払拭するように首を振ると、花瓶に視線を移した。2日経った今も、花の色は褪せることなく瑞々しい。

「やっぱり綺麗…」

私はゆっくりと花に近付いた。その隣にはアルバムが置いてある。
そしてもう一つ…何か包みが置かれている事に気がついた。


「おかあさん…、また何かプレゼントくれたのかな…?」

さっきのおかあさんの言葉を思い出しながら、私はその包みを手に取るとゆっくりとリボンを解き包装紙を剥した。…見覚えのある包装紙。
なぜならそれは、昨日入江君と選んだ写真立てを買ったお店と同じ包装紙だったから。
だけどこれは、それとは違うはず……

「―― ?」

出てきた品に私は言葉を失い、そして慌ててもう一度包みを確認する。
今解いたリボンの色は赤だった。…やはり、これは私が入江君に贈った品物では無い。
だって、昨日私が選んだリボンは青色だ。
でも今、ここにあるのは間違いなく、2人で選んだ写真立て――


「…… あっ…!」

不意に閃き、私は慌ててアルバムのページを捲る。そしてある場所で手を止めた。
そのページのポケットには、入江君が抜き取ったはずの写真が、きちんと収められていた。
この写真は昨日写真立てを買った際、セットしてから包んでもらったので、本来ならば空っぽであるはず。なのに、ここに収まっているという事はつまり…

― 入江君が用意してくれたんだ。

私はその写真をもう一度じっくりと見つめた。

その写真の中に写った私たちは、少しぎこちない笑顔を浮かべている。だけど…その目は優しく前を向いていた。


もしもこれから辛い事があっても、この写真をみればきっと頑張れる気がする。
そして…、 いつかこの写真も懐かしい一枚へと変化していくのだろう。

私の心の中に暖かい風が舞い込んだ――


まだ、入江君は神戸に着いていないだろう。だけど部屋に着いたなら、きっと直ぐに飾ってくれる。そんな気がする。私は一足先に部屋に飾ろう。そう思ってアルバムから写真を抜き出す……



「 え…?」

私は写真の裏側を見て、驚きの声をあげた。
そこには、何度と見た愛おしい筆跡で言葉がしたためられている――


私はそのメッセージにまた涙が込み上げてきて、届かない場所に向かって返事をする。
きっと、心で通じ合っているから――
「入江君、― 必ず、必ず追いつくから…!」


写真に涙が零れ落ち、文字が少し滲んだ。
だけど思いは間違いなくここに存在する。そして、道はいつも拡がっていく。

入江君…、入江君が贈ってくれた言葉、私一生わすれないから。
不慣れな発音で、私はその言葉を読み上げた。




「――― More haste, less speed. The road is sure to cross each other. 」
          ~ 急がば回れ。道は必ず交錯する ~




色とりどりの花束と、光の加減で色んな表情を見せるピンクゴールドのフレームとは、計算したつもりはないけれど、確かに良く合っていた。
日当たりの良い寝室の傍らでこれらは、同じ空の下光を受けて乱反射するであろうもう一つの写真立てに呼応するように、さんさんと光をを浴びて輝いている―――










これにて琴子ver.完了です。
此処まで読んで下さった方、ありがとうございました!

そして…、chan-BBさんの最大の感謝を!!!
あらためて、あとがきを書かせて頂きたいと思います(*^_^*)




19巻スキマ  コメント(1)  △ page top


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::拍手コメントありがとうございました
chan-BB様
こんばんは。この度は本当にお世話になりました。得難い経験をさせて頂いた事感謝します。
3/3も、あとがきもchan-BBさんが一番乗りでコメントをくださいました(^^)v
夜桜もそろそろ終わりだなぁと思い、もっとポカポカ暖かいテンプレにしようと思ったんです♪ご反応下さってありがとうございます!
私もupするまでの間に、もう一度最初から最後まで読んだのですが、本当に結構なボリュームですよね。その中で、私も最終回でどのくらいchan-BBさんのお話を拾おうか考えたのですが、シンプルにフォトフレームと抱き枕(ピンクww(^^♪)を拾わせていただきました。
本当に、最後の最後までこうした作業をお互いにしていたって、なんだか嬉しいですよねww
私の方こそchan-BBさんの直樹に触発されてお話を進める事ができました。まさに伴走者でした!ありがとうございましたm(__)m


藤夏様
こんばんは。あとがきと合わせて本当に沢山の思いを書き記して下さってありがとうございます!すっごく感激して何度も何度も読み返させて頂きました(*^_^*)こちらには3/3のお返事をさせていただきますね。自分で書いたものとchan-BBさんの書いて下さったもの、私も読み返したのですが相当なボリュームでした。いつもupする毎に感想を下さる藤夏さんの存在、とっても励みになっていました。琴子の気持ちが浸透していたって凄く嬉しいです。ちょっとシリアスすぎたかな、とは思うんですけどね(^_^;)
紀子ママも今回はメチャ大人な対応をさせてしまいました。相変わらずの電光石火(笑!)の仕事ぶりでしたが(^^)v紀子ママって、彼女が居たから2人の中がなかなか進展しなかったとも考えられるし、居たからこそ上手くいった気もするかなりの重要人物ですよね!!私の創作の中でも、『困った時の紀子ママ』って位置づけです♪
写真のメッセージは連載当初からchan-BBさんと話合って決めたんですよ~。ご反応下さってありがとうございます(^^)

りきまる様
こんばんは。卒業式から2日後に直樹が出発するなら、きっと残り少ない時間を惜しむように過ごすかなぁと思って少しだけ触れさせて頂きました(^^)
ホームで別れるシーンは原作でも切なく描かれていますよね。その雰囲気を壊す事なく書けたかな…と思っていたのですが、りきまるさんのコメントで大丈夫だったなかな、と安心できました。琴子が一人自宅に帰った後、どんな風に過ごしたのだろうというのは、私もずっと考えていたんです。今回の話でその辺も書く事が出来て、私も良かったです。
直樹からのメッセージも、この話の中でchan-BBさんと話し合って考えた気合いの入った部分です。このメッセージを糧に琴子も受験勉強に励んだと思って下さって嬉しいです。(でも、直ぐにこっそり(?)会いに行っちゃうんですけどね(笑))
こちらこそ連載中に頂いたコメントにとっても励まされました。本当にありがとうございました!!

繭様
こんばんは。9時に直ぐ読んで下さった事、そして何度も読み返して下さった事、本当にありがとうございます。そして、そんなに真剣に読んで頂いた事、言葉で言い表せない程感謝しています。いつも繭さんのコメントに逆に私が気付かされたりすることが沢山ありました。
本当に、ひとつの話なんですがやはり書き手の個性が進むにつれて出てきた作品でした。どうしてこんな感じでしか書けないかなーとか、時々落ち込みながら書いていたんですが、繭さんの仰って下さった事を、それが私の個性と思うことにします!
確かに…直接渡したら琴子の弾ける笑顔を見る事が出来るのに、そうなしない直樹(笑)言われてみればそうだな~と思いました!でも、その発想まるでなかったです(^_^;)それを直樹らしいと仰っていただけて良かったです!2人の愛情の大きさは多分良い勝負なんでしょうが、示し方がまるで違うのがイタキスの面白いところですよね~。『賢者の贈り物』に賛同して下さってほっとしました。なんとかテーマを貫けた、そんな気がします(^^)そうそう、原作の新幹線な中で車窓を見つめている直樹の表情、何とも言えない素敵な表情ですよね!
P.S. あとがきへのコメントもありがとうございます。そちらのお礼も改めて書かせて頂きます!


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