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::本音
配布元…kara no kiss 様
50音・26文字お題よりお借りしています。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


― 琴子、お前 妊娠してないか…?


2人は今、あの日と同じように土屋産婦人科の待合室で診察の順番を待っている。
あの日と同じように緊張した面持ちで、鞄の取っ手を握りしめている琴子をチラリと見て、直樹はそれをひょいと取り上げると自分の膝の上に置いた。


「緊張してるのか?」

「え、あ…うん。少し、ね…」

「多分もうすぐ呼ばれるから、リラックスしろよ」

「そ、そうね。これからエコー撮るんだもんね。…ね、ねぇ入江君」

「何?」

「あの、あのね――」

膝の上に乗せた両手をグッと握り、話を切り出そうとした琴子の言葉を遮るように、「入江琴子さん、2番にお入りください」とアナウンスが流れた。

「…あとで聞くよ。ほら、行って来い」

「う、うん。分かった…」


診察室に入っていく琴子の姿が消え、扉が閉まると直樹は息を静かに吐き出し、先程まで琴子が座っていた場所に彼女の鞄を置いて膝の上で手を組む。

斗南病院で内科のヘルプをしている最中に気を失った琴子をタクシーで連れて帰り、彼女が目を覚めるまでも冷静に今までの症状を鑑みたが、今一度反芻してみる。そして、改めて自分の予想は当たっているだろうという結論に至る。
つまり、…これから自分は父親になるのだ。
組んでいた手を解いて右手で口元を覆う。― 今まで味わったことの無い不思議な感覚に捉われた。

待合室の時計を見ると、琴子が診察室に入って15分が経過していた。

そろそろか…思ったその時扉が開き、琴子が出てきた。その横顔は穏やかな顔をしている。
診察室のブラインドからすり抜けた西日が琴子の背中を赤く染めている。
琴子はゆっくり直樹に歩み寄ると、その前に立った。直樹は琴子を見上げる。
琴子はふわりと微笑むと告げた 。

「入江君、…8週目だって――」

「…… そうか」

― 時々、やっぱりこいつには敵わないと思う。

直樹は立ち上がりるとそっと琴子の頭を撫で、そして同じように穏やかに微笑んだ。



病院を出て、タクシー乗り場へ足を進めようとする直樹のコートを琴子はぐっと掴んで止める。

「待って。あのね、ちょっと本屋に寄ってから帰りたいんだけど」

「…今じゃなきゃダメなのか?」

普段は本なんて殆ど読まないというのに。
出来る事なら今日は少しでも早く帰って休ませたいと願う直樹の気持ちを逆行するように、琴子は大きく頷く。

「うん。どうしても今、買っておきたいの」

言うが早いか、すぐその先に見える書店にいそいそと歩いて入っていく。その歩き様は軽快で、彼女の中に新しい生命が宿っているとは誰も思わないだろうと直樹は苦笑した。


* * * * * * * 


「おかあさんたち、悔しがっていたね」

琴子の妊娠の報告を聞いてすっかり興奮した家族を一喝して自室で療養させ、漸く静かになった2人の寝室。
パジャマに着替えた琴子がベッドにもぐりこみながら直樹に話しかける。

「当然だろ。インフルエンザが完治してない人間を妊婦に近付けられる訳ないのは、いくらお袋でも分かってるさ。どうせあと2、3日したらパーティーとか言いだすんだろ」

「フフ、そうかも」

琴子はクスリと笑うと布団から手を出し、その腕を伸ばした。

「ね、入江君。手、繋いで?」

先程琴子が買った本を紙袋から取り出してパラパラと捲っていた直樹は、パタンとそれを閉じて琴子の枕もとに腰掛けるとその手を握る。

「お前、今さらこんなの読まなくても、看護過程で全部習っただろ?」

そう言ってもう片方の手に持っていたその雑誌をサイドボードにポンと放った。その雑誌の表紙にはたまごのキャラクターがにっこり笑っている絵が描かれている。

「うん、でも私の事だから色々忘れているだろうし、体験談とか読んでみたかったの。それにね… 」

一旦言葉を区切った琴子はむくりと起き上がって、まだぺたんこのお腹にてをあてて微笑んだ。

「― これからママになるんだな、って実感できるじゃない?」

「・・・・・・」

直樹は琴子をジッと見つめる。

― 何言ってるんだか。

直樹は可笑しくなりふっと笑った。


「な、何?また形から入ってとか思ってる?で、でもね――」

「…違うよ」

直樹は少し顔を赤らめた彼女の頬に手をやり、そっとその言葉を封じた。

「///入江くん…?」

「― 病院で8週目だって言った時からお前、…もう母親の顔してる」

直樹の言葉を直ぐには理解できなかったのか、数秒ポカンとしていた琴子の顔がだんだんと輝く。

「本当…?」

「ああ」

「そっか…」

2人は額をくっ付け合うとクスリと笑い、そしてまた唇を重ねた――


* * * * * * *


「それにしても… よく気が付いたね、入江君。私、全然気が付かなかったよ」

「お前がボンヤリし過ぎ」

「うっ い、いつ気が付いたの?」

「確信したのは今日だけど、3日前にもしかして、とは思った。いつもより少し熱っぽかったし」

「そ、そうだったっけ///」

「それにお前、今まで規則正しくきてただろ?なのにここ最近は無理な時が無かった」

「た、たしかに…」

「なによりも…、 ― 俺達、夫婦円満だし?」

そう言って直樹はニヤリと笑う。

「なっ///成程…。言われてみれば、そ、その通りだね」

すっかりゆでダコのようになっていた琴子は、ひとつ大きく深呼吸をするとふと微笑った。

「そっか…。じゃあ入江君は、この3日の間に、少しずつパパになっていってたんだね」

「……?」

その言葉を瞬時に理解できず、直樹は琴子を見つめた。
琴子は穏やかな目で直樹を見つめ返し、お腹を擦りながらポツポツを言葉を紡ぎだした。

「前に妊娠騒動があった時…、入江君、一瞬頭が真っ白になったって言ってたでしょ?」

「…そうだったな」

「それって…、父親になるって、こわくて重くて、うろたえたりするってことなんだよね― 」

「……」

直樹は思い出す。この言葉はかつて直樹自身が言った言葉。
あの時は琴子の勘違いで妊娠はしていなかったから、何分かの父親気分で済んだが…もしあの時本当に妊娠していたら、自分はきっとこんな感情を抱いた事だろうと思う。
琴子は本能で気が付いていたのだ。自分が、あの時本当の意味で父親の覚悟ができていなかった事に――。


「あ、全然責めているとかじゃないよ?私だってあの時妊娠していたら、本気で子供が子供を育てるような事になっていたと思うの。…って、今もまだまだ未熟なんだけどね。でも… あの頃より私たち、色々経験して成長できたと思うの。だから、、そろそろ良いかなって、赤ちゃんがやって来てくれたんじゃないかなって思ったんだ―」

「― そうかもな…」

― やっぱり、お前には敵わない。

直樹は琴子を抱きしめ、その柔らかい髪に顔を埋めながらあらためてそう感じた。

それは自分と彼女の感性の違いなのか、はたまた男と女の本質的な違いから来るものなのかは定かでない。
しかし、自分が理屈でゆっくりと辿り着いた結論に、彼女は感性で瞬時に追いつき、そしてあっという間に追い越したのは確かなようだ。
これから身を持って小さな生命の成長を感じる彼女に、自分は後れを取らずについていけるのであろうか――


「― 大丈夫だよ、入江君」

琴子の声が不意に聞こえた。

「一緒に、少しずつパパとママになろ?」

「― そうだな」

2人はもう一度見つめ合い、微笑み合った。


* * * * * * *



「ねぇ、入江君。今日は抱っこして眠ってくれる?」

「腕が痺れる」

「もう!イジワルっ」

「ったく、ほら、これでいいか?」

「うんっ ありがと!ねぇねぇ入江君」

「…なんだよ」

「今日が、3人で眠る初めての日だね」

「― そうだな」


―― 「「おやすみ・・・・・」」






直樹はこんなんじゃないって思われた方、すいません!
あくまで私個人の勝手な妄想ですのでお許し下さい…

それから、、何故これが「本音」かって…?
聞かないで下さい(>_<)感覚ですっ 伝わるといいな…


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原作以降の妄想  コメント(3)  △ page top


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::コメントありがとうございます
なおき&まーママ様
こんばんは♪お昼の続きです☆
ははは…、また無意識のうちに影響されてしまっていたかもしれないです^^;診察室から出てきた琴子に西日が差している表現とか…。胎児の写真…あれですよね。なんか、生命の神秘を感じさせられますよねぇ、あの画像は。
本音― いくら直樹だって色々考えたかな~とか、でも琴子の想像妊娠の時よりはずっと素直に事実を受け入れているだろうなぁとか、私の気持ちも揺れながら書きました。なのでコメントしづらいお話だったのでは…^^; こちらこそすいませんでした!そしてありがとうございます!!


繭様
こんばんは♪毎日お疲れ様です!!
本当、母は強し!ですねっ。繭様のパワー、きっと娘さんにも伝わっている事でしょうね。私も逞しく生きていきたいです^^
今回は初めて原作以降のお話に挑戦してみました。相変わらず想像しているうちに訳分からなくってきて、「伝わるのか…?」という不安を持ったままupさせて頂いたのですが、繭様のコメントはいつもスッと的を得ていて、逆に私が「そうそう。それが言いたかったんです!」と思ってしまいます~。
直樹が理屈で分かっていながらも心のどこかで感じている男性ならではの不安を琴子が本能的に感じて包み込む。胎内の子に対しても、直樹に対しても母性を感じてもらいたかった気がします。事実を知るだけで、心構えがぐっと固まるのは女性ならではかな、と…。
そして、繭様の仰る通り、妊娠発覚後も琴子はいろいろやらかすでしょうし(笑)、直樹も自然と父親として逞しくなっていくのでしょうね。それから…なるほど!!確かに、妊娠操作は直樹がしたのかも!流石直樹wwなんて(^^)


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::コメントありがとうございます
chan-BB様
こんにちは♪ぼちぼちとお題を消化していってます^^
新しい一面出せてますか?そう言っていただけると嬉しいです~♪
初めて書いた原作以降のお話、直樹はどんな風に琴子の妊娠を受け止めていたのだろう?と妄想したら・・・直樹もやっぱり「未知」には何か不安を感じたんじゃないかと思って書いてみました。「本音」のニュアンス伝わったようでよかったです^^

yasuko様
こんにちは♪
こちらこそ暖かいコメントをありがとうございます^^
やはり誰でも親になるときは嬉しさの反面、不安を感じるものですよね。胎内で育つわが子の様子を肌で感じる事は出来なくても、いろいろな経験をした直樹なら不安はあれどきっと琴子やお腹の子を大切にするんでしょうね。私も直樹と琴子が大好きです♪

藤夏様
こんにちは♪経験していないけど・・・と仰いながらも色々想像しながら読んでくださったようでありがとうございます^^
私もかなり感覚で書いていますので・・・(笑)ほんわかしていただけて嬉しいです。
原作が続いてたら・・・どうだったんでしょうね?でも、きっと多田先生は素敵な表情の2人を描いてくれていたんでしょうね。

なおき&まーママ様
こんにちは♪両方にコメント下さってありがとうございます!色々お忙しかったりするでしょうからどうぞコメントはお気になさらないでくださいね!読んでくださっているだけで本当にうれしいので!でも、こうしていただけると更に更に嬉しいんですけどね^^
まずリレー話について
今回の話は琴子の話す言葉に苦心したので、台詞がひとつひとつ染み入ってくださったのがとても嬉しいです。神戸での生活、二人の別離が物理的にも精神的にも「卒業」であり、「スタート」である事がしっかり伝わっている事に感激しています。
ただし、仰るとおりその後琴子はやっぱりすぐに神戸にこっそり行ってしまうし、直樹の気持ちをうたがうんですよねぇ^^;
ああ、昼休みが終わってしまいますので、また改めて本音のコメントの御礼を書かせていただきますね!!
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::NoTitle
とても暖かくて柔らかいお話ありがとう。私も3人の子供の親ですが、最初の子供を身ごもった時を思い出しています。不安でいっぱいでしたがすごくうれしかった。そして子育ての過程で大人になれたと思います。ツンデレの直樹が見違える様な暖かさをもって、ますます素敵になりましたね。直樹・琴子大好きです。
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