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変化球

配付元…kara no kiss様
50音・26文字お題よりお借りしています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


好みの女の子のタイプ?
そうだなぁ。そりゃ、可愛いに越した事はないよ。でも、変に自意識過剰な女は例え本当に美人であったとしても俺的にはNG。
頭は良かろうが悪かろうがどっちでも構わないよ、そんな事よりも素直が一番。つまりは性格が重要って事?
でもさ、結局は目が離せない存在がそのまま好みになっていくんだよ。そう、俺って単純な奴なんだ――


* * *


脚はパンパン。喉はカラカラ。

― ったく、ザマァねーな、俺も…

被っていたキャップで顔を覆って日差しを遮り、俺は吹く風にまかせて汗の引くのを待っていた。
秋の空は高く、休みの今日は絶好の行楽日和だろう。今頃、この先のテニスコートではアイツが大活躍しているんだろうな。ここまで踏ん張って来た甲斐があるってもんだ。


― なんでこんなに頑張ってしまったんだろう。

いつも高飛車なアイツが半泣きでタクシー乗り場に並んでいるのを見て、きっと少し前の俺なら、厭味のひとつも言ってやってたと思うんだ。
でも、今日は頭で考えるよりも言葉が、身体が動いたんだ。
アイツには参った表情なんて似合わない。自信満々で、上から目線な小憎たらしい笑顔の方がしっくりくる。ってさっきから…なんで俺、アイツの事ばっかり考えてるんだ?


「わっ 冷めてっ…!え 松本…!?」

視界を閉ざしていた俺の頬を襲った突然の冷気に思わずでかい声を出してしまう。キャップを除けたその真上には、今はテニスコートに居るはずのアイツの顔があった。

「…飲みなさいよ」

「…ああ、サンキュ」

アイツらしいつっけんどんな態度で差し出されたカルピスソーダのプルタブを、俺は勢いよく開けた。
頬に当たる風は涼しい。そして喉を透っていく炭酸の弾ける感覚が気持ちいい。

アイツ曰く、結局試合に30分以上遅れたアイツの代わりに、琴子さんが入江さんとペアを組んで、試合は問題なく勝っていたらしい。

「― 私なんてお呼びじゃないって感じ」

アイツは淡々とそう言った。実際、表情もサバサバとしたもんだ。

「いいのかよ」

「え、何が」

「入江さんとペアが組めるって、お前、すっげーはしゃいでたじゃないか」

「まぁね。だって直樹先生となら全国優勝だって余裕だったもん」

そう言ってアイツはフッと笑うが、どうも俺は腑に落ちない。
好きならもっと…チャンスに執着しねーか?普通。
俺はさっきよりもっとストレートにアイツに尋ねる。

「ペアってことそのものが嬉しかったんじゃねぇの?…好きなんだろ、入江さんが」

いわゆる美形と評されるその横顔を見つめる。アイツの目が一瞬揺れた気がしたけれど、それを隠すかのようにアイツは眼を閉ざした。

「別に‥それはいいのよ。ただの憧れですもの」

そう言ってアイツはきゅっと口の端を引き上げた。それはいつもの俺の嫌いな余裕シャクシャクな笑顔のはずなのに、今この心臓は一段と強く鳴った。

「― そういう中川君だって…」

「なに?」

アイツはこちらに目を向けない。ひたすら前を向いて話している。

「今、琴子さんが試合に出ているっていうのに、ちっとも見に行こうとしないのね。もう諦めたわけ?」

「まぁね…諦めたってゆーのは正しい表現では無い気がするけど。でも、そんな事はどうでもいいんだ」

「へぇ…そんなもの?」

「ああ、…そんなもの」


沈黙の流れる2人の間に、コートから聞こえる声援が風に乗って聞こえてくる。


少し、自分でも驚いた。

― 本気で忘れていた。今、琴子さんがここに居るっていうことを…


琴子さんは、俺にとって本当に好みのタイプだった。
美人ってタイプではないけれど、愛らしいその顔も、裏表のない真直ぐで素直な性格も。例えそれがただ一人だけに向けられていると知っていても…それでも彼女を好きになったんだ。

入江さんの本当の気持ちに気が付いてしまったから諦めた…?

俺は静かに首を振る。心は「No」と言っている。

自身の気持ちに気が付いていないのか、それとも敢えて気付かないふりをしているのか、入江さんの真意を測るなんて到底出来そうもないけれど、多分これだけは間違っていない。入江さんは琴子さんの事が好きだ。つまり、2人は思いあっている。俺の出る幕など無い。

だけど、だから琴子さんを諦めたって訳じゃない。言葉が悪いけど…そんな事はどうでもいいんだ。
琴子さんの事を忘れていたのは… ただ、いつの間にか、俺が気になって目が離せない存在の対象者が変わっていたからなんだ――


「―― ありがと。今日は…」

不意に声が聞こえてきた。らしくもなく、遠慮がちな顔で、か細い声で話すアイツに、俺の心臓が高く鳴った。

「な、なんだよ。調子狂うな…。この間のテスト勉強みてやった時なんざプンプンしてたくせに」

そう、入江さんの有無を言わせない頼みを引き受けてアイツのウチのインターフォンを鳴らした時、迎えに出てきたアイツは目を大きく瞬かせて俺の顔を見ていた。事情を説明した時のアイツの憤怒の表情に、俺はそのまま回れ右して帰りたくなったものだ。実際椅子から腰を上げた。でも― 大きく溜息をついた後、アイツはクスリと笑って俺に言ったんだ。

「それならしっかり、面倒見てよね――」



「…テスト、私の方が良かったわ。そんな奴に教えてもらたって」

「……。可愛くねー奴、点数、殆ど同点だったじゃないか」

成績の拮抗している俺たちの試験結果は、課目によって抜きつ抜かれつで、総合点では僅かに7点アイツが上回っていた。

「今更分かった訳じゃないでしょ」

アイツの声は冷淡だ。それでも…なんだろうな。こんなやり取りがけっこうヤミツキになるもんなんだ。

「あーあ、気持ちいいな」

俺は大きく息を吐きだすと、もう一度芝生に寝転がった。瞑った瞼が赤く見える。

「― ほんとね」

隣で芝生の音がカサリと鳴った。




「そろそろ帰るか」

すっかり汗は引いたし、太陽が少し西に傾いていた。この季節は日が落ちると途端に気温が下がる。俺は起き上がると服に着いた芝をパンパンと落とした。

「そうね、試合の終わったテニス部員に会う前にここから離れたいし」

そういってアイツも立ち上がる。


「… 家まで送るよ」

「え、いいよ。私の家、全然逆方向だし」

自転車のスタンドを蹴りあげながら俺がぶっきらぼうにいった科白を、アイツは即座に断る。

「あ~~、そんな事わかってるよ!!ったく、めんどくせー女だな!」

「キャッ……」

アイツの鞄を取り上げようと引っ張ったら、俺のいきなりの行動にバランスを崩したアイツの身体が俺の方に一緒に傾いた。


「っぶね……!」

慌ててアイツの身体を支えた。その時にふわりとアイツの使っている香水の匂いがした。アイツらしい、ユニセックスな香りのそれは、ラストノートでトップノートよりも甘い匂いに変わっていた。

「もうっ!危ないでしょ……!!////」

アイツがキッと睨んでくるが、その顔は必要以上に紅潮している。
 
「………」

俺は屈んでアイツの高さに合わせると、そのままアイツの唇にキスをした――



「な、なに、急に…///。だって、中川君が好きなのは…」

アイツの言葉を遮るように俺は言った。

「好きじゃない奴に、こんな事しねーよ」

「え…?」

アイツの大きな目が更に見開かれた。

「もしかして… 私の事、少し好きになってくれたとか―?」

「――!?」

「あっ///」

「お前、もしかして…」

「あ、あの…それは、だから…!そういう事よ!悪い!?私だって――」



「…もういいよ。ありがとう」

「//////」


今コイツの表情を伺う事は出来ない。だって俺の腕の中にコイツを閉じ込めているから。

「俺も… 好きだよ、綾子」



* * *



好みの女の子のタイプ。
結局は目が離せない存在がそのまま好みになっていくんだ。とはいえ、今の俺がこのタイプを口にしたら、周りの人間には「それってどーなの」って言われちゃうかもな。

美人で頭も良い、スポーツまで完璧な女だけど、高飛車で素直じゃない女。
だけど、たまに見せる素直な言葉とか、俺だけに見せる普段とは180度違う恥じらった姿にぐっとくるんだよな。なんだろこれ、いわゆるギャップ?
うわぁ、俺ってやっぱり単純だよな。でも、単純さが幸せを運んで来る事だって、あるんだよ―――







武人君と綾子ちゃんの馴れ初めを捏造。爽やかなつもり…
イリコトとは違う2人の関係も、青春って感じが好きで結構好きだったりします^m^


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secret

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comment

拍手コメントありがとうございます

繭様
こんがんは。お礼が遅くなり申し訳ありません!
繭様も授業参観だったんですね。4月にいきなり、早いですよね~。お嬢さんの可愛いエピソードお聞かせ下さってありがとうがざいます(^^)
変化球へのコメントもありがとうございます!武人君と綾子ちゃんって確かに少女漫画の王道な展開ですよね(笑)綾子ちゃんはちやほやされてばっかりだったから武人君の存在は初めは「ムカつく奴」だったのに、いつの間にか自分の気持ちに気が付いちゃったんでしょうね(*^_^*)まぁ、この2人はイリコトのあて馬になったのも事実で(笑)。でも2人よりも随分簡単に上手くいきましたから結果オーライですよね^m^

拍手コメントありがとうございます

chan-BB様
またまたこんばんは。私にしては珍しい、連続UPでした。昨日、娘の授業参観だったんですよ。それで仕事を休んでいたので、前日夜ふかしして一作、当日の午後友達の家に遊びに行ったので一人家で黙々もう一作書いていました(^^)
私も武人君と綾子ちゃんのお話は読んだ事ないですね~。ニーズも少なそうですし(爆!)こちらも私が個人的に書きたいものを…のスタンスで書かせて頂きました。思いっきり原作追っただけなお話になってしまいましたが、新鮮に感じて下さって嬉しいです。ありがとうございます!
私もchan-BBさんのご意見に賛成です。武人君はその先に入江君が見えている琴子が好きだったと思いますし、綾子ちゃんは初めから入江君の事を本気で好きだった事は一度も無かったと思います。そして、武人君の事をかなり最初の段階から意識していたと思うんですよね。
お話の内容そのものと、私のお題の仕上げ方どちらも「変化球」とのお言葉、凄く嬉しいです!ありがとうございました<m(__)m>

藤夏様
こちらでも再びこんばんは。
ありがとうございます!爽やかと仰って頂けてよかった~。「次は爽やかで」なんて言ったものの、どうなのかしら?これ、とおもっていたので(^_^;)
そうそう、この2人のエピソードを描くほどの熱意、持たれる方は…あまり居ないんでしょうね(苦笑)
私もまさか自分がこんな話を書くとは、二次創作を始めた当初は思ってもみませんでした。お題では可能性を探ってる感じなんで、あれれ?みたいなのが多いと思うんですが、いつも暖かいコメントを下さって本当に嬉しいです(*^_^*)
人は異性のギャップに―の話…確かにそうなんですよねぇ。直樹だってはじめに琴子のラブレターを読んだのは、それまで威勢の良かった琴子が流した涙へのギャップだったのでは?と密かに思っている私です(笑)
卒業式の時にお互いの将来を語り合う2人は夢に向かって輝いていて本当に素敵でしたよね。この2人、私も素敵なカップルだと思います(^^♪

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