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暇つぶし 2/2

配付元…kara no kiss様
50音・26文字お題よりお借りしています。
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【誘惑】【盗み聞き】の続編(後編)です。

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家に帰ってリビングに顔を出すと、そこに居たのは直樹だけであった。

「お帰り、裕樹」
直樹は読んでいた本から少し視線をあげると、裕樹に声をかけた。

「た、ただいまっ。あの、ママたちは?」

「飛行機の遅延で予定より到着が遅れたから、外で食ってから帰って来るってさ。俺たちももう済ませたけど、お前は何か食って帰ってきたの?」

「あ、うん。ごめん連絡しなくて。…琴子は?」

紀子たちが帰っていたら、土産話やら何やらで気まずい雰囲気などにならないかもと思っていた裕樹は、あてが外れて内心肩を落とす。しょうがないので琴子の居場所を確認する。
裕樹が今一番避けたかったシチュエーションは、兄と二人きりになる事だった。琴子が居れば、彼女も気まずさから他の話題を色々話してくる事だろう。しかし兄はそういった気を回すような事は一切しない性格である。

「あいつなら今、風呂入ってる」

「///風呂!?」

淡々と答える兄に対し、裕樹は一気に顔が熱るのを感じた。声も裏返る。思い出してはいけない、想像してはいけないと思えば思うほど、言う事を聞かない脳のある部分が暴走しようとする。

「…どうかしたか?」

「う、ううんっ なんでもない。そっか、ママたちも大変だね。僕も合宿でクタクタだけど…!」

本音は“合宿で”ではなく、“朝の盗み聞きで”なのだが、勿論それを口に出す事は出来ない。

「― 合宿、疲れたか?」

直樹が話題を変えてくれた事に、裕樹はホッとして返事をする。

「…別に大したことは無かったんだけど。なんか自分の勉強を進めるというよりも友達に教えてあげる羽目になっちゃってさ」

「へぇ。でも、復習になって案外力になるもんだぜ?」

「うん、分かってる。今日もさ、前にお兄ちゃんに教えてもらった証明の問題が出てきたから教えてやったんだ。皆、凄く分かりやすいって言ってたよ」

裕樹は思い出して嬉しそうにその時の話を直樹にする。直樹はクスリと笑ってそれを聞いていた。

「実になる合宿だったみたいでよかったじゃん。風邪も引かなかったみたいだし、安心したよ」

「え?」

直樹の言葉に裕樹が不思議そうな顔をすると、直樹は昨日と似た表情で本のページを捲りながら言った。

「ブレザー、置いたままだっただろ?」

「あ、そ それは…!!」

「悪かったな。入るに入れなくなったんだろ?」

しどろもどろで言い訳しようとする裕樹を遮るように直樹は言葉を重ねた。

「////// ごめん、立ち聞きするつもりなんてなかったんだ」

こうなったら下手な言い訳をせずに、裕樹も素直に謝った。

「分かってるよ。でもさ」

「ん?」

「俺たちがリビングに居ない間に、持ち出せば良かったのに」

「――――!!!」

裕樹は思わず言葉を失い、直樹を凝視した。

「お、お兄ちゃん…、ひょっとして――」

「あの時、まだ家に居たんだろ?」

直樹は顔を上げると愉しそうに裕樹の顔を覗き込んだ。


* * * * *



「てゆーかさ、お前さっきから声でけえよ。裕樹に聞こえてもしらねーぞ」

――― !!!

その声が聞こえた時、裕樹はとっさにリビングのドアの死角になる側の部屋に身を潜めた。
間もなくリビングの扉の開く音がする。しかしそれは直ぐに再び閉じられた。

まずい事になったと裕樹は思った。動転したとは言え隠れてしまった。ここから素知らぬふりでリビングに入ってブレザーを取りに入るか…

否、そう裕樹は判断する。恐らくあのセリフを口にした時点で、兄は自分が聞いていることを検討づけていた気がする。だとしたらどこまで聞いていたかが問題だ。
ソファを拭いている時に琴子に向けられた兄のセリフと合わせて、リビングの中で2人がきわどい話をしていると気付いた時点で自分は家を出た事にして、ずっと聞き耳を立てていた事には気付かれないようにしたい。

着替えの入った鞄の中を確認する。幸い部屋に着替えを取りに行った時に、動きやすいようにとカーディガンも持ち出していた。これで寒さは凌げる。
問題はこの後どのタイミングで家から脱出するかだ。

一番確実なのは2人が2階へ上った時に出て行く事だろう。裕樹は隣の部屋に耳をすませ機会をじっと窺う。

「― ちょっと私、見てくるよ!」

そう琴子の声が聞こえたかと思うと、勢いよくリビングの扉が開き、階段を上がる音が響いた。直樹がそれを追いかける様子は見られない。
今の間に出ていくのが得策か―― 裕樹はそっと廊下に出た。

「裕樹君、開けるよ……?」

裕樹が玄関で靴を履こうとした時、琴子の声が聞こえてきた。そして間髪なくバタバタと階段を駆け降りてくる音が響く。
玄関を出るには時間が足りない。裕樹は慌てて靴を手に、再び直ぐ傍の部屋に隠れた。


息を凝らしていると間もなく2人の話声がこちらに近付いてきた。やはり兄は自分が話を聞いていて部屋に入れずに家を出たと推察したようだ。
しかもどうやらこの事態を愉しんでいる。改めて自分の判断は間違っていなかったようだと裕樹は溜息をついた。
とその時、あの言葉が耳に飛び込んできた。


「明日の夕方まで2人っきりだぜ?楽しみだな」


「////////」

言葉を向けられた琴子同様、隠れて話を聞いていた裕樹も、顔を真っ赤にさせてそれを聞いていた。

兄の声は、いつもの落ち着いた声とは少し違う、色のある大人の男の声だ。当然なのだか2人は夫婦であり、大人の男女である事を今改めて突き付けられた感覚に裕樹は陥る。
そして極め付けはその後の琴子のセリフだった。小さな声だったが、確かに彼女はこう言った。

「///い、いいけど、今日はソファとかお風呂では嫌だよ…?」




再び2人がこちらに近付いてくる音がする。

「― はいはい、分かったよ。塗ればいいんだろ?」

「ち、ちょっと、何でそんな面倒そうに言うのよっ。元はと言えば、昨日入江君が明日コンシーラー塗ってくれるって言ったんじゃない!こんなままで私、更衣室で着替えられないんだから…///」

「見える所に付けてる訳じゃなし。いいじゃん、夫婦なんだから」

「もう!いつもそんな風に入江君は言うけどね、私がそれでどれだけ―――」

「うるせーよ。ほら、さっさと終わらせるぞ」

そんな会話をしながら2人は階段を上っていった。


― 
カチャリ。静かに扉が開かれる。

「////////」

漸く部屋から出られた裕樹は、着ていくつもりだったカーディガンに袖を通す事なく入江家を後にしたのだった――



「ど、どうして僕が未だ家に居るって分かったの…?」

おどおどと尋ねる裕樹に、直樹はクスリと笑うと、その頭にポンと手を置いて答えた。

「お前の律義な習慣が仇になったな。お前、玄関出る時に琴子のパンプス揃えて出ただろ?」

「― あ…」

裕樹は思い出した。靴を履き終え出て行こうとした時、玄関に脱ぎ散らかされた琴子のパンプスに少し躓いた事を。
その時、心の中で悪態吐きながら、裕樹はそのパンプスを揃えて並べたのだった――

「お前があの時家に居た事、琴子は気付いてないから。だから何も気にしなくていいぞ」

直樹はそう言い置くと、ソファから立ち上がった。




「あ、入江君。お風呂お先でした。気持ちよかったよ」

直樹がリビングから出た時、ちょうどお風呂からあがった琴子が濡れた髪をバスタオルで拭き取りながらこちらへやって来た。


「ああ、じゃあ俺も入るかな」

2人は揃って寝室へと上っていく。

「― さっき裕樹が帰って来たよ」

直樹の言葉に琴子は安堵した表情を見せる。

「良かったぁ、遅いから何かあったのかと思って心配しちゃったよ。裕樹君、夕飯は食べたのかな?」

「ああ、ファミレスで食ってきたみたいだぜ」

「ふーん、珍しいね。裕樹君がこんな時間までファミレスに居たなんて。まだ勉強してたのかな?」

「………」

琴子が察しの悪い人間だと言う事は今に始まった事ではない。それでも、恐らく今の今までずっと気を揉んでいただろう裕樹の事を思うと直樹は密かに同情した。
しかし今回ばかりはその方が裕樹にとっては良かったのかもしれない。そう考え直すと、直樹はふっと微笑って答えた。

「さあね。ただ暇つぶししていただけなんじゃない――?」






調子に乗って書いてしまいました。裕樹目線のお話でした。まさか春の陽気に誘われて書いたお話にこんな続きを書く事になろうとは…(^_^;)これも拍手して下さったり、コメントを下さった方のお陰です。ありがとうございました。

余談ですが…これ、書きあげた後直ぐに、自分のミスで一度お話が半分くらい消えてしまいまして…(>_<)
半泣きでもう一度書きなおしました。ふう、こんな感じだったかな…?お楽しみ頂けたら嬉しいです。

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secret

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comment

まあちさんへ

こんばんは(^^)
そうだったんですか!?うふふ、あんな可愛いコメントが消されかけていたなんて!届いて良かったです。ありがとうございました♪
やっぱり高校1年から受験対策とか大変なんですねー。がんばれ!息子くん!!と応援してみたり^m^
こちらにいらっしゃるときのまあちさんは私の中では可愛い女の子って感じなんです。また遊びに来て下さいね^^v

拍手・コメントありがとうございます

繭様
1/2・2/2共にコメントを下さってありがとうございます!
本当は1話でupしようとしたんですが、間違って消してしまった原因を解決するためにちょっと分けさせて頂いたんです。お手数をおかけしましたm(__)m
裕樹君の受難が続いていた…のは当初はそんな事を考えていた訳ではないんです(笑)有難い事に裕樹君目線を、とリクエストを頂いてから思いつきました(^^♪ホントに誰もいないからって朝からこんな会話(笑)でも、20代のカップルですもの、あり、ですよね…?(笑)
直樹の生きがいって笑っちゃいました~。それを言うなら裕樹をからかうのも?凄い性格してますね、直樹。裕樹の忍者のような動きも兄の前では無駄になってしまい、お疲れさまでした…(^_^;)そんな中、天然な琴子はもうお約束です(笑)

まあち様
こんばんは。ちょっと裕樹君、可哀そうだったでしょうか(笑)
あんなお兄ちゃんを持って、ひねくれてもおかしくないのに、本当に良い子ですよね。
そして息子様、裕樹君と同い年なんですね!重ねてみるとなんだか複雑な気持ちになってしまいますよね(^_^;)そして、息子様とまあちさんのやり取りが脳内で映像化されて、このコメントを読ませて頂いた時、笑ってしまいました~。まあちさん、やっぱりかわいいです♪こんなおかあさん、いいよな~^m^
どうかきわどい内容のお話の時は背後にご注意を…(笑)私も娘が漢字を読めるようになった時が怖いです…(^_^;)

Chan-BB様
こんばんは。ふふ、記名が無くてもchan-BBさんかな?と思いました。かなりのchan-BBさんフリークですから^m^
脳内映像化、ありがとうございます♪もっとスピード感のある書き方をしたかったですが、もう私には無理かと開き直ってます(^_^;)
裕樹君、ちょっと可愛そうだったかなとも思いましたが、むしろすっきりしましたかね?それならいいや(笑)
そして、このシリーズへの熱いコメントありがとうございます!イタキス二次の醍醐味、詰め込めたでしょうか?だったらとても嬉しいです(^^♪そうなんですよね~。あの直樹が…と想像するのが楽しいんですよねー。そんな妄想ばかりしている自分に気付いた時は変態と思いますが、取敢えず、人前でにやけないようにだけ気を付けます(笑)
家族が傍に居るとなんだか落ち着きませんよね~。って、私ガンガン書いていますが。娘はまだ読めませんし、旦那はゲームに夢中ですしね。ってなんか家庭不和みたいですね(+o+)大丈夫です、仲良くやってます…(笑)

藤夏様
こんにちは。うふふ、藤夏さんの一声で書いちゃいました~(^^♪ありがとうございます!
そして、藤夏さんの一言に私も賛成です(笑)お疲れ、裕樹…m(__)m
年齢的に多感な時期に半分分かってて赤裸々トークをする直樹は鬼ですね。それでも兄を慕う裕樹君はなんて従順なんだろう(笑)
天然琴子にも一発あてられ^m^可愛そうなんだけど、そんな裕樹を見たり書くのが大好きです(笑)
愉しんで頂けたようで良かったです。ありがとうございました(*^_^*)


りきまる様
こんばんは。思いもよらないシリーズ化でした(*^_^*)これも読んで下さり、コメントを下さる方のおかげです。ありがとうございます!
私も「盗み聞き」に時点では、裕樹君はもう家を出たつもりで書いていたのですが、続編を書こうと決めた時に急きょ変更しました^m^自分ではここが一番のポイントだったので、ご反応頂け手嬉しいです!
直樹、念願かなって(笑)よかったね(^^♪これを叶えるために、意味もなく22巻のスキマに決定した私です。露天風呂が初めての一緒のお風呂だったんですもんね。家族と一緒に住んでるとなかなか出来ないですもんね~(^_^;)
そしてコンシーラー(笑)ここにきて「誘惑」で書いたのが生きてちょっと嬉しかった私です(笑)ほんと、消費量すごそうww化粧ポーチや鏡台だけでなく、クローゼットとかにも常備してたりして^m^

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