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::酔っ払い
配付元…kara no kiss様
50音・26文字お題よりお借りしています。
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まったく、僕とした事が少し羽目を外し過ぎてしまったようだ。
酔っ払いの状態とは時に、たとえ脳が正常な指令を送っていたとしても、身体がそれを抗う時がある。
その証拠に僕は今、わざわざ旅館の最上階からエレベーターを使わずに、えんじ色の絨毯の敷かれた階段をふらりふらりと降りている。
ぐるぐるぐるぐる、一体どれだけ回ったのだろう………


*****


今年の慰安旅行の始まりは、例年にも増して絶好調だった。例えそれが他力本願であっても。
いやいや、僕だって決してまだまだ捨てたもんじゃない。けれどあのクソ生意気な後輩・入江直樹は斗南病院に赴任後早々、不動と思われた僕のポジションをあっさり奪っていったんだ。

海でも旅館に入ってからも、入江目当ての女の子たちが僕らの周りをウロウロしている。
悔しい気持ちが無い訳ではないが、割り切ってしまえば例え№.2でもこの状況はとても楽しい。
入江は迷惑そうな顔を隠そうともしないが、僕は面白がってアイツを拘束し続けた。
あのむっつりポーカーフェイスが不機嫌な本当の訳・・・― 愛する奥方・琴子ちゃんとの時間を奪われてイライラしている―― に気付かない振りをして、その反応を窺い愉しんだ僕。(まぁ、そうでなくとも琴子ちゃんは院長らに捕まってそれどころじゃなかったけど)

僕は今、その報いを受けているのだろうか…?


僕は今ピンチだ。
何故…何故あの夫婦が巻き起こす出来事でいつもいつも被害を被るのは僕なんだ。

幹事の女の子たちが折角用意してくれた最上階の僕の個室。
少し狭い間取りだけど、寧ろそれが今夜この部屋に遊びに来る可愛い子羊ちゃんとの密時を濃いものにしてくれるはずだったんだ。

僕の部屋には今、ほっそりとした色白の御方が待っている。
少々不機嫌に、でもそれなりにご機嫌で…



「まったく、あのガサツな女子が入江先生の奥方だなんてこの世の七不思議ですよ」
プリプリしながら大蛇森先生はトランクケースの荷ほどきをしていた。

― 大蛇森先生、この慰安旅行は1泊2日の日程なんですが……どうしてそんなに荷物が多いのですか……?
喉元まで込み上げる疑問をぐっと堪え、僕はなるべくにこやかな表情で大蛇森先生に話しかける。

「先生も災難でしたね。まさかこんな時間から部屋の変更をさせられるなんて」

本当に災難なのは僕だけれど。まさかここにやってくるのがこの人になるとは…。僕は今、上手に笑えているだろうか。

男湯で転んで頭を打った琴子ちゃんの体調の経過を確認する為に、入江と琴子ちゃんは急きょ同室で一夜を過ごす事になった。
その為に部屋を追いだされた不運な被害者、大蛇森先生。


大蛇森先生の入江贔屓は医局では有名な話だ。
今回、幹事の女の子達の計画によって入江と同室になった大蛇森先生のご機嫌はすこぶる良かった。(女の子達は、大蛇森先生との同室を嫌がって部屋に入りたがらない入江を自分たちの部屋に招き入れる気だったらしい)

大蛇森先生はエアパッキンで頑丈に保護された物体を見つめて溜息をつく。

「今晩は入江先生と最高のワインを一緒に飲みながら、夜明けまで語らう筈だったのに…」
大蛇森先生のスーツケースの中には、同じように厳重に梱包された物体が何本も整列していた。

「まぁ仕方ないですね…。どうですか、西垣先生。一緒に一本開けませんか?こちらのワインでよろしければ」
そう言って、一番安価らしいボトルを取り出した大蛇森先生。その目は糸のように細められ、妙に赤い色をした唇が引き上げられた――
「名は体を表す」――  この言葉を地で行くその姿に僕は今すっかり青ざめ、まさになんとかに睨まれた蛙になった気分だ。


「いえ…、僕は今夜は既に飲み過ぎてのでしまったので。遠慮しておきます…」
笑顔を張り付け、失礼にならぬよう丁重に断る。
…これは強ち嘘ではない。先程の宴会でお猪口にトクトクと注がれる日本酒に、いつの間にか僕は相当酔っ払ってしまった。
しかし例え酔っ払っていようと、ナケナシの正常な働きの脳が「ココニイタラキケン、コノママイルトキケン…!!」とSOSを発している。

ふらふらな身体で何とか立ちあがった僕は「少し涼んできます」と言って、白蛇の館から命からがら脱出した――


*****


―― おかしい。
ぐるぐるぐるぐる階段を下りていく間に、僕は間違えて正面玄関のある二階を更に降りてしまったらしい。
一階には浴場と露天風呂があるが、丑三つ時を過ぎたこの時間に風呂に入る人間などそうは居ない。辺りはシンと静まりかえって、窓から見える月はオレンジ色をしていた。

こんな風景の中で露天風呂に入ったらどんなに気持ち良いだろう。しかし今入浴するのが危険な事位は例え酔っていても十分判断出来るから僕は諦めた。直ぐに引き返そうかと思ったけれど、そのまま僕はこのフロアをそぞろ歩きする。酔っ払いの行動なんて不可解な事だらけなのだ。

小さく鼻歌を歌いながら歩いていた僕の耳に、かすかに男女の話声が聞こえてくる。

「はぁ…、すっかり上せちゃったよ。フラフラする…」
「おい、重いからもっとしっかり歩けよ」
「もうっ誰のせいでこんなフラフラになったと思ってるのよ!」
「さぁね、知らないな」

軽く諍いをしている男女の声。しかしこれはいわゆる『思う仲の小諍い』だ。その証拠に、2人の声のトーンにはどこか甘さが漂っている。
どうやら混浴に入っていたらしいこの男女。くそぅっ!こんな時間にイイ事しやがって、羨ましいじゃないか!!…っておい、、この声、もしかして……?

逸る気持ちを抑えつつ、僕は壁伝いにそろりそろりと声のする方へ近付いた。そして角からそっと顔を覗かせて見る。…そこにはやはり、入江夫妻がいた――

ガタンと自動販売機から飲物が落ちてくる音がする。
入江は下から水の入ったペットボトルを取り出すとキャップを開け、「ほら」と琴子ちゃんに差しだした。

「ん、ありがと」
ボトルを受け取った琴子ちゃんは、頭を反らせて喉を鳴らす様に水分を補っている。風呂上がりで長い髪を軽くクリップで纏め上げた琴子ちゃんの浴衣姿は、昼間に見た水着姿よりも余程色香を感じさせた。

「一気に飲みすぎ」
そう言って琴子ちゃんからボトルを奪うと、入江は残りをクイっと飲む。まったく癪だがコイツはこんな無造作な姿さえ様になる。そしてこうして遠目に見るとこの2人、結構絵になるじゃないか…

ふぅ、と息を吐き出して、入江が琴子ちゃんの座っているベンチの横に腰掛ける。

「お風呂、気持ち良かったね。お星様も良く見えたし」
琴子ちゃんがいつも入江だけに向ける甘えた声音で話しかける。本人は意識していないだろうけど、この声は結構蠱惑的だ。たぶん、あの入江にとっても。

それを裏付けるように、入江の手がすっと伸び、琴子ちゃんの遅れ毛をくるりと指に絡ませた。
そして彼女の顔を愉しそうに覗きこむ。

「ああ、そうだな。てかお前、そんな余裕あったんだ?」
「よ、余裕とかじゃなくて、入った時からそう思ってたのよ///!」
「ふぅん?ま、どっちでもいいけどさ」
入江はそう言ってもう一度ボトルに口を付け、水分を補給する。琴子ちゃんはその様子をぽぉっとした表情で見ていた。

「入江君って、その…すきだよね、キス――」
独り言のように呟いたその言葉に、僕は勿論入江もピクリと反応を示した。そんな表情でこんな事言われたら、そりゃスイッチも入るってもんだ。

「…そう思う?」
入江はそう言って琴子ちゃんの頬に手を添えた。琴子ちゃんはそのまま潤んだ瞳で入江を見つめていて、そして微かに頷いた。

僕はごくりと唾を飲み込む。昼間に色気が無いと言った発言は撤回だ。
入江の顔がゆっくりと琴子ちゃんに近付く―― そして2人の陰が重なった。


なんだなんだ…!こんな場面、今までだって何度となく見てきたし見られたはずだ!!
それなのに目が離せない。入江が琴子ちゃんの唇を啄むように挟んだり吸ったりしている。そして次第に深くなっていくキスは、お互いの髪を掻き乱す。琴子ちゃんの使っていたクリップが緩んで絨毯の上に音もたてずに落ちた。
ぐるぐるぐるぐる…僕は今、目を回し始めている。そう言えば僕、今酔っ払っていたんだよな。やばい、無理な姿勢が災いして、身体を正常に起こす事が出来ない――



…先生、西垣先生…。 ― 遠くから声が聞こえる。
そしてペタっと頬に冷たい感触が走った。

「…ぅん?……」
漸く開けた僕の視界に、にゅっと現れたのは心配そうな表情の琴子ちゃんだった。

「あっ目が開いた!入江君、西垣先生が気が付いたよっ」
「ああ、見りゃ分かるよ」
まだぼんやりとしている頭を軽く振り、琴子ちゃんのすぐ隣を見てみるとそこには入江がいて、呆れた顔をして僕の事を見ていた。

「大丈夫ですか、西垣先生…。こんなところで」
アイツは淡々と聞いてくるが、その目は冷ややかそのものだ。

「ああ、大丈夫…。ちょっと酔っただけだから」
バツが悪い僕はポリポリと頭を掻いてそっぽを向く。

いや、でも待てよ…?僕はふと考えた。そして違う違う…!と結論付ける。そう、僕は今、入江の弱みを握っているんだ!!
僕はニコリと笑って形勢逆転を目論む。

「…入江こそさ、こんな所で琴子ちゃんと一体何してたの…?」
「……」
入江の眼光が更に冷たく光ったのは恐らく気のせいではない、と思う…。

「…そりゃここは風呂ですから、それ以外ないでしょう」
入江は無表情に応える。隣で琴子ちゃんは顔を真っ赤にしていた。勝った…僕は内心、勝利の拳を突き上げる。…が、アイツはやはり、入江直樹だった。

「それより…、西垣先生。西垣先生が倒れられていた場所、どこだったかご存知ですか?」
入江がニヤリと笑って僕を見てくる。

「え…、どこってどこだ―?」
僕はきょろきょろ辺りを見渡す。正直、ふらふら歩いた末に覗き見していた僕はそんな所にまで気を配ってはいなかった。
そして漸く目に飛び込んできたもの―― 赤い暖簾。

「お、女湯!?」
「西垣先生、いくら酔っ払っていたからって、覗きは駄目ですよ」
入江が信じられないほど眩しく笑って僕を見ている。

「ち、違う!これは全くの偶然で――」
「こんな場所ですから、言い逃れは難しいですね」
入江はさらに畳み込んでくる。

「まぁ、西垣先生を見たのは俺たちだけですから…。お互い黙っていれば問題は無いかと思いますが」
そう言って入江がニヤリと俺を見た。その顔をみて、僕は敗北を悟った。

「わ、分かった」溜息交じりに僕は返事する。
入江は「そりゃ良かった」と言って立ち上がり、こちらへ手を差し伸べる。その手に捕まり、僕もなんとか立ちあがった。

「じゃ、俺たち部屋に戻りますから。西垣先生は大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫だ…」
「じ、じゃあ失礼します・・・」
琴子ちゃんが小さく礼をした。僕はにっこり微笑って琴子ちゃんにおやすみと言う。
そして、二人歩きだした姿を見て、彼らに向かって言った。

「なぁ入江、琴子ちゃんってさ、水着よりも浴衣の方が色気あるな!」
「なっなに言うんですか///!?西垣先生――」
パッと振り返って慌てふためく琴子ちゃんを入江が手で制した。そして、ゆっくりとこちらに近付いたかと思うと、僕の耳元でこう囁いた。

「それも口外無用事項です。それから…明日の朝食、俺たちパスするんで西垣先生テキトーに理由言っておいてくださいね。…じゃあ、大蛇森先生によろしく」

――!!
この一言で、僕の酔いは完全に醒めた。入江はくるりと踵を返すと、琴子ちゃんの肩を抱いて、そのまま僕の視界から消えていった。

「………」
一人になった僕は呆気にとられながらもひとつの事柄を学んだ。
―― 愉しいお酒も、ほどほどに。






西垣先生 VS 入江君でした。
酔っ払いと言えば琴子ちゃんなイメージですが、ふと西垣先生で書きたくなり、挑戦させていただきました(^^♪


22巻スキマ  コメント(4)  △ page top


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::拍手コメントありがとうございます
藤夏様
こんばんは!うふふ、藤夏さん、西垣先生お好きでしたよね~(^^♪
私も入江君VS西垣先生の構図は大好きです。何方かが描いて下さる度にムフフと読んでしまいます(笑)
今回はチョイ役で大蛇森先生にもご登場いただきましたが…気持ち悪いですよね。。西垣先生、この後大蛇森先生の餌食になってしまったのでしょうか…(^_^;)
機密事項にぷぷっ!!がっちり握りあった2人の今後のバトル…またかいてみたいです(笑)
編集 △ page top
::拍手・コメントありがとうございます!
祥チャン様
はじめまして!こんばんは(^^)
突如として嵌られたのですね。私もそうでした♪
こちらのブログも見つけていただいてありがとうございます。楽しんで頂けているようでうれしいです(^^♪
直樹と西垣先生のバトル(笑)は私も大好きで、色々なサイト様で読み、楽しませていただきました☆こちらこそ、これからも宜しくお願いします!

chan-BB様
こんばんは!忙しい中を掻い潜ってコメ残して下さってありがとうございます~。それから先日はクドイ彼女のようにメールしまくってすいません(>_<)じ、自重しますので…orz
うふふ、このシーンのスキマにとうとう手をつけちゃいました(笑)22巻って、入江君デレっぱなしで読むとずうっとニヤニヤしちゃいます(^m^♪
そうそう、西垣先生って自ら早々にモテの座からは降りちゃってる感じしますよねー。で、琴子ちゃんを誘惑するフリして入江君んの反応見る事を愉しんでいる^m^ で、入江君はそんな西垣先生の思惑なんて分かっているのに、牽制せずにはいられない。入江君も大概琴子バカ(笑)そんな雰囲気、ちゃんと出ていたでしょうか…?
色々想像して頂いてありがとうございます!そして、chan-BBさんの呼び方がくすぐったいです~。この怪獣のようなHNが可愛く感じられます(笑)

さちりん様
はじめまして!こんばんは(^^)
数ある素敵なイタキスサイト様のなかで、こちらのブログも見つけて下さってありがとうございます!!
私の性格がもろ反映した(入江君のツン度の低い)お話ばかりですが(^_^;)、浸って頂けてるなんて感激です~。こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いします!!


繭様
こんばんは(^^)
そうなんですよね、西垣先生、この慰安旅行時めっちゃ酔っぱらってるんですよ!それから、入江君と同室だった大蛇森先生はその後何処へ…?と思っちゃったのでちょい出しさせていただきました。大蛇森先生と同室なんて…怖すぎる(^_^;)入江君、セーフ^m^
西垣先生、どんな態勢だったのか想像してみて下さい(笑)浴衣も乱れて情けなさそうwそうか、西垣先生がぶっ倒れたのはそっちのせいだったのか!一応、今回イリコトは西垣先生が倒れるまでは存在に気付いてないつもりで書きました^m^
無意識に煽る琴子ちゃん。手塩にかけたの繭さんのお言葉に私も妄想がぶっ飛びムフフフとなってしまいました(笑)
しかし西垣先生、憐れ(笑)No.2の宿命、ご愁傷さまです(^_^;)

舞様
こんばんは(^^)
もう、西垣先生ってば入江君が赴任後は慰安旅行前後ツイてないですよね(はじめは入江君の緊急執刀で始末書書かされていたし!)(^_^;)
日ごろの行い…(笑)そうそう、そこがきっと問題…(ぷぷっ)
入江君たら、そんなことまで根に持つんですかね?^m^でも彼は決してそうでない事を一番身を持ってしってますからwwそして琴子の色気を他の人に気付かれるのはイヤがってそう!
西垣先生には不運な遭遇でしたね。でもほんと、からかうからいけないんですよ(^_^;)

りきまる様
こんばんは(^^)
そうそう、私のりきまるさんの意見に賛成です~。
入江君は出来る事ならこの場面は誰にも見られたくなかったんじゃないかなぁ、と。
2人が一緒に入ってた事が後で何かの事情でばれても平然としていると思うんですが(笑)、入浴直後のはんなりした琴子ちゃんを他の人には見せたくなかったんじゃないかなぁ^m^
だから、運悪くみられた事には舌打ちしたい気分だったのでは、というりきまるさんの意見にうんうん!と思いました(^^♪
でもやっぱり西垣先生にしたら、とんだとばっちりですよねー(笑)


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ぴくもんさんこんにちは。
西垣先生災難続きでしたね。(日頃の行いが悪いか・・・あ、いえ)入江くん昼間ビーチで西垣先生に琴子に色気がないのはお前の責任と言われたことを根に持ってたのかしら?(ププッ)西垣先生、お酒も入江くんからかうのもほどほどに。
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